女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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街歩き6日目 6

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 ❝誇り高く、主と認めた者しかその背に乗せない❞と言われているスレイプニルだけど、うちのスレイとニールは融通の利くタイプのようで、すでに❝馬具工房の店主さん❞と❝ディアーナ❞という前例がいる。だから今回の件も大丈夫だとハクは言うけど、

「俺にはアリスに譲ってもらった馬がいるからな。それに馬車でもないとスレイプニルが食う量の餌を持ち歩くなんて俺には無理だぞ」

 私から話を聞いたイザック本人から反対票が入った。

 イザックのお馬さんあいぼうこの街ここに置いて行くのは可哀そうだし、私がスレイプニルうちのこの為に用意するごはんの量を知っているから、自分のアイテムボックスでは戻ってくるまでの間の食料は持ち運べないと判断したようだ。

 2頭とも体が大きい分いっぱい食べるからね。

 それにイザック1人に2頭も必要ないからどちらか1頭だけがお留守番をすることになる。仲良しの2頭を引き離すなんて可哀そうだ。

 イザックの後に私がそう言ってハクを説得しようとしたけど、ハクは納得しなかった。少しだけ考え込んだ後、

(ちょっと待ってるのにゃ)

 とだけ言って窓から出て行ってしまう。

 ❝生栗を手に入れたい❞だけでスレイ達ていまいを巻き込んだ我儘を言うハクではないから不思議に思い、残ったライムに理由を知っているかと尋ねてみても、

(はくはぼくたちのりーだーだから、いっぱいいっぱいかんがえてるの)

 嬉しそうに身をぷるぷる震わせながらも肝心なことは教えてくれない。

 仕方がない…。ごはんの続きを食べながら、ハクが戻るのをゆっくり待つとしよう。









(イザックはニールが乗せていくのにゃ!)

 ハクが颯爽と窓から戻ってくるまで、それほどの時間はかからなかった。

 食後のお茶を飲みながら、


 ・イザックの旅に同行するのはニール。ニールはイザックを背中に乗せることに同意している。スレイは私の騎馬としてお留守番

 ・ニールはスレイプニルまものなので、本来なら毎日3食の食事は必要ない。今までの食事から活動に必要な分のエネルギーを引いた余剰エネルギーは、スレイとニールの肉体にしっかりと蓄えられているから(❝太った❞って言わない所にハクの優しさを感じる)、10日ほど絶食をしたとしても問題はない。(野生の馬は1日10㎏から20㎏の草を食べるって聞くのに、なかなか燃費のいい体だよね!)


 ことを説明されたけど……、ハクがこんなに強引に話を進めることにやっぱり納得がいかない。

 だから、

(ハク? 私はニールをイザックに預けることに同意してないよね? どうして勝手に話を決めてしまったのか、説明をしてくれる?)

 ハクを両手で持ち上げて、目を見つめながら問いただす。

 ハクも初めは、

(おいしい生栗をいっぱい買ってきたら、いっぱいおいしい料理を作って欲しいのにゃ♪)

 なんて言っていたんだけど、

(はく~、ありすにはきちんとせつめいをしないと、ふあんになっちゃうよ?)

 ライムの援護せっとくを受けて渋々と応じてくれた。

(スレイプニルのつがいは、いつも一緒にいるのが当然なのにゃ)

(うん? だったらどうして今回は引き離そうとするの?)

(スレイもニールも、もう、野生のスレイプニルじゃないのにゃ。アリスの従魔なのにゃ!)

 ……正直に言って、ハクの説明が良くわからない。でも、このもったいぶった話の持って行き方にはなんとなく覚えがある。出会った頃の、保護者せんせいモードのハクだ。

 ……ちょっとだけ面倒だけど懐かしい。でも、

(ハク。この話は私たちだけじゃなくて、イザックまで勝手に巻き込もうとしているんだよ? きちんと説明して)

 今は、イザックとディアーナも同席しているんだ。心配そうに私たちを見ている2人に余計な心配はかけたくない。さっさと話せ~?と無言で見つめているとハクもそれを察したのか、小さくため息を吐きながら話し始めた。

 本来、スレイプニルの番はいつも一緒に行動をする。一緒に行動していないと情緒が不安定になる個体もいて、子育て中に、子供と子供の面倒を見る雌の為に雄が単独で狩りに行くことを不服に思う雄もいるらしい。

 結果……雄が子供を蹴り殺したり、まだ育っていない子供を雌と共に狩りに連れ出して、不慮の事故に遭うこともある。

 だから、今から❝離れていても、番の心は一緒にいる❞ことに慣れさせておきたい、と。

 私の従魔になってくれた2頭だけど、子育て中の個体がどんな動きをするのかは予測がつかない。だからこそ、今から手を打っておきたい。今なら私への忠誠心から、番に別々の任務を与えることで離ればなれにすることができるから、と。

 ……もしもニールが自分の子供の命を脅かしたなら私がどれほど悲しむのか、想像もしたくないから、と。

 聞いてみたら、ちゃんとした理由があることだった。ハクは私の気がつかない所で色々と従魔たちなかまと私のことを考え、フォローしてくれている。

 だったら、私もハクのしたいことを後押ししないとね? それが可愛い従魔たちの幸せにつながるかもしれないんだから!

 ハクの考えに納得し、私たちへの思いやりに感謝した私はイザックに向き直る。

 さて、これから切り出すのは私たち主従のワガママだ。イザックは話を聞いてくれるかな?
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