女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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進化(?)を続ける従魔たち

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「フランカの預金はいつ渡してもらえるの?」

 フランカの遺言を叶えてあげる為に必要なものを早く受け取りたいと申し出たんだけど……、ディアーナの返事は芳しいものではなかった。

 ギルドの規則で凍結されていたフランカ個人のお金は、今回のフランカからの遺言書代わりの手紙が効力を発揮してすぐにでも渡してもらえるそうなんだけど、パーティーの口座に預けていたお金が、……すでに引き出された後だったらしい。

「彼らが受けている依頼の完了報告もあるし、定宿には伝言を残しているから戻り次第ギルドに来ると思うんだけど……」

 ディアーナは申し訳なさそうに視線を落とすけど、別に彼女が悪いわけではない。 ……フランカの元パーティーメンバーの非道を見抜けなかったギルドには、少し言いたいこともあるけどね。

 パーティーに預けていたお金がまだ取り戻せないなら、孤児院に行くのは後日の方がいいだろう。 だったら今日は、

「じゃあ、アイテムボックス内の採取物を少し買い取ってもらおうかな」

 明日からの買い物の為にインベントリを少し整理しておこう。 いくら無制限に収納できるといっても、死蔵させておくのも性にあわないしね。

 インベントリのリストを見ながら不要そうなものを選んでいると、

「アリスさんがよろしければ、今回森で狩ったオークを売っていただけませんか? 高値で買い取らせていただきたいと買い取り担当が昨日からうるさくて……」

 シルヴァーノさんが1人の男性を伴ってやって来た。

「街で肉が足りないの?」

 私はオークの解体をお願いしても肉は(脂身も皮も骨も)全て返してもらっているが、他の冒険者たちは全てを売る人の方が多いハズだ。なのに買い取り担当がわざわざ買い付けに来るなんて、何かあったのかと心配しながら聞いてみると、

「アリスさんは森の中央部の桃を採取されていると聞きました。 だとすると、そこにいたオークも狩っているのではないですか?
 スフェーンの森のオークは美味い桃を食べている為か肉に臭みがなく、甘みが強くて大人気の高級食材なのです。それが中心部の桃を食べていたオークともなると……! 
 是非買い取らせてくださいっ!」

 買い取り担当さんは勢い込んで説明してくれる。

 ……そっかぁ。そんなにおいしい肉なんだ? もちろん【鑑定】の結果でもおいしいことはわかっていたけどね。 買い取り担当さんがわざわざ出張ってくるほどだとは思わなかったよ。 だったら、

「確かに中心部にいたオークも何体か狩って来たけど、<冒険者ギルド>には売れないわ」

 お断りの一択だ。

「なぜですか? ……ハッ! もしや<商業ギルド>に販売を!? 確かにあちらの方が高値を付けるでしょうが、ギルドへの貢献ポイントの為にも、是非、冒険者ギルドうちへ!」

「違うわよ。 私たちが食べるから」

「……は?」
「「「……え?」」」

「自分たちの分が減るから、売りたくないの」

「「「「「く、食うのかよっ!?」」」」」
「森の中心部のオークって言やあ、最高級オーク肉じゃねぇか!」
「❝自分たち❞って言った? ……もしかして従魔たちの事!?」
「従魔!? 俺たちでも食えない最高級オーク肉を従魔に食わせちまうのか!?」
「全部!? 全部食べちゃうの? 売れば宝石だって買える値段になるのに、全部食べちゃうの!?」

 いつの間にか話を聞いていたらしい冒険者たちギャラリーがなにやら騒がしい。

 ええ。うちのグルメな仔たちが食べるんですが、それが何か?  

 あまりの騒ぎように少しだけ不機嫌になりながら、黙ってインベントリリストを確認していると、

「では、中心部以外で狩ったオーク肉はどうかな? 売ってもらえませんか?」

 買い取り担当に助けを求められたディアーナが、ハクとライムをなでなでしながらとりなすように言った。

 ……それ、私ではなくハク達に聞いてるよね?  ディアーナったら、いつの間に私たちの力関係に気が付いたんだろう。 

 私が密かに感心している間も交渉は進み、

(……中心部以外にいた、小さいのなら売っても良いのにゃ)
(おおきいのはだめだよ~?)

 元々ディアーナを気に入っていた2匹は、簡単に陥落した。

 それでも小さいの=味が落ちるやつを選択するあたり、食いしん坊たちの譲れないラインは明確みたいだけどね!










 中心部以外のスフェーン産のオークなら3体買い取りに回すと言うと、❝気が変わらないうちに❞とすぐさま解体部へ連こ…案内された。

 途中でゴブリンの解体担当さんたちが揃って走ってきて、以前差し入れたお菓子のお礼を口々に言ってくれながら前回の88体分のゴブリンが間違いなく❝スフェーンの森の個体❞である証明書を渡してくれた。 

 これには私よりもディアーナが喜んでいたので、ディアーナに証明書を渡すととても大事そうに受け取り「お任せください」と不敵に笑う。 ……もしかして、結構、ストレス溜めこんでた? 

 まあ、この件は元々ディアーナが言い出したことだったしね。 私の為に怒ってくれたことが嬉しかったから、この証明書は彼女の気の済むように好きなように使ってもらおう。

 証明書の代金を払おうとしても受け取ってもらえなかったので、ゴブリンの解体担当さん達に<桃の果肉(普通の桃)入りゼリー>をお礼と共に渡して、その場で別れた。  

 彼らにとっても嬉しそうに❝お礼のお礼❞を言われてしまって、なんだかくすぐったい気持ちになったことは、ハクとライムにも伝わったらしい。 さっきまでディアーナと一緒になって悪い顔をしていたハクも、ライムと一緒に嬉しそうな顔で笑っている。 

 よし、この楽しさを形にしよう♪ 今夜のごはんはオーク肉のステーキだ! もちろん、森の中心部のオークだよ!

 解体部で3体+1体のオークを取り出し「この1体は夕方までには受け取りたい」とお願いする私を見て、ハクとライムが喜びのダンスを披露したことは、驚きだった。

 ……うちの従魔たち、隠し芸が多すぎじゃないかな?
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