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お引越し準備 19
しおりを挟む必要金額に足りなければ極桃&極桃オークを売ってでも!と意気込みながら乗り込んだ、冒険者ギルドの解体部屋。
ニール達が狩ってくれた魔物をインベントリから出しながら、1体1体、おおよその買い取り価格を教えてもらう。肉類は捌いて品質を見てからでないと正確な値は出せないので、最低価格を見積もってもらったら、
(ふふん♪ 桃もお肉も僕たちが食べるのにゃ!)
なんとか、ニールとスレイが狩ってくれた魔物素材や採取してきた素材だけで目標金額分になってくれた。あとは痛み止めを納品すれば必要金額分は十分に賄える。
ディアーナが、今日預けた魔物素材を明日には換金する旨と最低買い取り価格を書面にしてくれているのを酒場で待っていると、
「「おかえりなさい、アリスさん!」」
クリスピーノ君とベニアミーナちゃんが揃って声を掛けてくれた。
「ただいま! 2人でお迎えに来てくれたの?」
「そうです、って言いたいけど」
「訓練に来ていてたまたまアリスさんを見かけただけなんです」
2人はギルドで受けられる戦闘訓練に参加していたそうで、随分とくたびれている。よく見ると動きがぎくしゃくしていてたまに顔をしかめたりしているので、服で見えない所には打ち身などがたくさんありそうだ。
見ているだけでも痛い気がするので、ヒールを掛けて治そうとすると、
(アリス、ダメにゃよ~)
ハクにやんわりと止められた。
一瞬だけ、人目のある場所で無料の治療をすることを止められたのかと思ったんだけど、自然治癒力が落ちることを心配しているのだと思い至ってハクに感謝した。小さな怪我など、何でも治せば良いっていうものじゃあなかったね。
でも、疲れ切っている2人をこのまま放って置くのも嫌だなぁ、と思っていると2人が、
「じゃあ、俺たちはこれで。何か依頼を探したいから」
依頼ボードの方へ向かおうとするので、引き留めてみた。
もうすぐ日も暮れるし、こんなに疲れている体でどんな依頼を受けるつもりなのかと聞くと、
「どこかの酒場で臨時の皿洗いとかあるといいなぁ」
狩りや採取の依頼ではなかったので安心する。
今日は1日訓練を受けていて1メレも稼いでいないので、何か仕事をしたいとのことだった。講師付きの訓練は有料なので、マイナス分を少しでも取り返したいと。だったら私の依頼を受けてもらおうかな。
でもその前に、おやつくらいは食べさせてあげても良いよね?
2人を座らせて飲み物を注文してクッキーを取り出すと、
「あれ? アリスちゃんだ!」
バルさんが嬉しそうな笑顔で駆け寄って来た。すると子供たちが立ち上がり、
「「今日はありがとうございました!」」
バルさんと、その後ろをゆっくりと歩いてくるバルさんのパーティーのメンバーに向かって頭を下げた。
今日の訓練の講師役は、バルさんたちのパーティーメンバーだったらしい。
戦闘訓練の講師役を務めるなんて、バルさんたちって、実はギルド内で結構高評価だったりするのかな? 初対面のイメージが悪過ぎた分、そんなことがなんとなく嬉しかった。
実際は「遠出ができないから受けた依頼だけど、思っていた以上に面白かった!」ってことらしいけどね。待たせてごめん!
でも、その分子供たちとのコミュニケーションが上手に取れていたようで、明日<誓い>を受けてもらいたいことを伝えると、
「ああ。場所はミネルヴァ邸だな? 通行人たちにも聞こえるくらいの大声で、派手にもだえ苦しんでやるからな!」
満面の笑みで、不穏な発言をする。
ご近所さんに心配をかけてどうするの?と不思議に思っていると、クリスピーノ君とベニアミーナちゃんが立ち上がり、
「お願いします! 力いっぱいチビたちを怖がらせてください!!」
バルさんたちに頭を下げた。
子供たちに痛い思いをさせた<沈黙の誓い>だけど、年少さんたちの中には❝喉元過ぎればなんとやら❞状態の子たちがちらほらいるらしく、あの時の痛みを思い出させたいと年長さんたちから相談を受けていたらしい。その為には、大の大人である自分たちが大袈裟に痛がってみせるのが効果的だろうと。
ミネルヴァさんの了承を得たうえで子供たちの方から提案し、バルさんたちが引き受けた話なら私が口を出す必要はないだろう。
軽く頷きだけ返して、クリスピーノ君には<誓い>をお願いしたいから明日ミネルヴァ家に集合して欲しいと護衛のみんなに伝言を、ベニアミーナちゃんには、裁判所へ行って<誓い>の為に裁判官さんの派遣をお願いすることを依頼した。
裁判官さんに来てもらう時間などの細かいことはベニアミーナちゃんに任せる。明日の都合がつかなかった時は、その旨を護衛組に伝言してもらうことも追加でお願いをして、私はギルドを後にした。
とりあえず、もう少し<痛み止め>を用意しておこうかな。お金はいくらあっても、すぐになくなるものだからね!
……不思議だよね~?
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