女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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街歩き1日目 6

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「アリスさんはとても若く見えるから、ギルド職員の私が付けすることで少しでも周りからの認識を……。そう思ってさん付けしていたら、呼び捨てにするタイミングがなくなってしまって……」

 セラフィーノの指摘を受けたディアーナは、少しだけ困り顔で説明している。

「ああ、そういうことか。でもな……」
「私の知らない所で気を遣ってくれてたんだね。ありがとう!」

 それを聞いて私は素直に嬉しかったんだけど、セラフィーノには何か思う所があるらしく、言葉を濁している。

「何よ?」

「これは俺の受けた印象だから、全てが参考にはならないだろうが……」

 ディアーナに促されて、セラフィーノがとても言いにくそうに口にしたのは、

「アリスはなんて言うか……。年齢が不詳なんだよな。 もちろん16歳だってことは知っているぞ? でもな、見るヤツによって受け取るイメージに大きな幅があるんだ。
 見た目は誰が見ても一級品だよな。品よく整った顔に小柄だけど均整の取れた身体。そこにアリスの纏う雰囲気が加わるとだな……」

 そこで一旦言葉を区切ったセラフィーノは、私の顔を見ながら思い切ったように改めて口を開いた。

「アリスの柔らかい雰囲気と着ている服を見て<コンパニオン>だと思い込むヤツがいる。まあ、これはアリスに冒険者特有の荒んだ雰囲気が欠片もないせいもあるんだがな。よく観察したら、柔らかい雰囲気の中に凛とした強さを感じるし、<コンパニオン>特有の甘ったれた雰囲気や意味もなく他の女を見下すような視線を向けないことがわかるんだが、一旦思い込んだらそこまで思い至らないようだ。
 それとは逆に、整った顔が浮かべる警戒心皆無の笑顔と世間知らずな面を合わせてアリスを子供ガキだと思い込むヤツもいる。 これはGやFの低ランクの奴に多いな。 しっかり胸元を注意して見ればわかるだろう、って、…痛いって!! 蹴るなよ!」

「で? 何が言いたいの?」

 蹴られた脛を抱えてうずくまるセラフィーノを見下ろして、ディアーナが冷たい声で言った。 

 その続きは私も気になる。……返答しだいでは❝セラフィーノは女性の胸をじろじろと観察する変態です❞って、セラフィーノの恋人に告げぐ…、注意をしてあげるつもり!

 失言を悟ったセラフィーノは、慌てて私から視線を逸らし、

「下手にアリスを立てて接するよりも、がっつりと仲良しアピールしておいた方が、アリスの為になるんじゃねえか?ってことだよ!
 ディアーナは上位ランク冒険者たちやギルド職員からの信頼が厚いからな。そのディアーナと❝大の仲良し❞ってやつを軽んじるやつは多くないだろう!?
 アリスの実力を知っている奴らはすでにアリスにメロメロだしな!」

 少し早口に言い切った。

 要約すると、ディアーナが私を呼び捨てにすることで困ることは何もないってことかな。

 セラフィーノの釈明を聞いたディアーナは少しの間考え込んで、

「一理ある、わね」

 と呟き、

「改まると何だか照れ臭いんだけど……。アリス、これからもよろしくね?」

 はにかみながら私の名を呼んだ。口調まで砕けたものに変わっていて、なんだか新鮮だ。

 よし! セラフィーノ! この功績に感謝して、私の胸を観察していたことは彼女に内緒にしてあげるね♪











「縁を丸く加工した深い桶と、広くて浅い桶ですかい?」

「そう。でも、箍は金属じゃなくて自然素材、縄とか蔓とかを使って欲しいの。
 あ、私の両腕で抱えられる程度の木の中をくり抜いて器にしてくれるだけでも良いんだけど」

 次に来たのは桶職人さんの所。 

 スレイとニールのごはん皿を探していたんだけど、お店には気に入る物がなかったので直接職人さんの所に来てみた。ここなら気に入るものがなくっても注文できるしね!

 何に使うのかと質問を返した職人さんに「馬タイプの従魔たちのごはん皿」と答えると、普通に店で売っている金属の箍を使ったものではいけないのか?と困惑顔で返された。ここでは金属の箍しか置いていないので、面倒な依頼だと受け取られたらしい。

 使うのは普通の馬よりも匂いに敏感なスレイプニルなのでできるだけ自然素材を使いたい、と答えると職員さんが驚き顔を赤く染め「あっしにお任せくだせぇ!」と叫んだ。

 一気にヤル気を漲らせた職人さんに、ほんの少しだけ呆れた視線を投げかけると、

「ガキの頃からのあこがれの存在なんでさ。多めに見てくださいやし」

 と照れたように笑う。

 この国の童話の中に出てくるスレイプニルは、高い知性と理由なく人を襲わない理性的な性質から❝カッコ良い魔物❞として描かれているらしく、子供、特に男の子たちからは絶大な人気の魔物だそうだ。

 頬を染めながら言い訳をする職人さんは立派な成人男性なのに可愛らしくて、少年時代からのあこがれぶりが推測できる。 

「スレイプニルの為の桶なら、材質にもこだわりたい」

 憧れの存在スレイプニルの為に妥協せずに作りたい、と呟くので、インベントリからトレント材を取り出して見せると、職人さんは目を一段とキラキラさせた。

「木工関係の職人にとって、トレント材は喉から手が出るほどの優良素材よ」

 ディアーナが耳打ちしてくれたので職人さんのキラキラした視線の意味は理解できたけど、こちらの様子をうかがっていた奥さん?のギラギラした視線の意味は?

「………余ったトレント材の買い取り希望、かしら」

 ディアーナの推測を聞いた奥さんが、肯定するように何度も何度も頷いているので、ちょっとだけいたずら心が湧いてしまった。

 ちょっとだけ人参をぶら下げてみようかな♪

「うちの仔たちが気に入るような桶を作ってくれたら、トレント材を譲ってもいいよ。価格は……、冒険者ギルドの買い取り価格と同じでいいからディアーナが算出してくれる?
 ただし丸太5本までね」

 と提案してみると、

「任せて下せえ!!」
「約束ですよ!!」

 職人さん夫妻が力いっぱいにやる気を漲らせて返事をしてくれる。

 この様子だと、お留守番ばかりのスレイとニールにいいお土産ができそうだ♪
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