女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
355 / 754

従魔登録 1

しおりを挟む



 ❝明日からの移動の為に従魔たちを迎えに行く❞

 冒険者たちからの勧誘合戦から逃げる口実だけど、もともと午後から従魔登録の予定だったからちょうどいい。

 そんな軽い気持ちで街の外に出て時間を潰し、人目のない所でスレイとニールおうまさんたち従魔部屋ハウスから呼び戻してまた街の中に戻る。

 以前なら街の外に出て、中へ戻るたびにお金がかかっていたけど、冒険者登録をしたおかげで余計な経費を掛けずに気軽に街の出入りができるので、ちょっとお得な気分を味わいながら街の門をくぐった。

「スレイプニルじゃないか!? それも2頭も!!」
「それがあんたの❝従魔❞なのかっ!?」
「【剣】に【攻撃魔法】に【治癒魔法】、それにすげぇ容量の【アイテムボックス】があって<スレイプニル>を従魔にするレベルの【テイマースキル】まで!?」
「「「「「凄すぎる…! ぜひ私(俺)のパーティーにっ!!」」」」」

 なんの警戒もせずに門をくぐった私を、門の内側で待っていた(暇な)冒険者たちの勧誘合戦が襲う。 大幅に熱量を増やしているのは、気のせいではないはずだ。

 門をくぐる時に門番さんから「従魔に乗ったままで構わないが、緊急時以外は走らせない様に」と注意を受けているので、このまま走って逃げることもできなくて、<冒険者ギルド>に着くまでの間、私はひたすら「単独活動希望なので、パーティーは組まない」と言い続けるしかなく、すっかり疲れてしまっていた。だから、

(主、着きましたぞ。気を付けて降りてくだされ)

 ニールが私を優しく気遣いながら脚を折り畳み、地にお腹を付けて私が降りやすい体勢を取ってくれた時も、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることが精いっぱいで、この姿が増え続ける見物人ギャラリーの目にどう映っているかなんてことを気にする余裕がなかったんだ……。まさか、

スレイプニルが見事に服従している!」
「これは昨日今日の関係じゃないぞ! きっと子供の頃からの付き合いに違いない!」
「……スレイプニルを身近において調教できる子供? それって、もしかして」
「スレイプニル専門の調教師を雇える存在……。 どこかの姫君なのかっ!?」

 なんて誤解が大量に製造されるなんて、想像もできなかったんだよね……。











 疲れ切ってギルドの扉を開けた時に、

「アリスさん、おかえりなさい! なんて利口そうなスレイプニルなの!?」

 ディアーナさんの声が聞こえた時にはとても❝ほっ❞としたんだけど、

「ディアーナさん!? どうしてお仕事しているの?」

 とっくに帰ったはずのディアーナさんの姿をカウンターの中に見つけて、とても驚いた。

 聞けば、今日の休日は明日と振り替えになったので、仮眠をとった後はずっと仕事をしていたとのこと。あまりの過酷な働きっぷりに目を丸くした私に、

「アリスさんの可愛い従魔たちの<登録手続き>も私がしたかったので、ちょうど良かったんです。お小遣いは自分で稼がないと!」

 ディアーナさんは疲れを顔に出さず、楽しそうに笑って立ち上がった。

 これはどう考えても、登録したばかりの担当冒険者のフォローをするために、無理に休みを返上しちゃった感じだよね?

 ほとんど眠っていないディアーナさんに申し訳なくて、どう報いたものかと考えていると、

(疲れを取るには甘いものにゃ♪)
(ディアーナもいっしょにばんごはんをたべる?)

 ハクとライムが❝わくわく❞といった感情を隠さずに提案してくれた。

 疲れているだろうから早く帰らせてあげないと、と思って2匹の提案を却下しようとしたら、

「とっても美味しい食事をご馳走になって、本当に元気なのよ?」

 ディアーナさんが本当に嬉しそうに笑いながら言ってくれたので、提案するだけしてみることにした。

 疲れを取るには……やっぱりアイスクリームかなぁ? 喜んでくれるかな?
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...