女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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街歩き6日目 5

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 鍛冶屋さんが集まっている区域でイザックに出会った理由は、イザックがメンテナンスに出していた武器を鍛冶屋さんに引き取りに来ていたから。

 メンテナンスに出していた理由は、

「そろそろアリスからの見舞金を届けに行こうかと思ってな。マッシモのヤツも随分と落ち着いたから」

 とのことだった。

 解散したイザックの元パーティーメンバーは後2人。1人は軽症だったので治療をして健康体に戻ったけど、年齢的なものもあり冒険者を引退したそうだ。だからそこには見舞金を持って行くのではなく、ただ様子を見に行くだけ。

 でも、残念なことにもう1人は亡くなってしまったそうだ。亡くなった人には奥さんとお子さんがいるので、そちらの方にお見舞金を届けに行くとのこと。

 亡くなった人の口座のお金はそのまま奥さんの元に届いているからあまり心配はしていなかったけど、元気になっていると信じていたのにボロボロになっていたマッシモの件もあるので、自分の目でご遺族がきちんと生活できているか確認したくなり、早々に旅立つことにしたそうだ。

「いつ頃行くの?」

「そうだな……。ここで偶然会えて、アリスたちにも挨拶できたから……。明日にでも出るかな」

「そっか。急だね……。今夜はマッシモの所に泊まるの?」

「いや、今夜は宿に泊まる。アイツには昨日会って話をしているし、朝早くに旅立つつもりだから、子供たちを起こすと悪いしな」

「だったら、晩ごはんを一緒に食べない? お餞別に<キャロ・ディ・ルーナまちでいちばんのやど>のごはんをご馳走するよ。ディアーナも一緒にどうかな?」

 イザックが戻るのはひと月ほど先になるらしいので、その頃には私が旅立っているかもしれない。お別れの食事に誘ってみると2人は喜んで了承してくれて、できれば私の作ったごはんが食べたいと言った。イザックはついでに保存食を売って欲しいとも。

 ごはんも保存食もたっぷりとあるので笑って頷くと、嬉しそうに喜んでくれるので私も嬉しくなる。私の作る家庭料理でいいのなら、お腹がはちきれる寸前まで食べるといいよ♪

 2人は食事の後そのまま私の部屋に泊まることになったので、イザックは旅の支度を、ディアーナはお泊りの支度をしてから宿に集合することになり、一旦ここで解散することになった。

 さて。さっさと宿に戻って、献立を考えないと!










 スレイとニールに早めの晩ごはんを用意しながらセラフィーノからの報告内容を話して聞かせると、2頭は満足そうに頷いた。犯人の元冒険者の処遇には少しだけ不満そうだったけど、

「刑罰としては軽いものだけど、冒険者資格を❝剥奪❞されたってことは全ての冒険者ギルドに通達されるし、検問所の水晶にも罰を受けていると反応が出てしまうから、これからの生活はそれなりに過酷なものになるってディアーナが言ってたよ」

 と話してあげると納得して、それ以上の興味は持たなかった。2頭の興味は晩ごはんが入っている桶と樽に移っているからね。

「主さま、この桶と樽は?」

「スレイとニールのお皿とコップ。 気に入ってくれた?」

「「はい、とても!!」」

 宿に戻る前に受け取って来た桶と樽は、注文通りに天然素材だけで作っているだけでなくワンポイントにアマリネの花が彫られていた。私の着物ドレスのレースに咲いている花とお揃いだ。それだけでこの桶と樽が特注品だとわかったらしくスレイとニールがとても喜んで両側から頬を寄せてくれたので、わざわざ作ってもらった甲斐があった。私もとても満足だ♪

 私が持ち込んだトレント材はとても硬くて彫り物をするのは大変なことらしく、専門の業者にお願いをしたようだが、代金は上乗せされていなかった。トレント材入手の為に頑張ってくれた桶屋さんからの心遣いをしっかりと受け取って、当初の予定より少しだけお値引きしてあげた。 

 支払いを見ていたハクとライムも満足そうに笑っていたので、桶屋さんの今回の仕事は◎! 馬持ちの冒険者さんに会ったら宣伝してあげよう♪










 部屋で新作のポーションを作り終えて複製をすませるのとほぼ同時にディアーナが、メニュー表を作成し終わるのとほぼ同時にイザックがやって来た。

 今日買ったばかりの❝力強い❞シリーズの食器やカトラリーを使い、それぞれが選んだものを一度にテーブルに乗せてシェアする形にしたのが良かったようで、イザックはいつもよりも多めに野菜を食べ、ディアーナは嬉しそうに少しずつ色々なものに手を伸ばし、ハクとライムは食べたい料理の側に行って近くにいる誰かに取り分けてもらい、その度に頭などを撫でてもらってご機嫌の様子だ。

「イザックはひと月ほど戻らないのよね? どこまで行くの?」

 一通りの料理を口にしてお腹がいっぱいになったらしいディアーナがメロンのシャーベットを食べながら聞くと、イザックは目玉焼きを乗せた極桃オークのハンバーグをおかわりしながら、行き先を答える。

 イザックの行き先は小さな町とその先にある村で、町の方には取り立てて特産物などはないようだけど、村の方が、

「へぇ、栗の産地なんだ? 生栗があれば<栗ご飯>が作れるなぁ。モンブラン、はむずかしいか……。栗の甘露煮とかもおいしいよね~。産地から直接買えば新鮮だし、蒸し栗もおいしそうだな」

 質の高い栗が採れる村のようだ。

 今日の屋台では焼き栗をたくさん買ったけど、生栗は見当たらなかったんだ。思わずいろいろな栗料理に思いを馳せていると、ハクとライムが興味を持ったらしい。

 イザックの足の上に飛び乗って、「にゃーっ!(いっぱい買って来て欲しいのにゃ!)」「ぷきゃーっ(たくさんかってきて!)」とおねだりを始める。

 ……ハクさん、ライムさん。イザックが戻ってくるまで私たちがこの街にいるとは限らないし、栗にも時期があるからね? もう、収穫が終わっている可能性だってあるんだよ?

 なかなか激しいおねだりを続ける2匹に困惑顔のイザックが、

「もしかして、栗を買って来て欲しいのか? あ~…、買って来てやりたいんだがな……。時期を考えると、俺が村に着く頃には収穫が終わっている可能性が……」

 2匹にやんわりとお断りを告げる。

 ディアーナも、探せば生栗を売っているお店もあると思うと説得してくれたんだけど、私の呟きを聞いていた2匹は産地直送にこだわり……、

(だったらニールと一緒に行くのにゃ! ニールの足ならきっと収穫に間に合うし、栗が新鮮なうちに戻ってこられるのにゃ!)

 突拍子のないことを言い出した……。

 ちょっと、2匹とも! 食欲に理性が負けてるって自覚はあるかな?
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