女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
467 / 754

再会 2

しおりを挟む




「マルゴさんが<村長>で、オスカーさんが<村長代行>に!?」

「ああ。これまで色々と我慢して来た村民みんなも、<治癒士>のアリスさんを追い出したのが村長の孫ポーリンだったことで不満が爆発寸前だったんだ。 そこに、『カモミールティーむらおこし計画』の横取り未遂がバレたことで、とうとう爆発しちまった」

 私が村を出てからの短期間に、村には大きな変化があったようだ。

 元々村民たちの村長たぬき一家に対する評価は決して高くなかった。村長の奥さんが亡くなった後、王都で働いている村長の姉マルゴさんに助けを求めるくらいだからね。マルゴさんが尻拭いをしてやることでかろうじて村長としての体面を保っていただけだ。

 でも、旅の途中の<治癒士>(と思われていた)の私を村に引き留めるために取った手段(軟禁未遂)や、その後のポーリンの態度(マルゴさんに対してもひどかった!)を見て、良識のある村民たちの心は村長一家から離れるばかり(村長の息子たちのルシアンさんへの仕打ちを考えても、人望なんてあるわけないよね)。

 そこに、マルゴさん主導で始まった『カモミールティー普及計画』の横取り未遂。詳細は知らなかった村民たちだけど、マルゴさん一家やルベンさん一家が取り組み始めた計画には興味深々だった。

 誰かに「そんな花、どうするんだ?」と聞かれる度に「利益が出るとわかったら、あんた達も加わるといい。村の為にもなる」と言っていたおかげで、村おこしの一環だと期待されていたようだ。それを横取りして自分たちだけの利益にしようとした村長一家と腰巾着たちに、村民たちの我慢も限界を超えた。

 連日「あんたが村長になってくれ」という嘆願がマルゴさんに届けられ、とうとうマルゴさんがたぬきに見切りをつけることになってしまった。

 決断したマルゴさんの行動はとても素早く、村長に不満のある村民たちをあっという間にまとめ上げて村長おとうとに引導を渡し、ついでとばかりに『カモミールティー普及計画』を『カモミールティー製造販売計画』に切り替えて村を挙げての話にすると、夫であるオスカーさんを村長代行に任命して村長交代劇の後処理を丸投げし、自分はカモミールティーの製造の責任者として動き始めた、と。

 マルゴさんは<村長兼カモミールティー計画責任者>、オスカーさんは<村長代行>、ルベンさんは<顔役代表兼カモミールティー計画副責任者>、ルシィさんはルベンさん&オスカー一家のお世話係でオースティンさんは村で1番の稼ぎ頭(=一番の納税者)として商人相手の外交要員。 

 で、どうしてルシアンさんだけこんな所にいるのかというと、

「<村長代行>命令なんだ。領主さまに❝村長交代の届け❞を出すついでに、<冒険者>として外の世界を見てこいって。『とりあえずはBランクまで上げろ、目標はAランクだ』って言われたんだけど、……Bランクって結構大変だよな?」

 とのことらしい。

 王都で<冒険者ギルドの総ギルドマスター>まで務めたオスカーさんの見立てでは、

 今後村は急成長をすることになる。元々、凄腕の魔道具制作者のオースティンさんがいるお陰で村への人の出入りが増えていた。そこへ❝村長交代劇❞があり❝カモミールティー計画❞が始動したことで村民たちの熱量は日々上がる一方。この動きを商人が目にしたら、きっと人や物資の流入がはじまり、ますます村は大きな熱量を急激に生み出すことになり……、

「だん、じょん……?」

「ああ、村の近くに『魔物を生み出す迷宮ダンジョン』が生まれる可能性があるそうだ」

 急激に増える熱量は、『ダンジョン』を生み出す可能性があるらしい。……この世界にダンジョンなんてあったんだ?

 村の近くにダンジョンが出来たらそれを目当てに<冒険者>たちが集まり、冒険者や素材目当ての商人も集まって来る。そうすると当然村は発展して、ついでとばかりにならず者たちも集まって来るだろう。その時にルシアンさんが村出身の<上位ランク冒険者>として村に戻るだけで、村(その時はもう町かな?)の治安に大いに役立つ。とのことだった。

 でも、その為にルシアンさんを危険な職業に就けるなんて……と少しだけ嫌な気持ちになっていた私は、

「とか言いながら、『外の世界が楽しかったらそのまま戻ってこなくてもいいし、冒険者なんていつ辞めても構わん。人生を楽しめ!』とか言っちまうオスカーおじさんは、何を考えてるんだろなぁ」

 苦笑しながら続けたルシアンさんの言葉を聞いて反省する。

 これはルシアンさんへのご褒美だ。前・村長マエル一家のせいで苦渋を舐めることになったのに、それでも村の為に戦っていたルシアンさんに、❝自由❞をくれたんだ! 

 まだ若いルシアンさんにとって、村の外の生活は良い刺激&良い経験になるだろう。

「それでな……。オスカーおじさんに『もしも運よく嬢ちゃんに会えたら❝携帯食❞を売ってもらえ! あれを手に入れることが上位冒険者への近道だ』って言われてその為の資金まで渡された。 
 あのくそ不味い携帯食を食わずに活動できるなら、と思ってアリスさんの後を追ってこの街に来てみたんだけど、……売って貰えるか?」

 ついでに私の商売も応援してくれるらしい。アルファ化米などの携帯&保存食はオスカーさんの一言が開発のきっかけだったもんね。

 と言ってもルシアンさん相手に商売をする気もなくて、当然無料で渡そうとしたんだけど……。ルシアンさんに拒まれた。ついでに、❝親しき中にも礼儀あり❞的なお説教までいただく羽目になり……。

 ちゃあんと! お金をもらって販売しましたよ! 

 でもね? オスカーさん! 携帯食購入の資金に大銀貨1枚(=100万メレ)は多すぎるんじゃないかな!?

 お釣りは当然、初期装備を揃える為の資金だと判断していいんだよね? ルシアンさんはそんなつもりはないようだけど、ちゃんと説明したのかな!?

 とりあえず、明日は一緒に装備品を見に行く約束を取り付けて、話題を変える。

 まだまだ聞きたい話はいっぱいあるんだ。 ルシアンさんの旅の話とか、ね。

 え? ジャスパーで私の話を聞いた……? いや、その話は別に聞かなくてもいいかな。 あ、でもアルバロたちが元気かは知りたい! 

 モレーノ裁判官の話は……、噂でしか知らない? そっか、残念。

 じゃあ、直接連絡しようかな。マルゴさんが村長になったのなら、新・領主であるお父さまにきちんとお願いしておきたいし、そろそろあの穏やかな声も聴きたいしね♪

 前・村長たぬき一家の話? 村でおとなしく暮らしてるんじゃないの? マルゴさんが村長として目を光らせているなら、問題を起こせる気がしないんだけど^^

 ルシアンさんとの再会は、楽しいおしゃべりでアッという間に時間が過ぎてしまった。 
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...