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出発前の下準備 5
しおりを挟む何事かと思った領主からのお使いさんの用件は、ただの手紙の配達だった。
領地(この街とは別の)でトラブルがあったらしく、急いで向かうことになった。私の旅立ちを見送れなくなってしまったが、道中はくれぐれも気を付けて欲しいといった内容の手紙で、聞けばすでにこの街を出ているそうだ。
急いでいたのに私のことを忘れずに気に掛けてくれたことに感謝して、急いで返事を認める。
今までお世話になったことへのお礼。これからも<ミネルヴァ基金>のことなどで何かと面倒を掛けることに対するお詫びとお願い。ご家族がいつまでも幸せであることを祈っていること。そして、また、いつかどこかで出会えたら、その時は総支配人さんのことやラリマーのみんなのことを聞かせて欲しいと。
お使いさんに待ってもらっているので手短な手紙になってしまったけど、感謝の思いは伝わるはず。
最後にハクの肉球スタンプとライムの触手(?)スタンプをぺったんと押して……、いたずら心が誘うままに、手紙を折り込んでいく。
今回はとっても簡単でかわいい封筒型。封筒を開くとそのままお手紙なんて、領主さまに送るにはふさわしくないかもしれないけど、お子さまたちは喜んでくれるはず!
と思って預けた折り紙手紙。受け取った瞬間に、まず、お使いさんが喜んでくれました♪
ふふっ! ❝かわいい❞は老若男女を問わずに正義だね!
ルクレツィオさんのお使いさんが帰るのに合わせて私も部屋を出ようとしたんだけど、
「ディアーナ。これをアリスに渡してくれ」
その行動はサブマスによって阻止されてしまった。
私がそのまま部屋を出て行くとディアーナが困るだろう。そう思って一瞬立ち止まったのが私の敗因かな?
私が受け取りを拒んでいることを知って不思議顔のディアーナに、サブマスが、
「<信認証>の受け取りを拒む冒険者がいるなんて、わたしは思ってもみなかったよ」
片頬を上げて皮肉気に(でも目は思いっきり面白そうに笑ってた!)言ったことで、状況が変わった。だって、
「え? ギルド発行の<信認証>!? 凄いわアリス! 信認証の発行には、現役ギルマス2名以上を含むギルマス経験者3名以上の推薦が必要なのよ!」
興奮したディアーナが、「おめでとう!」と信認証を片手に私に抱きついて来たから。
ディアーナを力任せに引き離すなんてできないし、興奮が冷めて落ち着くまで待とうと思ったんだけど、
「ディアーナは信認証を見るのは初めてだろう? 今後の参考に文面を見せてもらってはどうだ?」
「良いんですか!? アリス、見せてもらってもいいかしら!?」
サブマスの一言で、ディアーナの興奮は継続されてしまった。
しかも、閲覧許可を私に求めたことに対し、
「……いいんじゃないかな?」
勢いに押された私がうかつに返事をしたことで、所有権を認めたとサブマス&ギルマスに解釈されてしまったんだ……。否定をして部屋を出ようにも、体勢を変えたディアーナに片腕を組まれた状態なので逃げることもできず……。ニヤリと笑うサブマスを憎らしく感じてしまったのは、もう、仕方がないよね?
「凄いわ! 冒険者登録からまだそんなに日が経っていないのに推薦者が4人も! ジャスパーのギルマスに前ギルマス? それにオスカーさままで! オスカーさまはアリスの後見人だから当然と言えば当然なんだけど、やっぱり凄いわね!!」
信認証を見ながら嬉しそうにはしゃいでいるディアーナは可愛い。
「オスカーさまのサインはとっても流麗なのに、なぜか力強さを感じる……。不思議な文字ねぇ……」
でも言っていることは可愛くない。オスカーさんのサイン? 直筆なの!?
一体どうやってそんなものを用意したのかと驚いていると、
「オスカーさまの人柄と隠しきれない強さが表れている素晴らしい文字だろう!? その文字で、今回のわたしたちの迅速な判断をお褒めいただいたのだ、ふっふっふ♪」
サブマスが自慢気に自分たち宛の手紙を掲げて見せた。読ませてもらうと、確かに❝人を見る目が備わったな❞❝よくやった!❞❝今回の迅速な決断・行動は今後のおまえたちの助けになるだろう❞などと言った誉め言葉らしきものが書かれている。
一体いつの間にネフ村にいるオスカーさんと連絡を取っていたんだろう?
あと、オスカーさん? 後見人となってくれたことだけでも十分過ぎるほどなのに、今回は信認証の推薦人だなんて、ノリが良いと言うか何と言うか……。
大盤振る舞いもほどほどに! マルゴさんに叱られても知りませんよ!?
……自分で思っていてなんだけど、私の脳裏には、マルゴさんの満面の笑みしか浮かんでこないのはどうしてかなぁ……?
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