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護衛旅 集落 24 出発準備 1
しおりを挟む依頼品は、<キラービーの蜂蜜>を一瓶分(1ℓ程)。
採取に行ったフリで手持ちの蜂蜜を【複製】してもいいんだけど……。
ニールとスレイが久しぶりに全力で走りたいと言うのでお散歩がてらに行ってきました!
で、
「キッ、キラービーの蜂蜜、の、納品ですかっ!? すぐにギルドマスターを呼んできます!!」
もちろん、きっちりと採取をして戻って来ましたよ。予定通り夜までに。
いや~、ニールとスレイの本気の走りは本気で速かった! ラリマーで作ってもらった鞍などの❝乗馬セット❞がなかったら振り落とされていたと思うくらいに素晴らしく速かったんだ。
お陰で現在の時刻は16時27分!
約束の❝夜❞には余裕の時間。そのせいで、
「……手持ちの蜂蜜を売ってくれる気になったのか?」
なんて失礼なことを言われてしまったけど、気にしない。
それだけ<スレイプニル>の能力が素晴らしいってことの証明のようなものだしね!
「本体付きの毒針とか血抜きの済んでいないオウルベアとかもあるけど、どうする? いるなら売るけど?」
時間を惜しんだからなんの処理もしていない魔物素材があると言うだけで、ギルドマスターはちゃんと理解してくれて、バツが悪そうに謝ってくれたからそれでOK。前もって準備していたのか、ポケットから依頼料が入っているらしい革袋を取り出してから私に手を差し出した。
ギルドマスターの左手に革袋。私に向かって出されたのは空っぽの右の手のひら。
先に納品。品質確認もしないといけないから当然だよね。
ギルドマスターから預かっていた依頼人の物らしい壺(蜂蜜入り)を渡すと、
「間違いなくキラービーの蜂蜜だ。だが、8分目くらいで良いと言わなかったか?」
その場で確認(どうやら鑑定スキルを持っているみたいだね)して、依頼よりも多く入っている蜂蜜に首を傾げた。
まあ、ね。高級品らしい<キラービーの蜂蜜>だから、通常なら依頼で指定されている量だけを納品し、余った分は買い取りに回すのが正しい冒険者の姿だろうね。でも、
「貴族の依頼を受けてから結構時間がかかっているんでしょ? サービスしておいたら?」
「……すまないな。助かるよ」
貴族の御曹司、っていうか、その付き人に難癖付けられないように、自衛の意味を込めて多めの納品の方が良いと思ったんだよね。今回採取した量が前回の量よりも多かったから、その分を少しだけおまけしておいたんだ。
ギルドマスターもその辺りの想像はしていたようで、ほっとしたように息を吐き出すと、素直にお礼を言って依頼料の入った革袋を渡してくれた。
中には中銀貨が5枚と小銀貨が5枚。えっと、10%がギルドマスターからの褒賞金だから引いて計算すると、1ℓ弱の蜂蜜が50万メレ!?
もちろん、全てが蜂蜜の代金ではないことは理解している。採取に掛かる時間やその間の食事やポーション代などの経費も含んでの依頼料だ。
でも、キラービーの巣にはもっとたくさんの蜜があったし、ローヤルゼリーや蜜蝋、キラービーそのものの討伐報酬や素材が手に入ることを考えると、この依頼は冒険者たちにとっても❝おいしい依頼❞であることが理解できた。
だから、
「ウソだろ……? 俺たちがあんなに苦労した依頼が、ソロのCランクにこんなにあっさりと達成されるなんて」
「アタシたちのパーティーだと1人10万メレ。行き帰りの時間を含めて最低3日掛けて10万メレなのに、あの子は、1日掛けずに50万メレ……!?」
「チクショウ! なんだよ、チクショウ……。俺らはまだまだ弱いってことかよ……」
ギルドにいた冒険者たちの愕然とした様子を見ると、どうにも居心地が悪くて。
魔物素材を買い取りに回さず、さっさと冒険者ギルドから出て行くことにした。
ガックリと床に座り込んでいる冒険者たちの様子を見ても、顔色一つ変えないギルドマスターの心臓は何でできているのかな?
裁判所では用件を言う間もなく名乗っただけで担当職員さんにつないでもらえた。担当さんはにこやかな表情なんだけど、隣にいる職員さんは緊張のせいか口元が引き攣っている。
……私の依頼人の不利益を回避するためとはいえ、簡単にモレーノお父さまのお手紙の力を借りたことをほんの少しだけ反省した。ほんの少しだけ、だけど。
盗賊の❝カシラ❞と❝アニキ❞は犯罪奴隷として売られるので私の手元には2人の売却金が20万メレ。そして見込み通り、やっぱりついてた懸賞金! カシラに50万メレとアニキに30万メレで合わせて80万メレ。
合計100万メレの臨時収入。 この件に関しては、依頼人夫妻が事前に分け前を辞退していたので、全てが私の収入になる。
ついでに言うと、彼らがアイテムボックスに持っていた物も私のものになるんだけど、今回は辞退。裁判所の収益にしてもらう。
今回はモレーノお父さまの名前をお借りしちゃったからね。裁判所にも利益を置いて行かないと!
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