護堂先生と神様のごはん 護堂教授の霊界食堂

栗槙ひので

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第1章 食いしん坊の幽霊

8.執務室

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 先程の大広間とは打って変わって、垂幕の裏の通路は狭いものだった。蝋燭の灯りに照らされた、薄暗い廊下を歩いて行くと、突き当たりに扉が見える。

『従業員用の通路かの』

 だから、なんでそういうところに詳しいんだこの神様は。

『私の執務室だ。入りたまえ』

 蓮雫は扉を開けて、我々を招き入れた。中は廊下と変わらず薄暗いが、応接セットのようなソファとテーブル、奥には大きなデスクがあり、その上には沢山の書物や巻物が積まれていた。

 壁紙やカーペット、家具などはいずれも高級な中華料理屋のようなデザインをしている。
 派手ではないが、木製のテーブルや椅子には花や鳥が彫り込まれ、気品を感じる作りだ。

『挨拶が遅れたが、私は蓮雫。第一次裁判の管理運営を任されている管理官だ』

『先日死んだ人間の護堂友和だ。貴方が最初の裁判を?』

 蓮雫はふふと涼しげに笑うと、首を横に振った。

『お前は死んだばかりというのに、さっぱりとしたものだな。魂を裁くのは王がなさる。私は王の裁きに支障が出ないよう管理するのが務めだ』

 そう言いながら、蓮雫は我々にソファを勧めた。

『だからこそ、私は調べねばならないのだ。何故お前の名前が死亡予定者一覧に登録されていないのか、旅の供に神を連れているのか』

 ソファに腰掛けながら、蓮雫は静かにこちらを見据える。
 俺も神様も並んでソファに座ったが、一体どうしたものか。何で名前が載っていないのかなんて、俺にはさっぱり分からない。

『死神にも同じ事を言われたが、俺は死んだ時の記憶がないんだ。だから、何で今死んじまったのかは分からない』

 俺は正直に答えた。そして、神様と出会ってからこれまでの出来事、遺跡調査を手伝って貰っていた事も含めて全て偽りなく伝えた。

『この神様とは、そうやって一緒に暮らしてきたが、何の神様なのかもはっきり分かっていない。今、一緒にいるのは……』

『霊界なんて行った事ないから、面白そうじゃし、ついてきたんじゃ』

 神様は呑気に答える。到底信じてもらえそうにない話だったが、蓮雫は一つ頷くと言った。

『成る程。お前とその神の関係については、私の立場から言える事はない。また、お前が嘘をついていない事も、悪人の魂でない事も見れば分かる。私もここで数百年亡者を見てきているからね。だからこの部屋に呼んだ訳だが……』

 蓮雫は一つ息を吐くと続けた。

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