女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ

文字の大きさ
702 / 754

護衛旅 野営 5

しおりを挟む
「日差しも柔らかく、今日は良い天気であるな」
「ええ。風が気持ちいいですわね!」

 首を上げ、尻尾を振り振りしながら軽やかな足取りのニールとスレイ。

「ニールとスレイ、うれしそうだね~」
「のんびりと羽を伸ばしているのにゃ~」

 そんな2頭を見ながら嬉しそうにしているライムとハク。

 散歩気分でご機嫌なみんなに釣られて私も楽しい気分になっているけど、後ろの馬車の様子を見に行くと、

「よく付いて来ているのにゃ! 偉いのにゃ」
「がんばってるね~」

 必死の形相で走っているお馬さん……。8本足の魔物スレイプニルに普通の馬がついて来るのは大変だよね! 応援の気持ちを込めて依頼人夫妻の馬に【ヒール】を飛ばすと、必死の形相が少し和らぎ、代わりに気合のこもった表情になる。

 体力を回復できた馬の様子を見て嬉しそうなハクとライムに微笑みかけながら、ついでに盗賊2人に対してもヒールを飛ばす。

 この2人、昨日はロープでつないで自力で走らせていたんだけど、今日は帆布で簀巻き状態にして引きずっているんだ。ご機嫌で走るニールとスレイについてくるのは無理だと判断したハクの提案で。

 走り疲れた男たちが生身で引きずられるよりは、最初から簀巻きにしておいた方が男たちの安全にもつながると言われて私も賛成したんだけど、引きずられたまま何の反応もしなくなるとさすがに心配になるからね。ヒールで回復した2人が悲鳴をあげるのを聞いて、安心して御者台に戻った。

 ……気を失ったままにしている方が親切だったかな? でも死んじゃったら生き返らせられないからね。生存確認の為に悲鳴は必要なんだから、仕方がないよね。 











 その後は魔物にも盗賊にも遭うことなく、至って平和な道中だった。

 トラブル、と言うかちょっとだけ困ったことは、依頼人夫妻のお馬さんに【ヒール】を掛けたことを、うちのニールとスレイが拗ねてしまったことくらいかな? 

「我らを差し置き主さまから魔力をいただくとは、なんとも憎きヤツよ!」

 なんて苦々し気に言うのを聞いて思わず笑っちゃったよ。元気いっぱいのニールとスレイには【ヒール】なんて必要ないでしょ?











 このまま真っ直ぐいけば明日には集落に着けるけど、左手に見えている森にも興味を引かれる……。だって、【マップ】にハジメマシテの反応があるんだもん!

 真っ直ぐ目的地に行くか、寄り道しちゃうか……。私たちだけの旅なら寄り道一択なんだけど、依頼人がいる旅だしね……。

 と、迷った時には即相談! そしてこんな時に活躍するのが<白猫(虎!)ハクの郵便屋さん>♪
 まずはお手紙を書きます。書けたら手紙を小さく折り畳み、細長く柔らかい布に包みます。それを手紙が後ろに来るようにハクの首に優しく結んだら……、頰っ被りさせたいくらいに可愛いどろぼう…郵便屋さん!のハクの出来上がりだ。

 揺れる馬車の上を難なく走り、後ろの依頼人夫妻の馬車の御者台へ軽やかにジャンプ! 驚く依頼人夫妻に首の後ろのお手紙を取って貰ったら配達終了。

 でも、デキるハクはそれだけでは終わらない。可愛らしいにくきゅうで❝集落❞と❝森❞の文字を指し示し、夫妻が選ばなかった方の文字を細い爪でずたずたに。今度はそれを口にくわえて戻って来てくれるという、優秀な郵便屋さんなのです♪

 ちなみに、どうしてお手紙を口にくわえて戻って来たのかと聞くと、

「あんなに揺れる馬車の中で首に布を結ばせたら、首を絞められるのにゃ!」

 とのこと。揺れるのはこっちの馬車も同じなんだけどね? 私が首にお手紙入りの布を結ぶことを許してくれたことはハクからの信頼の証だったんだと気が付いて、嬉しくて頬が緩むのを止められなかったのは、仕方がないよね!











 夫妻が選んだのは❝森❞。

 危険がなく商売もできる集落の方を選ぶかと思っていたんだけど、2人とも私からの手紙を読んで❝また商材が豊富になるね❞と笑い合っていたそうだ。期待に応えられるといいんだけどね!

【マップ】にドクダミの群生地らしき場所があった。

 チラリとハクを見て思い返す。

 ……臭かったんだよねぇ、ドクダミ。私は耐えられたけど、可愛いお手手で鼻を押さえながら涙目になってたハクが可哀想だったな。

<解毒薬>を作るのに必要だから、あれ以来ドクダミは採取せずに【複製】で増やしていたんだけど……。お茶にして飲むと病気の予防にもなるドクダミ。せっかく近くに群生地があるのにスルーするのはもったいないし……。

 ということで!

 夫妻に採取を依頼する。依頼料は中鍋の縁までふんわりといっぱいに摘んで鍋1個1,000メレ。とりあえず5個預ける。私とハクは別の場所へ移動するけど、この辺りに結界を張った上でニールとスレイの護衛付き。

 群生地に案内してそう説明をすると、夫妻は鍋とドクダミに何度も視線をやって、

「破格、すぎるでしょ……?」

 と困惑顔。

 でも、ただでさえ臭いドクダミは採取の為に千切るともっともっと臭くなり、その臭さが手に移ってしまうこと(【クリーン】で取れるよ! もちろん無料)。それを臭いに負けずに1枚1枚丁寧に採取して欲しいことを伝えると、2人は頬を引きつらせながらも力強く請け負ってくれた。

 ニールとスレイに2人の護衛をお願いし、ライムに、

(少し離れてから従魔部屋ハウスに入ろうね!)

 と伝えると、

(ぼくもここにいる~!)

 ハウスを拒否。森は危険だからどうしようかと迷っていると、

(今日はニールとスレイも一緒だから、ここで留守番させても大丈夫なのにゃ!)
(ライム兄上は我がきっちりとお守り致します!)
(ライムにいさまにはわたくしの背に乗っていていただきますからご安心くださいまし)

 みんながライムを後押しする。

 1匹(ひとり)寂しくハウスでお留守番をするより、みんなと一緒の方がライムも楽しいだろうし、

(じゃあ、ライムにも依頼人夫妻の護衛をお願いしようかな! ニール、スレイ。よろしくね!)

(ぼく、さいしゅもできる~!)

 ライムにはここでドクダミの採取をお願いすることにした。







 久しぶりのハクと2人だけの行動はこの世界に来たばかりの頃を思い出させ、なんとなく懐かしい気になった。

 もちろん、来たばかりの頃と違って色々とできるようになってるけどね!

 さぁて! どんなハジメマシテが待っているのかな? 

 狩り&採取、私たちもがんばるぞーっ!
しおりを挟む
感想 1,118

あなたにおすすめの小説

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...