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ロマーノさんの正体
しおりを挟む突然❝王様の命令❞と言われ、みんなが呆然とする中、
「アリスさまを聖女とお呼びすることを国王陛下並びに王弟殿下のご両名はお認めにならない。
ルクレツィオ殿。爵位を剥奪されたくなければ、余計なことを口にして王弟殿下と陛下のご不興を買うような真似は慎まれるがよろしいでしょう。こちらの領民2名の口止めは領主であるあなたにお任せいたします」
ロマーノさんは滔々と話を続ける。
ルクレツィオさんに❝爵位剥奪❞というぶっとい釘を刺したかと思うと返事も待たずに冒険者ギルドマスター、商業ギルドマスター、衛兵部隊長さんに向き直り、
「その方らはアリスさまのことを良く存じおろう? であれば此度のことは」
「何も見ていない。俺たちはアリスの自由が脅かされることを許さない」
「何も見ていません。私たちはアリスさまの自由が脅かされることを許しません」
「何も見ていない。私たちはアリスさんの自由が脅かされることを許しはしない」
「……さすがはアリスさまの信頼を得ているお三方だ」
3人にも口止めをしようとしてくれたようだけど、それよりも早く3人が異口同音に❝何も見ていない❞宣言をするのを聞いて、口調を改めていた。
強権を発動する必要がないと判断すると同時に口調を丁寧なものに切り替えてくれたところに、私はロマーノさんに対して好感を持つ。自分の知り合いに対して居丈高な態度を取られるのを見るのは気分のいいものじゃないからね。
でも、あまりにも私にとって都合のいい話になっているので、改めて❝王都から来た❞ロマーノさんが何者なのかが気になっていると、それまで黙って話を聞いていたマリアンジェラ首席裁判官がおもむろに口を開いた。
「今回の騒動は、彼、ロマーノを通してモレーノさまと国王陛下に全て報告されていたの。
だから彼は陛下の代理で、私は越権を良しとしなかったモレーノさまからの依頼を受けてこの場に来たのよ。もちろん、モレーノさまのことがなかったとしても、この街の首席裁判官として動いていたけど」
最後の最後にポツリと「モレーノさまからの静かな圧力が怖かったわけじゃないわ」と呟いた彼女の顔色がひどく青かったことは気が付かないことにして、ロマーノさんについての詳しい話を聞いてみる。
すると、
・宰相さん家の末っ子で、モレーノお父さまとは少し年の離れた幼馴染み。
・宰相さん家は侯爵家だけど、ロマーノさんは末っ子なので家からは独立し現在は子爵であること。
・国王には代々直属の諜報部隊があり、ロマーノさんはそこに所属している。ただし表の役職は国王の近侍。子爵位なのに伯爵のルクレツィオさんに対等以上の態度だったのは王様の代理の仕事中だったからだそうだ。(これはこっそりと私だけが聞いた話)。
・休暇で冒険者をしている友人に会いにこの街に来ていたところで今回の騒動を知り、王さまに報告をしたところすぐさまモレーノお父さまから連絡が入り、私の周囲の情報収集と報告、陰からの護衛を要請されたとのこと(王さま直属の部隊を手足のように使うモレーノお父さまってば、ちゃっかりしてるよね!)。
などと、モレーノお父さまや宰相さんとの意外な関係が聞けてびっくりした。世間は狭いね? でも、
「本当はご自身が直接乗り込んで来たがっていたところ、こちらの領主や首席裁判官の立場を慮ってぐっと我慢をされたのです。
ですので、なにか不都合があれば何でも私におっしゃってください。ええ、何でも! どんな些細なことでも!」
と続けたロマーノさんは本気の目をしていて……。
モレーノお父さまがどんな要請の仕方をしたのかが気になって仕方がないよ……。
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