女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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治癒士ギルド 静かな戦い 6

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 ヒールには怪我を治したり体力を少し回復するだけの効力しかない。だからジーノ君の患っている<魔力循環不全症>にはあまり役には立たないだろうと思っていたんだけど、

「お母さん、ぼくお腹空いちゃった……」

「まあ、本当に!? だったらすぐにごはんを作るわね!」

「いや、今日は俺が作ろう」

「あら、ジーノは私に言ったのよ? せっかくのご指名なんだから私が作るわ!」

 ジーノ君の食欲を湧かせる役には立ったようだ。

 ジーノ君が痩せ細っているのは魔力の循環が良くないせいで体調を崩しがちになり、体調を崩してベッドで横になることが増えたせいで体力が落ち、体力が落ちる事で食欲が落ち、ますます体力が落ちるせいでとうとう食べる力もなくなるという悪循環に陥ったかららしい。

 落ちた体力を少し回復することで食欲が戻るのなら、治癒士たちのヒールもちゃんと役に立っていたってことだけど、ただその為にかかる費用を考えると、なかなか簡単には使える手段ではない。

 料理人さんの稼ぎでは2か月に一度のヒールが精いっぱいで、それでも足りない分は総支配人さんが無利子で貸してくれていたそうだ。

「総支配人はジーノの治療の日には必ず『ふた月の間よく頑張った』と、いつもお菓子を持たせてくれます。ジーノと俺たち夫婦の分まで。
 そして、『この病はたとえ薬が飲めなくても、成長と共に自然と治ることが多いと聞いている。ジーノが健康で幸せになるのはもうすぐだ』と元気づけてくれるのです。俺たちは宿に向かって足を向けては寝られない」

 と宿の方角を拝むように手を合わせる。

 ……私の中で、元々高かった総支配人さんの株が爆上がり中だ。今度おやつでも差し入れしちゃおうかな♪

 知らなかった総支配人さんのエピソードを聞いてほっこり気分でいると、料理人さんが慌てたように居住まいを正し、

「あの…、今回の治療費は半月後の給料日まで待ってもらえませんか?」

 申し訳なさそうに口を開く。

 ……私の事情で巻き込んだ家族から私が治療費を受け取るの? しかも根治治療ではなく間に合わせの対症療法なのに?

 そんなことができる訳もなく、治療費の受け取りを拒むと、

「……ぐすっ」

 ごはんを食べ終えてうとうととしていたジーノ君がまた泣き始めた。

 ……どうやら、自分の為に誰かが不利益を受けることに過敏になっているようだ。……まだたった5歳の子供なのに!

 彼をこんなに追い詰めてしまった状況と、顔も知らない❝誰か❞に対する腹正しさを無理やり飲み込み、私はできるだけ高慢に見えるような笑顔を作って口を開く。

「あら? 私はご両親からの治療費の受け取りを断っただけよ? この治療はジーノ君の為のものなんだから、ジーノ君が元気になってからきっちりと貰うつもり。いわゆる❝出世払い❞ってヤツだから、元気になったら頑張って働いて支払ってね?」

 両手でジーノ君の顔を上げさせながら告げると、彼はきょとんとした顔になり、

「ぼく、元気になるの? おしごといっぱいしたらお金いっぱいもらえるかな?」

 とご両親に向かって首を傾げて問いかけ、愛息子が生きることに前向きになっていることを感じた夫妻は、

「! ああっ! もちろんだ! おまえは元気になるんだよ! いっぱい金を稼ぐ為にも、いっぱい元気にならないとな!」
「お仕事をいっぱいするためには体力が必要なのよ? いっぱいごはんを食べて、元気になりなさい!」

 と嬉しそうにジーノ君に声を掛けたあと、こっそりと私に「では、半月後に治療費を持ってお部屋にお邪魔します」と耳打ちしてくる。

 ……あれ? 何か勘違いさせる言い方しちゃったかな? 

 お代はいらないって言ったつもりだったんだけどな?
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