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金策 1
しおりを挟む<運び屋>さんを雇う費用の計算は難しい。
なぜなら遠距離の移動になるので天候やアクシデントなどを加味して考えないといけないからだ。
<運び屋>さん本人とその<護衛>の移動にかかる日当分や宿泊費や食費はもちろん、急ぎの移動だと馬を乗り継ぐ必要があるのでその為にかかる費用。悪天候による足止めにかかる費用や魔物や盗賊に襲われる危険もある為その分の危険手当などを盛り込む必要があり、簡単に計算ができないからだ。
大まかな見積もりを作り後からの請求になるのだけど、見積もり額を超えてしまうこともしばしばあるらしい。
その為、依頼人は見積もり額+高額の予備費を彼らの所属するギルドに預ける必要がある。
……つまり、後から戻ってくる可能性はあるけれど、たくさんのお金が早急に必要になるということだ。
モレーノお父さまからいただいた❝お小遣い❞の残りでは足りない可能性が高い。
だから、私はハクとライムに宣言した。お金が足りなくなるかもしれないので今夜は<キャロ・ディ・ルーナ>には宿泊できないと。
……結果は、
(だめにゃ! 今夜はライムと一緒にお風呂でアリスと遊ぶ約束をしているのにゃ!)
(ぼく、こんやはハクとアリスといっしょにオフロであそべるとおもってた……)
従魔2匹からの反対意見。
しっかり私の名前が入っている所から、私の疲れを癒すのが目的なんだろうと推測でき、心配そうに私を見る2匹の視線には勝てそうにない。
だったら、夜までの短時間でしっかり稼ぐしかないよね。
「金策に行くよ!」
私はハクとライムを両腕に抱き、勢いよく部屋を飛び出した。
まずは、野菜の買い取りでお世話になっている職員さんに事情を話し、商業ギルドで預かってもらっていた野菜を全て買い取ってもらうことにした。
収穫してから時間が経ってしまっている分は割安になってしまったけど仕方がない。とりあえず、換金できるものは換金しておこう。 もちろん、明日の朝に収穫する分は売らないつもりだと伝えておいた。何とかしてみせる!
次に向かったのは<キャロ・ディ・ルーナ>。
今夜の宿を確保する為でもあるんだけど、まずは水の買い取りをしてもらう為。少しでも早い方がいろいろと使えるもんね? 森でたくさんの水を補給できたし、高額買い取りに期待大だ。
フロントに向かうと門番さんから連絡を受けていたらしい総支配人さんと料理長が飛んできてくれた。
2人とも、私たちが怪我一つなく元気に戻ったことを喜んでくれた上に、私の期待通り、料理長は大量の水を買い取ってくれたし、総支配人さんからはちょっとお役立ちな報告を聞かせてもらった。
なんと! 私の販売する水は❝腐りにくい❞らしい。 少なくとも、ここを発つ前に販売した水はまだ腐らずにおいしいままだと!
おいしいお水とお料理が売りの<キャロ・ディ・ルーナ>で、早々においしい水を出せなくなるのは痛手になる。なので私が留守の間は、私の販売した水を料理に使うのを止めて飲み水としてしか提供しなかったそうだ。
お料理の評判が落ちるかもしれない上に、残している水もいつ悪くなるかわからない危険な賭けだったけど、総支配人さんは見事に賭けに勝てたようだ。
料理用の水はラファエルさんがディアーナに協力を求めて【クリーン】を使える冒険者を引っ張って来てくれたおかげで、そこまで味を落とさずに済んだようだし、飲み水として提供していたお水は今日まで腐ることなくおいしいまま。宿の評判も上々のままだ。
今夜からはお料理にも私のお水を使えるようになったことで、提供を控えていたメニューも出すことができると料理長と2人で嬉しそうに笑っている。
もちろん、私の頬も嬉しくてゆるんでしまう。私の販売するお水が腐りにくいということは、これから行く<冒険者ギルド>でも買い手を探すことができるから!
水を持っての移動が大前提の彼らにとって、❝腐りにくい水❞は商品としての価値があるはずだ!
私が泊まっていた部屋は不在の間は当然他のお客さんに貸し出していたけれど、今夜は私の為に空けてくれるそうなので、ハクとライムと存分にお風呂タイムを楽しむことができる。
喜ぶハクとライムを連れて、冒険者ギルドに急ぐことにした。
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