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お仕事 6
しおりを挟む子供たちにとっては初めての組紐体験。
「見て~! すっごく綺麗!」
「‥‥‥なんで歪むのぉ!?」
「あ~、色の組み合わせがイマイチだったかも?」
「にいちゃん、すげぇ! 真っ直ぐだ!」
「どうして私のはこんなにヨレヨレしてるの?」
「ここをもっと削ってやれば、糸を傷めないで作業が楽になるかも‥‥‥」
上手に組めて喜ぶ子から、自分の思うような柄にならなくてがっかりする子。そして、道具の改善に意識を向ける子まで、その表情は様々だ。
組紐は一旦組み始めると後は単調な作業になるので、さっさと飽きてしまう子もいれば根気強く続けられる子もいて、最初の段階で子供たちの向き不向きを見るのは難しいことではない。
中には根気はあるけど力加減が苦手で糸が引き攣れたりしている子もいるけどね。そんな子には、上手に組めている子が、
「えっとね、同じ力加減でペースを守っていると、綺麗にできる、かも‥‥‥」
「‥‥‥こんな感じ?」
「うん、綺麗になってる!」
アドバイスをしてくれるので、段々と綺麗に組めるようになっていってとても嬉しそうだ。
ミネルヴァさんはこういった作業が元々好きなようで初心者とは思えない出来具合だし、ルシアンさんは、単調な作業に飽きてしまった子と一緒に作業をしてあげているうちに、なぜか彼が主体で円盤を持つことになっていて首を傾げていた。元々が器用なルシアンさんだからね。気を取り直した後は押し付けられた円盤で楽しそうに糸を組み始めていたけど。
子供たちの中で、頭角を現したのはべニアミーナちゃんだった。
元々みんなのお姉ちゃん役の彼女は自分が上手に組めることで驕ることなく、上手に組めない子に優しく教えてあげる余裕もあるので、このままみんなの牽引役をお願いするのもありかもしれない。
ヴァレンテ君は組紐を体験することで「おチビが混乱しないように、番号を振ってやるかな」「錘を揃えてやったら喜ぶかも」と、どんどん円盤の改善案を考え出してくれている。
今回の試み・組紐作りの滑り出しに手ごたえを感じた私は、
「さて。みんなそろそろ手を止めて、晩ごはんにしようか!」
飽きてしまった子供が増え始めた頃合いを見て、ご機嫌でごはん休憩を提案した。
以前にミネルヴァさんに言われた通り、ここで出すごはんの素材にあまり良い物は使っていない。それでもおいしそうに食べて嬉しそうにおかわりをしてくれる子供たちを見ながらミネルヴァさんと、
「みんなでたくさん稼いで、もっとおいしい物をたくさん食べられるようになりましょうね!」
と話していると、それを聞いていた子が、
「もっとおいしい物があるの!? だったら頑張ってお仕事するよ!」
と声を上げたかと思ったら食べかけのごはんを急いで掻き込み、作業途中の組紐置き場に走って行こうとするので、慌てて止めた。
食事の後はみんなでゆっくりと休憩しましょう! お仕事はもちろん大事だけど、メリハリをつけることも大事なんだよ! 特に育ち盛りのあなた達には!!
<組紐作り>を仕事として認識した子供たちは、食後の休憩が済むとすぐさま作業に戻ろうとしたけど最初から根を詰めさせるつもりは私にはなかった。もちろんそのことはミネルヴァさんと打ち合わせ済みで、子供たちの作業時間は❝夕食の前まで❞としている。作業をしたがっている子の説得方法は、
「さあさあ、今日はもうおやすみなさい。仕事の続きは明日の朝、お日様が昇ってからよ。灯りを早く消さないと、明日の食事がいつもより質素になってしまうわよ?」
❝灯り代の節約❞だ。
元々孤児院の食事は1日2食。福利厚生として1日3食を提案してみたけどミネルヴァさんに苦笑交じりに却下された。いきなり生活環境を変えるのは好ましくない。子供たちが自分で働いて賃金を得ている実感を持ててからでも遅くはない、と。
一度贅沢を覚えると質素な生活に戻すのは難しい。今回の仕事が上手く回るようになるまでは、今のままの生活を続けていたい。とのことだった。
確かに、組紐事業が上手くいく保証はない。商業ギルド員であるラファエルさんやモレーノお父さまの協力があっても、コケる時にはコケるのが新規事業の危うさだ。彼らの保護者であるミネルヴァさんの意見は尊重する。
でも、雇用主の特権として、日々の食材の差し入れと毎日のお風呂代は負担させてもらうけどね?
明日のお昼ごろにまた顔を出すことを約束して、今夜は宿に戻ることにした。
私がいると子供たちの興奮が続き、いつまでも眠ろうとしない子がいることに気がついたからだ。
作業途中の円盤や刺繍糸を全て鍵のかかる部屋に移動して、今日の作業は終わりだと改めて宣言する。
道具を鍵のかかる部屋に移動させたのは盗難防止目的じゃないんだよ。子供たちが月明かりを使って作業をしないようにの防止策。
時間給ではなく歩合給にしたことで、子供たちが無理をしない様にとのラファエルさんからの提案だ。
この処置に特に残念そうな顔をしたのがヴァレンテ君とべニアミーナちゃん。みんなのお手本になる子たちが、率先して無理をしてはいけません! ‥‥‥以前に預けておいた、お箸と女神像用の木材もしっかり鍵のかかる部屋に移動しておいた。
ルシアンさんと一緒にお風呂から帰って来たヴァレンテ君が、木材の保管場所が変わったことに気がついて愕然とした顔になっていたそうだけど‥‥‥。
灯りのない所での子供の夜更かしは、許しませんっ!
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