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ラリマー出発の朝 2
しおりを挟む「ねえ、アルフォンソ? 私たちとってもラッキーよね?」
「うん? 実は私も今そう思っていたところなんだが、オデッタはどうしてそう思ったんだい?」
「だって、住み慣れた街を出るのに資金は最初に預けられたお金だけ。自分たちのお金は一切使えなくて、仕入れとかを考えたら護衛に回すお金は相場以下になるから、今回はランクの低い冒険者が2~3人も来てくれたらいい方だねって話していたのに、実際に来てくれたのはたった一人の女性冒険者と可愛らしい従魔たち。こんな状態なら本当はもっと悲愴になってもおかしくないのに実際は……」
「ああ。旅に必要な私たちの食料や馬の餌を積んで残る荷台の容量を考えたら、仕入れの品は本当に悩みどころだったんだけどな。なのに、護衛の冒険者が有料とはいえ旅の間の食事を賄ってくれる上に荷台1台分の荷物まで預かってくれるなんて話になるとは思ってもみなかったし、依頼を受けてくれたたった一人の冒険者は、新人で女性の身ながら冒険者ギルドが大注目している実力のある冒険者で、依頼主の私たちよりも豪華な馬車に乗っている……」
「私が盗賊なら、絶対にアリスの馬車を狙うわね! 絶対に不利だと思うのに、その馬車を引くのはあの!スレイプニルが2頭! スレイプニルと一緒に行動できる機会なんて、滅多にないわよね!?」
「ああ。アリスさんのような護衛と雄々しくも美しいスレイプニル、可愛い猫ちゃんにお利口なスライムまで一緒なんだ。話題性は抜群だから、護衛をしてもらっている間に寄る集落では、お客さまが向こうから寄ってくるだろう。
私たちはとてつもなくラッキーだと思うよ。幸先が良いとはまさにこの事だね」
人々が生活を始めて少しずつ活気が出始めた街の中を、2台の馬車でゆっくりと移動する。
入った覚えのある店や、気になっていたけど、とうとう入りそびれてしまった店などをのんびりと眺めながら膝の上のハクとライムをもふり倒していると、後ろから依頼人夫妻の楽し気な笑い声が聞こえてきた。
住み慣れた街を出る時にあんなに明るい声で笑える2人は、心が強くとても前向きな人たちだと思う。これからしばらく一緒に行動する2人の性質が好ましいもので、私はそっと安堵のため息と吐いた。
出発が少し遅くなったせいか、門の前にはすでに何組かの人が並んでいた。
街に入った時は身軽だったが今回は私たちは馬車、依頼人夫妻は馬車に荷を満載に積んでいるので門兵から受けるチェックにも時間がかかるだろうと覚悟しながら最後尾に並ぼうとすると、
「「「「「アリス!」」」」」
「「「アルフォンソ! オデッタ!」」」
私たちに呼びかける複数の声が聞こえた。私の名を呼ぶ声には聞き覚えがある。
声のした方に視線を向けると、ディアーナ、総支配人さんに商業ギルドマスター、冒険者ギルドマスター、マルゴさんの弟子に衛兵詰所の隊長さんが笑顔で手を振ってくれていた。
依頼人夫妻の方もお友達らしき同年代の人たちが見送りに来てくれたようだ。
(スレイ、ニール。少し離れるけど、列に並んでいてくれる?)
(お任せくだされ!)
(はい、主さま!)
依頼人夫妻の方にお友達(多分)が駆け寄るのを見て、私は2頭にあとを任せて急ぎ足で列を離れた。
私が行かなくてもディアーナたちも依頼人夫妻のお友達のようにこちらに来てくれるだろうけど、さすがに大人数が一緒にいると他の通行人さん達に迷惑だ。
ディアーナたちもそう思っていたのか、私が駆け寄るのを笑顔のままで待ってくれていた。
「オズヴァルドにライモンドさん。それに隊長さんまで! 朝からわざわざ会いに来てくれてありがとう!
ディアーナと総支配人さんとネストレさんは昨日も来てくれたのに、今日も来てくれたのね。ありがとう!」
わざわざのお見送りに満面の笑顔でお礼を言った。
お礼を言った後にまさかの❝ご指導❞タイムが始まるなんて、想像もしていなかったなぁ………。
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