女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
643 / 754

お引越し準備 11

しおりを挟む





 皆さん。早急に大金が必要なのに、手元にお金がなかったらどうしますか?

 親元に借りに行く? お金持ちな親御さんならそれもあり、かな?

 お友達に借りに行く? う~ん……、担保を預けた上で確実に近日返済でき、利息を1割以上付けられるのならありかもだけど……。私的にはなし、かなぁ。 

 金融業者に借りに行く? うん、これは最終手段に置いておきたいかな。

 という訳で、❝借りる❞が嫌なら❝稼ぐ❞しかないんだけど。

 普通にどこかで雇ってもらって働いても、短期間で大金を稼ぐのはなかなか難しい。

 でも、この世界にはとっても便利な組織があるんだ!

 それが<商業ギルド>&<冒険者ギルド>!

 何か新しいレシピがあるなら<商業ギルド>! でも、これは審査がある上に入金までに時間がかかる。

 何か買い取ってもらえるものがあればいいんだけど、不要なものはこれまでの金策でほとんど売ってしまった。

 そんな時には<冒険者ギルド>! 魔物素材で不要なものはこれまでの金策でほとんど売ってしまったのは商業ギルドと同じなんだけど、冒険者ギルドここは魔物素材を売るだけじゃない。<依頼>を受けてお金を稼ぐことができるんだ!

 という訳でやってきました、冒険者ギルド!

 ディアーナへの挨拶よりもまずは依頼ボード! めぼしい依頼は早い者勝ちなので、まずはさっさと割の良い依頼の物色を!と思っていたんだけど…………。

 ❝バンッ!❞
「出たよ出たよ! 35,000! 他はないか他はないか? これはそんじょそこらの造血薬じゃあないんだぜ? あの!! 期待の新人アリスさんお手製の造血薬だ!」

 ❝バンッ!❞
「来たね! 50,000! 次は誰だ? あのアリスさんお手製……、おや、そこのあんちゃん、アリスさんを知らないと? そうかい最近この街に来たばかりかい。 アリスさんといえばこの街の冒険者の中ではちょっとした有名人だ! 黙って立ってりゃどっかの国のお姫さまプリンセス! にっこり笑えば、貢ぎ物を持った野郎どもが列をなして街を一周するってくらいの別嬪さんだが、怒らしたらあんちゃんの知ってるどこの家のかあちゃん達よりも恐ろしい!! が……、それでも最後は聖女さまのように優しいってことで、熱烈な信じ…ファン! 熱烈なファンを日々増やしている、今この街のギルドで最も話題の冒険者だよっ」

 ❝バンッ❞
「良いね良いね! 60,000メレ! ノリの良いあんちゃんは嫌いじゃないぜ? そんなあんちゃんに大サービスだ! この造血薬の詳しい情報をタダで教えてやるよ!
 この、アリスさんお手製の造血薬は見た目良し、効き目良し、何よりも味がいい! えっ? 造血薬は死ぬほど不味いのが当たり前? 不味くない物はインチキ品じゃあないかって? チッチッチッ! あんちゃん持ってる情報が古いねぇ。 アリスさんの造血薬は❝不味くない❞ってのはこの街の冒険者たちが自分の体で試してるし、何よりもあの!<商業ギルド>が認めてレシピを売りに出す準備中ってぇ代物だ!」

 ❝バンバンッ!❞
「おっと! 出たね85,000メレ! そうだ、この造血薬のレシピはまだ販売前。 つまりこの機を逃がしたら、次はいつ手に入れるチャンスがあることか……。おっと!これは!」

 ❝バンバンバンッ!!❞
「100,000! 100,000メレが出たよっ! さあ、次はないか? 次はないか!?」

 突然<冒険者ギルド>で始まったオークション……、と呼ぶより逆バナナの叩き売り!みたいなノリの販売会。

 今テーブルをバンバンと叩きながら<造血薬>を高値で売ろうとしているのは、自称<金はないが腕は良い。金欠中堅冒険者>さんだ。

 依頼ボードに向かっている途中で声を掛けられた。

 私の作った造血薬を買いたいのだけど、装備品を新調したばかりでお金がない。どうか、なんらかの労働と引き換えに造血薬を2~3本譲ってくれないか?と。

 造血薬だったら新たに作った物(複製で数もそれなり)があるので、ここで小金を稼ぐのも悪くない。

 ギルドに卸すよりも直接お客さまに買ってもらう方が高値で売れるから、私の代わりにポーション類を売ってくれるなら、アルバイト代として造血薬を3本譲る。ただし、私の代わりにギルド内での販売許可を取ること。許可が取れなかったらこの話はなかったことに、と約束をして、私がパーティーの勧誘を受けているのでは?と様子を見に来てくれた私の担当職員シルヴァーノさんにポーション類を一旦預かってもらってから彼とは別れたんだけど。

 いくつかの依頼を選び、ディアーナに受付処理をしてもらってから向かった酒場しょくどうの片隅で行われていた、逆バナナの叩き売り……じゃない!オークション。

 気が付くと、

「もうないか? もうここで打ち止めか!? ここで気合を見せて高額買い取りをして見せたら! アリスさんのキス…は無理だろが、飛び切りの笑顔が付いてくるかも…っと!」

 ❝バンッ❞
「おっさん、男を見せたねっ! 105,000! おっと!」

 ❝バンバンッ❞
「ねえさん、気合が入ってるね! 108,000!! これならアリスさんも感激して握手のひとつも」
「110,000だっ」
「113,000だぞ!」
「115,000よっ」

 ❝バンバンバンッ❞
「良いね良いね! お次は誰だ!?  120,000メレって言ってみようぜ!! !? うぎゃわっ…!?」

 どこまでも値上がりしていく造血薬の価格に一瞬思考回路がショートしかけたけど、ハクが彼に飛びかかり、頬に力強いに肉きゅうキックを浴びせるのを見て慌てて繋ぎ直した。

「そこまで! 造血薬がそんなバカみたいな高額になるわけがないでしょっ!? あと、勝手に私の笑顔や握手をノベルティ代わりにしないで!!」

 彼の発言を早く否定しておかないと、私に火の粉が掛かって来てしまう。

 高く買い取って貰えるのはありがたいんだけどね? 次からまっとうな商売をするのに障りが出るかもしれないから、おバカなサービスはしないんだ。 私が彼に文句を言い終わるのを待って、私の自慢の保護者たちからも彼に一言……。

 ❝ばむっ! ばむっ!❞
「いてっ、いててっ!」
「ぷぎゅ~~~っ!(アリスはそんなにやすくないぞっ)」

 ❝バシッ! バシッ!!❞
「あがっ!? あががっ!!」
「ぶにゃあああああああっ!(アリスに触れたければ国家予算を持ってくるのにゃっ!)」

 ……抗議の❝かわいい❞攻撃と共に苦情が入る。

 ……ハクとライムの怒っている様子を見て、心がほっこりしたのは内緒だよ?

 だって、ハクとライムなら「握手くらいで商品の値段が上がるなら、どんどんサービスしてやれ」って言うかと思ってたんだもん。

 ごめんね? でも、私を大切に思ってくれているのが改めて感じられてとっても嬉しいんだ! 今日のごはんはハクとライムの好きなものを好きなだけ作ってあげるから許してね?
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...