女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
524 / 754

金策 1

しおりを挟む




<運び屋>さんを雇う費用の計算は難しい。

 なぜなら遠距離の移動になるので天候やアクシデントなどを加味して考えないといけないからだ。

<運び屋>さん本人とその<護衛>の移動にかかる日当分や宿泊費や食費はもちろん、急ぎの移動だと馬を乗り継ぐ必要があるのでその為にかかる費用。悪天候による足止めにかかる費用や魔物や盗賊に襲われる危険もある為その分の危険手当などを盛り込む必要があり、簡単に計算ができないからだ。

 大まかな見積もりを作り後からの請求になるのだけど、見積もり額を超えてしまうこともしばしばあるらしい。

 その為、依頼人は見積もり額+高額の予備費を彼らの所属するギルドに預ける必要がある。

 ……つまり、後から戻ってくる可能性はあるけれど、たくさんのお金が早急に必要になるということだ。

 モレーノお父さまからいただいた❝お小遣い❞の残りでは足りない可能性が高い。

 だから、私はハクとライムに宣言した。お金が足りなくなるかもしれないので今夜は<キャロ・ディ・ルーナ>には宿泊できないと。

 ……結果は、

(だめにゃ! 今夜はライムと一緒にお風呂でアリスと遊ぶ約束をしているのにゃ!)
(ぼく、こんやはハクとアリスといっしょにオフロであそべるとおもってた……)

 従魔2匹からの反対意見。

 しっかり私の名前が入っている所から、私の疲れを癒すのが目的なんだろうと推測でき、心配そうに私を見る2匹の視線には勝てそうにない。

 だったら、夜までの短時間でしっかり稼ぐしかないよね。

「金策に行くよ!」

 私はハクとライムを両腕に抱き、勢いよく部屋を飛び出した。












 まずは、野菜の買い取りでお世話になっている職員さんに事情を話し、商業ギルドで預かってもらっていた野菜を全て買い取ってもらうことにした。

 収穫してから時間が経ってしまっている分は割安になってしまったけど仕方がない。とりあえず、換金できるものは換金しておこう。 もちろん、明日の朝に収穫する分は売らないつもりだと伝えておいた。何とかしてみせる!







 次に向かったのは<キャロ・ディ・ルーナ>。

 今夜の宿を確保する為でもあるんだけど、まずは水の買い取りをしてもらう為。少しでも早い方がいろいろと使えるもんね? スフェーンでたくさんの水を補給できたし、高額買い取りに期待大だ。

 フロントに向かうと門番さんから連絡を受けていたらしい総支配人さんと料理長が飛んできてくれた。

 2人とも、私たちが怪我一つなく元気に戻ったことを喜んでくれた上に、私の期待通り、料理長は大量の水を買い取ってくれたし、総支配人さんからはちょっとお役立ちな報告を聞かせてもらった。

 なんと! 私の販売する水は❝腐りにくい❞らしい。 少なくとも、ここを発つ前に販売した水はまだ腐らずにおいしいままだと!

 おいしいお水とお料理が売りの<キャロ・ディ・ルーナ>で、早々においしい水を出せなくなるのは痛手になる。なので私が留守の間は、私の販売した水を料理に使うのを止めて飲み水としてしか提供しなかったそうだ。

 お料理の評判が落ちるかもしれない上に、残している水もいつ悪くなるかわからない危険な賭けだったけど、総支配人さんは見事に賭けに勝てたようだ。

 料理用の水はラファエルさんがディアーナに協力を求めて【クリーン】を使える冒険者を引っ張って来てくれたおかげで、そこまで味を落とさずに済んだようだし、飲み水として提供していたお水は今日まで腐ることなくおいしいまま。宿の評判も上々のままだ。

 今夜からはお料理にも私のお水を使えるようになったことで、提供を控えていたメニューも出すことができると料理長と2人で嬉しそうに笑っている。

 もちろん、私の頬も嬉しくてゆるんでしまう。私の販売するお水が腐りにくいということは、これから行く<冒険者ギルド>でも買い手を探すことができるから!

 水を持っての移動が大前提の彼らにとって、❝腐りにくい水❞は商品としての価値があるはずだ!

 私が泊まっていた部屋は不在の間は当然他のお客さんに貸し出していたけれど、今夜は私の為に空けてくれるそうなので、ハクとライムと存分にお風呂タイムを楽しむことができる。

 喜ぶハクとライムを連れて、冒険者ギルドに急ぐことにした。
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...