447 / 754
断罪 11
しおりを挟む頼みの綱のシルヴァーノさんにこっぴどく振られてしまい、これでビーチェも観念しただろうと安心していたんだけど、ふと気がついてしまった。彼女にはもう一本の綱が残っていることに。
しばらくは放心状態だったビーチェだけど彼女もそのことに気がついたらしく、「私にはおじいさまがいるわ!」と呟くと、しっかりと立ち上がって私たちを睨みつける。でも、
「孫娘が自分の紹介した先のギルドで問題を起こした挙句<女神の断罪>まで受けたのに、彼がギルドマスターのままでいられると思っているのか?」
サブマスが悔しそうに顔を歪ませながら言った一言を聞いて、凍り付いたように動かなくなった。何とか気を取り直して「おじいさまなら握りつぶせるはずよ……」と考えたらしいが、
「おまえが<女神の断罪>を受けたことは隠しようがないだろう? スキルを失い、全ての能力が子供並みに弱体していることをどうやって隠すつもりだ?
おまえがこのギルドで起こした問題については……、あの人なら握りつぶせるだろうが、きっとそんなことはしないな。責任を取ってギルマスを引退するだろう」
サブマスによって希望を打ち砕かれた。ビーチェのおじいさまと面識のあるらしいギルマスやシルヴァーノさんも同意見のようで深く頷いているから、本当にビーチェのおじいさまはギルマス引退の危機の様だ。
……とっくに成人している孫娘のしたことで、どうしておじいさまがそこまで責任を負わなくてはいけないのかという疑問が少しだけ頭に浮かんだけど、ギルマスの立場を自分に置き換えて考えたら納得するしかなかった。
もしも、私の紹介した人が紹介先で不正行為に加担していたら?
自分が身を置いている組織とは違う所だったなら、紹介先に深くお詫びして損害額の賠償などですむかもしれない。でも、同じ組織内だったら? 同じ組織の他部署に自分の口利きで身内を預かってもらって、その身内が不正行為を行っていたら……。どうしたって責任を感じてしまうのは当たり前のことだ。
だから今、私が言えることは何もない。いくら彼女のおじいさまが気の毒だと感じていても、口出しできることじゃない。
とても残念な気持ちでいる私に何を思ったのか、立ったまま俯いているビーチェのことは冒険者に任せて、ギルマスが私に向き直り頭を下げた。
「今日まで待たせてすまなかった。 こいつらの調査に時間がかかっちまったんだ」
「これほど時間がかかるとはわたしも思っていなかった。遅くなってすまなかったよ」
同時にサブマスも頭を下げて、ギルマスの代わりに、どうして今日まで待たされたのかを説明してくれる。
フランカがギルマスに宛てた❝パーティーに預けているお金❞の日付と金額が書かれた紙は古い物で、文字はその都度書かれたらしく丁寧なものから走り書きまで様々な筆跡で書かれていた。その為ギルマス達はフランカの手紙の内容を信じ、パーティー内の資金に不明な点があることを察してくれた。
そして不明なお金の行き先について、2つの可能性を考える。
1つは、フランカからお金を受け取るたびにヤツらがこっそりと使い込むこと。
もう1つは、派手に金を使うことでフランカや他のパーティーメンバーに疑われることを避ける為に、本当に貯めておくケース。このケースで貯めているのはパーティーの為ではなく、自分たち2人の為である可能性が高い。
でも、どちらかが持っていて、もし万が一、相手が先に死んでしまうとか失くしてしまうことを考えたなら、どこかへ隠している可能性が高いと推測して、ヤツらの動きを徹底的に調査してくれたようだ。その結果の報告書が私の前にドンッと積まれた。
数人がかりで調べてくれた調査内容はとても詳細で、ヤツら金の動きや先日街で私が声を掛けられた際の言動までもが詳しく報告されていた。
……ヤツらはフランカから搾取した金を、自分たちのパーティーハウスの私室に穴を掘って隠していたらしい。それぞれの部屋には鍵がかかっていたようなのに、よくもこんなことを調べられたものだと感心してしまう。時間がかかったのも仕方がないよね。と思いながらも、私の頭に(ヤツらを裁判所に連れて行って<審判の水晶>使わせた後に<断罪の水晶>で断罪すれば話は早かったのでは?)という考えがよぎった。
それはしっかりと表情に出てしまったらしく、
「何の調査もなしに裁判所で<水晶>の使用申請をすると、高額な使用料が発生するからね。 ギルドで調査する分にはそこまでの経費は掛からない。
……フランカなら一刻も早く真実を知らしめることより、孤児院に少しでも多くの金を渡してやることを喜ぶだろうと判断した」
サブマスが事情を説明してくれた。詳しい事情を話さずに私を待たせたことを再度詫びてくれながら、ヤツらから出た<水晶>はオークションにかけてフランカの遺産に上乗せしてくれることも約束してくれたので、私には何の不満もない。
今まで待った結果がこれなら、逆に大満足だ。
でも、こちらが万全の調査をしてからの<水晶>の使用だと料金が発生しないのかと感心していたら、これもラリマーの裁判所とオズヴァルド限定の特例措置だと聞いてびっくりしてしまう。
ギルマス、思っていたよりもず~っと凄い人だったんだね? ほ~んと、人は見かけによらないなぁ^^
ギルマスの【スキル】と<女神の断罪>のことは他言無用とのことで、ここに残っているメンバー(ヤツら3人を除く)はみんなで誓約書にサインした。特にペナルティーが発生する誓約書ではない分、これで済まされる私たちはとても信頼されている気がして、ちょっとだけ嬉しかったりする。
そして、誓約書へのサインだけでは信用できないと判断された3人は、<審判の水晶>を使って誓いを立てさせられた。
審判の水晶を使った誓いを破ろうとすると、スキルやステータスが水晶化するペナルティーが発生するらしいので、すでに最低限のステータスしか残っていない3人は命に関わることになる。
3人は蒼白になっていたけど、誓いを破らなければ良いだけなんだから、簡単な話だよね?
この<審判の水晶>の使い方も他言無用かと思ったら、これは内緒の事ではないらしい。みんなが知っていることではないけれど、別に広まっても何の問題もないそうだ。
というより広めて欲しいらしい。裁判所の収入が増えるから。
……裁判官さん。さっきは裁判所の仕事が減るから、ギルマスの能力が時短になってありがたいみたいなことを言っていなかったかな? お仕事増えても良いんだね~?
裁判官さんは私たちの話が終わるまでの時間を休憩にあてることなく、私の行動に関するエルダの報告書やまだ裁判所に提出していなかった新しい資料を読み込んでいたほど忙しい人のようでちょっと心配だったんだけど、
「❝誓い❞はコスパが良いので」
の一言で笑いを提供してくれた。
うん、犯罪者のグダグダした言い訳を長々聞くのって、時間の無駄に感じることがあるよね?
コスパが良い商売を広めようとするその姿勢、見習わないとね!
------------------------------------------------------------
ありがとうございました!
これで一区切り! あ~……、しんどかった……。
252
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】
本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。
Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited.
© 魯恒凛 / RoKourin
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる