護堂先生と神様のごはん 幽霊屋台は薄暮を彷徨う

栗槙ひので

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第2章 幽霊屋台を追いかけて

2.招かれざる乗客

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 そんな事を考えていると、宵山の言葉を受けて、後部座席から確信に満ちた声がした。

『うむ。美味いラーメン屋と聞いては、食べに行かない訳にはいかんからのう』

 私は黙ってそれを聞き流す。宵山も前方を向いたまま、何の反応も無く運転を続けていた。

 宵山は声の主を無視した訳ではない。後部座席の人物の声が聞こえるのは、この場では私だけなのだ。

 私がここで返事をしてしまうと、彼の姿も見えない宵山が混乱する事は必至だった。よって私は華麗に無視を決め込んだのである。

 面妖な出来事に巻き込まれ易くなったのも、思えば彼と暮らし始めてからだった。

(幽霊屋台並みに信じられない事象が、私にとっては既に日常だからな……)

 つまり、声の主はうちの神様なのだった。

 簡単に説明すると、彼はうちに棲みついている、食いしん坊の神様だ。

 自分でも信じられないのであるが、私は現在このふわふわ白髪の着物男、自称有難い神様と一緒に暮らしている。

 詳細は割愛するが、亡くなった叔父の古い家に引っ越してきたら、彼が既に棲みついていたのだ。
 しかも、守護霊的に温かく見守ってくれるとかいう感じではなく、肉眼ではっきり見えるし、飯まで食う。

 食いしん坊と言っても一応神様なので、提供した食べ物は、彼が食べてもそれ自体は減らずに、食べ物の幽霊が摘み出される。
 まあ食費もかからないし、ご利益は無さそうだが害もないのだ。

 私は中学校教師をしながら、このマイペースな神様や妖怪達と、一風変わった田舎暮らしをしつつ、作家を目指して執筆活動を続けていた。

 奇妙な生活スタイルではあるが、私は毎日それなりに楽しく暮らしている。
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