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街歩き6日目 4
しおりを挟む「じゃあ、ギルマスたちに❝ごちそうさま❞を言わないとね?」
「「ごちそうさま!」」
「にゃ~ん!(ごちそうさまにゃ!)」
「ぷきゃ~!(ごちそうさま!)」
屋台通りを抜けた後、さっき買い込んだ分の代金は私のお金から払っていたと知って、ハクとライムが深く落ち込んでしまった。
私のかわいいハクとライム(とお留守番のスレイとニール)のオヤツ(私も食べるけど)なんだから、私がお金を払うのは当然だと思っていたんだけど2匹の中ではそうではなかったらしく、同じものを大量買いしたことを後悔している。
……焼き栗だけでも5軒から買っていたのは確かに買いすぎかもしれないけど、今の所お金には余裕があるから気にしなくてもいいのにね? と思っていたら(お金は大切にゃ! 食料は複製で増やすべきなのにゃ~!)とお叱りを受けてしまった。
複製するにも元の数がある程度ないと、複製回数が勿体ないんだけどね?
ハクとライムのしょんぼり落ち込む姿はとても可愛…、いや、可哀そうで! 仕方がないからさっきの買い物はギルマス達のお財布からお金をもらうことにしたら、途端に機嫌が回復するんだからうちの仔たちはゲンキンだ。
でも、そんなところも可愛くて、ディアーナと2人で込み上げてくる笑いを抑えるのが大変だった。
「へえ。じゃあ、簡単に捕まえられたんだ?」
「ええ。動機は嫉妬。その男は依頼失敗のペナルティを支払う為に自分の馬を売ってしまって遠出をするのが難しくなったから、腹いせに他の冒険者たちの足を引っ張ろうとしたみたい」
「……低劣な男」
「本当に……」
今朝、冒険者ギルドに寄っていたディアーナから、従魔登録担当の伝言を受け取った。
以前スレイとニールが協力した、毒を回避するために飼い主さんの手からしか餌を食べないお馬さんのその後の話だ。
セラフィーノから話を聞いた冒険者はすぐさま宿を冒険者ギルドの宿へ移して飼い馬を守り、セラフィーノからの通報を受けた宿と、大切な飼い馬に手を出されて怒り心頭の冒険者さんの協力で犯行現場を押さえられ、簡単に捕縛されたらしい。
刑罰は罰金30万メレ。……被害に遭ったのが馬たちだけなことと、使われた毒薬が命を奪うほどの物でなかったことから、軽い罰金刑ですんでしまった。でも、
「冒険者以外の仕事を出来そうなタイプ?」
「直接会っていないからわからないけど……。外面は良いようだから、本人の気持ち次第ってとこ?」
「そっか」
冒険者資格は剥奪されたそうだ。一度資格を剥奪されると名前を変えての再登録もできないので、その男の生活はすこ~しだけ困難なものになるかもしれないけど、まあ、自業自得だから仕方がないよね。
男が捕まったことで、これ以上お馬さんたちが被害に遭わないですむことを喜ぼう。
フライパンの作製をお願いしていた鍛冶屋さんに行き、玉子焼き専用フライパンの出来上がりを確かめる。
形良し、重さ良し、味……、
「こんな形の卵料理は初めてだ! ふわふわでふわふわだ! あの鍋でこんなものが出来上がるとは思ってもみなかったぞ! ……腹壊さないよな?」
「ほんと! ふわふわでふわふわだわ! こっちは卵の甘みが、こっちはお出汁の味が利いていてとってもおいしい!」
「オムレツとはまた違ったふわふわ加減だな。さすがアリスだ、最高に美味い! ……アリスの料理だから腹は大丈夫だ。でも、他所で食う時は気を付けろ」
(おいしいのにゃ! やっぱりアリスの作るごはんは最高なのにゃ!)
(おいしいね~! ぼくもありすのごはんがだいすき♪)
味も良かったようで何より!
玉子焼き専用フライパン作製の条件としてフライパンを使っての料理を希望されていたので、鍛冶職人さんには前もって❝焼き入れ❞と❝油ならし❞をお願いしておいた。ダメ元でお願いした❝におい対策=一度クズ野菜などを炒めておく❞も、職人さんはきっちりと済ませてから大切に保管してくれていたので、私は❝油返し❞をするだけで、すぐに卵焼きと出汁巻き卵を焼くことができ、職人さん、ディアーナ、店に来る途中で偶然会ったイザックやハクとライムが満足のいくまで卵を焼き続けた。
職人さんとイザックには卵だけでは足りないだろうと塩おむすびも出しておいたよ。おむすびと卵焼きは遠足…、今日は工場見学かな?の定番だよね♪
フライパンの出来栄えに満足して代金を支払おうとすると、職人さんは代金はいらない代わりに頼みがあると言い出した。どういうことかと尋ねる私と、訳知り顔でうんうんと頷いているディアーナとイザック。ますます訳が分からなくて思わず眉間にしわを寄せると、職人さんは慌てて、
「これを1日も早く登録してくれ! こんなに美味い卵料理が作れる鍋なんだ、絶対売れる!」
……玉子焼き専用フライパンの商業ギルドへの登録を要請した。
「これを作ったのは私じゃないから、あなたが申請したら?」
私はこういう物が欲しいとお願いをしただけ。作った職人さんが登録すればいいと思ったんだけど、
「それとこれは話が違う! 俺は依頼されたものを依頼通りに作っただけなんだから、これはあんたが登録するべきものだ!」
「アリス! そんなことをしたら、テントの権利をあの店に奪われるわよ!」
どうやらそうはいかないらしい。……テントの件は既存の物を改良したからと納得する。でもフライパンはもともとあるものの形を変えて作ってもらっただけなのに、どうして私の登録の権利になるの?
納得のいかない私と譲る様子のない職人さん。 平行線になるかと内心で焦っていたら、
「だったら共同登録でいいだろう? 俺たちにしてくれたように」
イザックがあっさりと解決案を出してくれる。 そうか、その手があったね! ……共同登録にすると、私にもお金が入ることになるのが少しだけ腑に落ちないけど、このまま譲り合いが続くよりはずっといい。
渋る職人さんはイザックが上手に説得してくれたので、このまま職人さんと一緒に商業ギルドへ向かうことになった。
………商業ギルドの受付に向かうとラファエルさんがいて、こちらが話を切り出す前にギルドマスター室に連れていかれるのはどうしてかな? おいしいお茶をご馳走してくれるのは嬉しいんだけどね?
この部屋の中で私がしたのは挨拶とサインだけ。 商品の詳しい説明は鍛冶職人さんがしてくれて、共同登録の話はイザックとラファエルさんが主になって詰めてくれた。レシピ使用料の取り分は職人さんの希望は1:9。 職人さんが1割で私が9割。納得のいかない私の睨みを受けたイザックの頑張りで3:7まで行きそうだったけど、ラファエルさんの物言いが入って2:8に落ち着いた。
一緒にレシピ登録する卵焼きと出汁巻き卵のレシピがあってこそ、玉子焼き専用フライパンの価値がわかるから。と言うのが理由らしい。
その代わり、職人さんは今日から作製を始める権利と玉子焼き専用フライパンの制作に対して❝本家本元❞や❝元祖❞などを名乗る権利を認められて、本登録が済み次第、すぐに販売を開始できるようになった。
本当に2割でいいのかと聞いてみたら、
「俺は職人だから。他人の案を横取りした金で飯を食うようになったら腕が腐っちまう。この鍋を作るのに❝本家本元❞を名乗らせてもらうだけで十分過ぎるくらいだ。2割の使用料を受け取る権利は俺にはないと思うんだが……、ありがたく受け取らせてもらう」
嬉しそうにお礼を言われてしまったので、納得することにした。
欲のない人だなぁ…と感心していると、みんなからなんだか生暖かい目で見られてしまったんだけど……。
なに、その視線? …納得いかないよ!?
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