650 / 754
お引越し準備 18
しおりを挟む「はぁ~く、がぁんばれっ! すれい、がぁんばれっ! にぃる、がぁんばれっ!」
「まかせろにゃ!」
「はい! ライム兄さま!」
「はい! ライム兄上!」
「私は?」
「アリスはぼくとオウエンするの!」
「はぁ~い」
すでに通い慣れた気がする森の中に、ライムの元気いっぱいな応援の声が響いている。
いつもなら戦闘中は大人しく従魔部屋に避難してくれるライムなんだけど、今回は珍しく、
「ぼくもみんなといっしょにアリスのやくにたちたいの!」
なんてけなげなことを言いながらハウスに入るのを拒んだので、みんなと相談の結果、応援係&私の護衛役として働いて貰うことになった。
ライムはいつも調合や料理、解体の後始末などで何かとお手伝いをしてくれているのだから、戦闘まで頑張らなくてもいいって言ったんだけどね?
「だって、ぼく、ニールとスレイのおにいちゃんだもん!」
❝お兄ちゃん❞として、弟妹が戦闘している時にのんびりお昼寝をしていることに抵抗を感じるようになったらしい。
だから、まだ魔物が強くない森の外周付近だけは、ライムも応援係として戦闘に参加してもらうことになったんだ。ハクの提案で。もちろん、ライムと私の周りにはハクの防御結界が張られている。
でも、ライムを納得させるのは少し大変だったんだ。
ライムとしては弟妹と共に攻撃に加わりたかったみたいなんだけど、そんな危ないこと、みんなが許すわけがない。確かにライムの酸攻撃はなかなかのものだけど、防御力はやっぱりイマイチだからね。危険なことはさせたくない。
だけど、ライムに対してそんなことを正直に言える訳はないし……。
と悩んでいたら、
「ライム、今日は諦めるのにゃ。ここの魔物が相手だと、ライムはまだ自分の身を守れないのにゃ。ライムが怪我をすると、アリスが泣いちゃうのにゃ!!」
長兄としての貫禄を滲ませながら、ハクがあっさりと言ってしまった。
ハクの言葉に黙って俯いてしまったライムに、なんとかフォローの言葉をっ!と慌てたんだけど、ハクはやっぱりライムの優しいお兄ちゃんで、
「ライムは防御力は低いけど、応援力はとっても高いから、戦う僕たちを応援するのがライムの役割なのにゃ!」
「おうえんりょく、ってなに……? 」
「❝がんばれーっ!❞って相手を応援することで、相手のヤル気を大幅に上げる力のことにゃ! アリスに褒められたり、がんばれって言われたらライムは❝嬉しい! がんばろう!❞って思わないかにゃ?」
「おもう!」
「それと同じにゃ! 僕はライムに応援されたら嬉しくて、索敵能力が上がる気がするにゃ! ニールとスレイはどうかにゃ?」
「我はライム兄上に応援していただけたら、いつもよりも強い力で敵を蹴り倒せる気がいたしますぞ!」
「わたくしはライム兄さまに応援していただけたら、いつもよりも力強く敵を踏み倒せる気がいたしますわ!」
「そっか……。じゃあ、ぼくはオウエンをがんばるっ! えへへ、いっぱいいっぱいオウエンするね!」
弟妹を巻き込んで、ライムのヤル気をしっかりと別の方向に持っていってくれた。しょんぼりしていたライムが今はにこにこのご機嫌さんで笑っている。
うん、嬉しい! ライムが笑っていることも、兄弟みんなが仲良しなのもとっても嬉しい! でも、
「私もライムが応援してくれると、いつもよりも魔法の威力が上がる気がするんだ! 頑張るからね!」
「ああ、アリスもライムと一緒に応援係なのにゃ。 ライム、アリスの護衛も任せるのにゃ!」
「うん! まかせて♪」
私の戦力外通告はどういうことかな? ライムの護衛にはハクの方が適任だよね?
私は脚の多い虫が大嫌いだ。だから、虫系統の魔物も同じように大嫌いだ。
そのため、森の中心部のアラクネー(もちろん大嫌い!!)の生息地まで、虫系の魔物がいる場所は避けて行く予定だった。でも、
「そんなのは時間の無駄だから、ここから森の中心部まで真っ直ぐに向かうのにゃ。その間に見つける有益なものは全て採取、討伐しながら最短で進むのにゃ。だから、アリスは後方で応援係なのにゃ」
ハクによって私のプランは却下。 みんなを待たせているのだから早く帰る!って言われたら、おとなしく従うしかないからね。
本当は、戦闘に参加しないライムが引け目なんて感じなくていいように、素直に応援に力を入れられるように、私も一緒に応援係にしたんだってわかってるし。
ハクとスレイとニールが力強く敵を倒すのを応援しながらライムと私は採取に励み、倒された魔物を回収しながら中心部へとさくさく進行する。
中心部付近になるとどんどん魔物たちが強くなるので、きちんと状況の判断をしたライムは自分からハウスへと入ってくれた。ハウスの中にいる方が、戦闘中のみんなも安心だからね。
そして、ここからは私も戦闘に参加することが許可された。
よぉし、狩って狩って、狩り尽くしてやる! …………アラクネー以外!
「ウインドカッター・ダブル! あっ……、あんなところにもう一匹? えいっ!」
中心部に近づくにつれて増える極桃オークは大切な食糧&換金用素材! 不必要な傷などつけないように、狙いを定めて風魔法で首を飛ばす。
ここに着くまでに遭遇した魔物を相手に練習を重ねた結果、単発のウインドカッターは無詠唱でもきっちりと威力とコントロールの効いたものを発動できるようになっている。
みんなと一緒に遠慮なく狩り倒したら、あっという間に付近から極桃オークがいなくなってしまった。これまでに来た数回の狩りのせいで、個体数が減っていたのかな?
仕方がないから意識を桃狩りに切り替える。アラクネーは視界に入れない。
極桃の木とほぼセットになっているアラクネーの相手はスレイとニールに丸投げして、私はハクと一緒に薬草類&極桃の採取に勤しんでいたら、あっという間に付近の桃が無くなってしまう。
このまま放って置いてもいいんだけど……、他の冒険者が来た時に1本の木に桃が1つだけしか残っていないっていうのは気の毒なので、早く次の実がなるように<植物活性薬>を撒いておいた。
きちんとアラクネーの糸と本体も回収したし、採取できる実は取り尽くしたから(小さいのとかはきちんと残してるよ!)もうここですることは何もない。
さて、そろそろ街に戻ろうか!
150
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】
本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。
Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited.
© 魯恒凛 / RoKourin
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる