女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

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ビジューとおしゃべり 2

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 目を閉じて感謝の祈りを捧げていると、不意に、閉じた瞼の裏が白く染まる。そして体に感じる空気がじんわりと優しくて暖かなものに変わった気がした。

「アリス! 会いたかったわ!!」

 そして聞こえる鈴を転がすような澄んだ声。目を開くと満面の笑顔で両腕を広げる絶世の美女。

 まだ寝ていないのに、夢の中じゃないのに、目の前にビジューがいた。

「ビジュー!」

 条件反射で飛び込んだビジューの腕の中はとても柔らかく、この中にいるだけで体の中に潜んでいた疲れが全て溶けていくような気がする。

 いつ見ても麗しいビジューの❝美❞に癒されていると、

「ハクが迷惑をかけてごめんなさい」

 突然謝られてしまってびっくりした。

 何のことかと視線で問いかけると、

「ハクはまだ生まれたばかりだから、情緒面が育っていなくて……」

 ビジューが頬に手を添えて、困ったように小首を傾げながら説明してくれる。

 私が異世界ビジューで楽しく生きていくために、サポート役として急遽生み出された神獣ハク。❝知識❞はこの世界の先輩である聖獣に詰め込んでもらったし、ビジューの贈ったスキル【世界の理】があるので不自由はない。というより、知識だけならこの世界でトップクラス(あんなに小さくて可愛いのに!)らしい。

 ただ、女神ビジューや聖獣にもどうしようもなかったのが、ハクの性格…というか、精神面の成長だった。

 時間をかけて自身の体験などを基にして精神こころが成長する前に私の元へ来てしまった。だから、

 アリスは蜘蛛が苦手→蜘蛛の魔物が苦手だと冒険者としての欠点となる→克服させなくては!

 となって、強引に討伐くんれんをさせられたようだ。無理をさせすぎたらトラウマになるかも?とは考えられなかったらしい。

 ……ハクが強引なのは、見た目通りの子猫(虎だけど!)だから。

 ハクがたまにわがままなのは、まだまだおこちゃまだから!

 今までもそう思ってきたけど、創ったうんだ本人から改めて説明されると、もう、納得するしかないよね?

 今後も蜘蛛や足がいっぱいの魔物の討伐からは逃げられないのかと諦め半分でため息を吐くと、

「だから、アリスにあの仔ハクを育てて欲しいの」

 ビジューが私の両手を握りしめながら、懇願するように言った。

 この世界に馴染めるよう、ひょんなことで死んでしまわないようにとハクが私を教育しようとするように、まだ生まれたばかりだけど知識だけはいっぱい詰め込んで大人のつもりでいるハクを私に教育させたいらしい。

 その為に必要なプロセスはあるのかと聞いてみたら、いままで通りでいいと言う。

 なら、なぜ改めて、わざわざそれを私に言うのか? それは、

「たまに強引だけど…、たまにわがままだけど……、嫌わないであげてね?」

 これが言いたかったから。

 苦手な蜘蛛狩りを強引にやらされて精神に大きなダメージを受けていた私を見てしまったビジューは、私がハクを嫌いにならないかと不安になってしまったらしい。これが今回のイレギュラーな招待の理由。

 だから私は笑って受け入れる。だって、今までと何も変わらない。

 時々ハクに振り回されてたま~に大きなダメージを受けるけど、しっかり教育という名の仕返しをしたりする。

 もちろん疲れてしまうこともあるけど、可愛いハクはいてくれるだけで心の癒しになるし頼りになる。なによりも、ハクからの信愛の気持ちは常に感じているから、多少のことでは嫌いになれない。

 たま~に、小憎らしく感じることはあるけどね? それも含めてぜ~んぶがハクの魅力だと思うから仕方がないよね?

 そう言って笑いかけると、ビジューも安心したように笑ってくれる。

 ビジューは私の目を通してこの世界を見て楽しむだけのハズだったのね? 結構な気苦労も背負ってしまっているらしい。

 どことなく人間くさい女神に親しみを込めて、ティータイムを提案してみる。

 しばらくの間なら、依頼人夫妻のことは賢くて強い従魔たちに任せても大丈夫だろう。

 インベントリから取り出したアイスに、濃くて熱い紅茶を掛けてビジューの前へ。

「これがアフォガードね!?」

 嬉しそうなビジューに微笑みで返して、

「ちょっと聞いてよ~。この間ハクとライムがね? ……それを見ていたニールとスレイがね!」

 旅の間の楽しかったエピソードなんかを披露する。ビジューもその場面を見ていたらしく、

「アレは可愛かったわね~!」

 なんて言ってくれるから、話が尽きることはない。

 ちょっとだけ愚痴なんかも交えた女子会は、大量のお茶とおやつを消費しながら、の~んびりと長~く続いた。
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