女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
649 / 754

お引越し準備 17

しおりを挟む





 通常、回復魔法の【ヒール】や<ポーション>は怪我や体力回復にしか効き目はなく、病気などには【リカバー】やそれ以上の魔法か、各種の病に対応した薬が必要になる。

 リカバーは高額だし、各種の病に対応した薬はポーション程の需要がないので、依頼を受けてからの調合になるのが<薬師>たちの通常らしい。薬は作り置きしてたら劣化するし、素材も置いていたら傷んじゃうからね。

 だから、必要な時に必要な薬がすぐに手に入るケースは多くない。素材の確保から調合の時間をいれると、やはりそれなりの時間がかかるようだ。

 でも、薬が必要になるような病の大半は何らかの痛みを患者に与えてしまうケースが多く、患者当人だけでなく、痛みを耐える患者を見守る家族や友人たちも辛い思いをすることになる。

 そんな時にすぐに手に入り効果が7日間も続く痛み止めがあったら、どれだけ患者や周囲の人たちの負担を減らせることか、と商業ギルドマスターネストレさんから切々と訴えられた結果、<痛み止め>を納品することが決まった。希望数は、商業ギルドでストックしておく100個(もっと多くても買い取り可能らしい)+薬師ギルドでストックしておく分100個+街の薬屋(ほとんどの店は薬師が経営)がストックしておく分(1軒あたり2~3個くらい)とのこと。

 レシピは登録(申請)するのだから、薬屋の分はそれぞれ店の薬師が作れば良いんじゃないのか?と言ったところ、薬の素材である<極桃>がネックになった。

 ほとんどの薬師は自分では森(スフェーン)まで採取に行けない。でも、冒険者ギルドに依頼するにしてもスフェーンの奥まで行ける上位ランクの冒険者への依頼は高額になるので、経費が掛かり過ぎる。

 ということで、私にお鉢が回ってきたんだ。

 一応ね?

 ❝<薬師>が経営する薬屋に、他の薬師が作った薬を置くのはおかしくないか?❞

 と言ってみたんだけど、

 ❝薬師によって調合の得意な薬と不得意な薬があるのは普通のこと。だから<薬師ギルド>から買い取った薬を置くのは珍しい事ではない。その為に相互扶助を行う組合ギルドがあるのだから❞

 と説明されて納得してしまった。

 だったら、薬師ギルドに卸す分だけで良いんじゃないか?と思ったんだけど、そこは儲け話しょうばいには手を抜かない商業ギルドマスターネストレさん。自分のギルドのストック分は譲れないとのことだった。

「材料が足りなくて必要数の調合が出来なかった時は、薬屋の分から削ります(薬屋の分は薬ギルドに卸す分から都合させるみたい)、それでも足りなければ薬師ギルドに卸す分を削りますので、無理はなさらないでください」

 と言い切る商業ギルドマスターネストレさんに、満面の笑みを隠すことなく拍手を送るハクとライムがいたことは……、そっと見ないフリをしておいた。











<痛み止め>の材料は<ダチュラ>と<薬草>と<浄化水(クリーン済の水)>と<極桃>。

 ダチュラと薬草と水は【複製】できるけど、極桃だけは今のところ複製できない。

 と言っても、極桃1つで50個の痛み止めが作れるのだから、依頼分(ざっと300個位)を作るのには支障はないと思っていたんだけど、

「僕たちが食べる分がなくなるのにゃ!」
「ぼくたちのおやつがへっちゃうの……?」

 可愛い従魔たちがとても悲しそうに私を見つめるので、思わず、

「よし、仕入れに行こう! 明日はみんなでスフェーンに行くよ!」

 拳を振り上げて宣言してしまった。

 ……私もおいしい桃が減るのは嫌だから、仕方がないよね?

 ……冒険者たちの時間を拘束しているのだから早くお引越の旅支度をしないといけないんだけど、これも金策だから仕方がないよね? 極桃をいくつか売れば<沈黙の誓い>の費用が稼げるし。

 ……とってもおいしい<極桃>はハクとライムの大好物だからギルドに売ることは禁止されているんだけど、いっぱい採って来たら、少しくらいは金策分に回せるハズ!

 と心の中で見えない誰かに言い訳を並べながら、とりあえず痛み止めの調合を終わらせた。

 ………極桃は複製できないんだけど、なぜか痛み止めは複製できるんだ。そのことに気が付かずに極桃を6個も使ってしまったなんてこと、ハクとライムには内緒だよ? 
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...