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第二話 これが男の人の匂いなんだね
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剛志はあぐらをかき、両手を後ろの畳について天井を仰いでいた。
今、小春を正視すると、心が乱れそうに思ったから、あえて視線を他に向けた。
その股間には、ベージュのニットに身を包んだ小春がうずくまっている。
彼女のロングスカートの裾が、剛志の素足に触れ、衣擦れの音が静かな室内に、清らかに響いた。
「……すごいよね。こんなに大きくなるんだ」
小春の声は、博物館で珍しい展示物を見つけた子供のような、無邪気さだった。
剛志は、安っぽいグレーのスウェットとボクサーパンツを膝まで引き下げられ、冷気に晒された下半身が熱を帯びていくのを感じていた。
「剛志、もしかして、やっぱり私なんかでも、女って見られるんだね」
「……」
彼は無言だった。
自身の剛直は、主人の意思とは裏腹に、愛しい女性の視線に晒されただけで、脈打つように硬度を増して反り立っている。
先端からは、すでに透明な先走りの蜜が滲み出し、蛍光灯の光を弾いて濡れ光っていた。
「見ないでいいから……早く、済ませてくれ」
剛志は片手で顔を覆い、呻くように言った。
視覚を遮断しなければ、目の前の光景に耐えられそうになかった。
だが、小春は剛志の気持ちなど意に介さない。
彼女は自身のスマートフォンを畳に置き、液晶画面のブルーライトに照らされたマニュアル記事と、目の前の剛志のそれを真剣な眼差しで交互に見比べている。
「だって、ちゃんと見ないと覚えられないよ。……えっと、まずは優しく全体を舐めて、匂いや味に慣れる……そうか」
小春の独り言が聞こえる。
それは完全に洋介のための予習であって、剛志への愛撫などではない。
熱い吐息が剛志の敏感な部分にかかった。
ビクリ、と剛志の太ももの筋肉が収縮する。
顔を覆っていた手の隙間から恐る恐る下を見ると、小春が長い髪を耳にかけ、剛志のモノに顔を寄せているところだった。
長い睫毛が震え、潤んだ瞳が真近で観察している。
「ん……」
小さな鼻先が、先端の縁をこつんと突いた。
直後、小春の桜色の舌先が繰り出された。
うっ、と声が出そうになるのを、剛志は奥歯を噛み締めて堪えた。
小春の舌は熱くて、柔らかかった。
実のところ、彼が風俗に行ったのは一度だけで、しかもゴムを付けた状態で咥えられた。
だから、これは彼にとって初めて女性の、しかも小春の生の器官が自分に触れる感覚であった。
最初は探るように、先端を舐めている小春だったが、次いでその裏側のくびれた部分を舌の腹を使って這い上がっていく。
「……っ、はぁ、う……」
剛志の口から、重い呼気が漏れた。
ざらりとした舌の感触が、直接的に何度も伝わってくる。
ずっと片思いをしていた彼女が、自分の股間に顔を埋め、懸命に舌を使っているという事実で、剛志の脳髄は壊れてしまいそうだった。
「……なんか変な味。あ、唾をたっぷり出さないと、生の味が強くなるって書いてる……」
小春は口先を使いながら、スマートフォンの画面を見ている。
「……当たり前、だろ。汚ねぇから、もうやめろ」
しかし、小春は聞いていない。
「これが男の人の匂いなんだね。……洋介くんも、こういう味がするのかな」
彼女は、剛志の秘密の味を学びながら、脳内では別の男を想い描いている。
剛志のそれは、洋介の代用品でしかない。
その絶望的な事実が、皮肉なことに剛志のサディスティックな征服欲と、マゾヒスティックな献身欲を同時に刺激していた。
彼の彼女は、洋介に対してこの上ない裏切りをしているにもかかわらず、彼女は剛志に対しても洋介にも裏切りと思ってなどいない。
それどころかこうしなければ、洋介の恋人でいられなくなると危機感に襲われている。
小春はスマホの画面をスクロールさせると、意を決したように大きく息を吸い込んだ。
「次は……口に含んで、真空状態にする……」
彼女の小さな唇が、大きく開かれる。
濡れた粘膜の赤色が、剛志の視界に焼き付いた。
彼女は剛志の膝に手を置いて体を支えると、ゆっくりと頭を沈めた。
湿った音と共に、剛志の先端が熱い口腔内へと侵入する。
「ん、……ん、……っ」
小春の喉が鳴り、鼻にかかった苦しげな呼吸音が部屋に響く。
それはとても狭く、きつかった。
彼女の口内は、剛志のサイズを受け入れきれず、舌が逃げ場を失って剛志の裏筋に絡みついてくる。
口内のひだや、上顎のざらつき、そして熱せられた唾液の感触が、剛志の敏感な皮膚を容赦なく擦り上げた。
「ぁ、ぐ、……小春、歯が……」
剛志がわずかに腰を引く。
慣れない彼女の前歯が、硬くなったその部分に当たり、鈍い痛みが走ったからだ。
小春はパッと口を離し、電灯に光る唾液の糸を引かせながら、不安げに剛志を見上げた。
「ごめん! 痛かった? ねえ……どうすればいいの? ちゃんと教えて、剛志」
その目は怯えていた。
ここで剛志が教えなければ、本番で洋介を痛がらせてしまうかもしれない。
その恐怖が彼女を突き動かしている。
剛志は自嘲気味に笑うしかなかった。
自分の恋人が、他の男に抱かれるために、自分に指導を求めている。
剛志は震える手で小春の後頭部に触れ、優しく引き寄せた。
「……唇で、歯を隠すようにするんだ。……そう、包み込むみたいに」
「こう? ……ん……」
その口から生々しい音が鳴る。
「あぁ、そうだ……もっと、舌を……」
剛志のアドバイスに従い、小春は再び剛直を咥え込んだ。
今度は唇を内側に巻き込み、吸盤のように張り付かせる。
先ほどとは比べ物にならない、卑猥で濃厚な水音が響き始めた。
今、小春を正視すると、心が乱れそうに思ったから、あえて視線を他に向けた。
その股間には、ベージュのニットに身を包んだ小春がうずくまっている。
彼女のロングスカートの裾が、剛志の素足に触れ、衣擦れの音が静かな室内に、清らかに響いた。
「……すごいよね。こんなに大きくなるんだ」
小春の声は、博物館で珍しい展示物を見つけた子供のような、無邪気さだった。
剛志は、安っぽいグレーのスウェットとボクサーパンツを膝まで引き下げられ、冷気に晒された下半身が熱を帯びていくのを感じていた。
「剛志、もしかして、やっぱり私なんかでも、女って見られるんだね」
「……」
彼は無言だった。
自身の剛直は、主人の意思とは裏腹に、愛しい女性の視線に晒されただけで、脈打つように硬度を増して反り立っている。
先端からは、すでに透明な先走りの蜜が滲み出し、蛍光灯の光を弾いて濡れ光っていた。
「見ないでいいから……早く、済ませてくれ」
剛志は片手で顔を覆い、呻くように言った。
視覚を遮断しなければ、目の前の光景に耐えられそうになかった。
だが、小春は剛志の気持ちなど意に介さない。
彼女は自身のスマートフォンを畳に置き、液晶画面のブルーライトに照らされたマニュアル記事と、目の前の剛志のそれを真剣な眼差しで交互に見比べている。
「だって、ちゃんと見ないと覚えられないよ。……えっと、まずは優しく全体を舐めて、匂いや味に慣れる……そうか」
小春の独り言が聞こえる。
それは完全に洋介のための予習であって、剛志への愛撫などではない。
熱い吐息が剛志の敏感な部分にかかった。
ビクリ、と剛志の太ももの筋肉が収縮する。
顔を覆っていた手の隙間から恐る恐る下を見ると、小春が長い髪を耳にかけ、剛志のモノに顔を寄せているところだった。
長い睫毛が震え、潤んだ瞳が真近で観察している。
「ん……」
小さな鼻先が、先端の縁をこつんと突いた。
直後、小春の桜色の舌先が繰り出された。
うっ、と声が出そうになるのを、剛志は奥歯を噛み締めて堪えた。
小春の舌は熱くて、柔らかかった。
実のところ、彼が風俗に行ったのは一度だけで、しかもゴムを付けた状態で咥えられた。
だから、これは彼にとって初めて女性の、しかも小春の生の器官が自分に触れる感覚であった。
最初は探るように、先端を舐めている小春だったが、次いでその裏側のくびれた部分を舌の腹を使って這い上がっていく。
「……っ、はぁ、う……」
剛志の口から、重い呼気が漏れた。
ざらりとした舌の感触が、直接的に何度も伝わってくる。
ずっと片思いをしていた彼女が、自分の股間に顔を埋め、懸命に舌を使っているという事実で、剛志の脳髄は壊れてしまいそうだった。
「……なんか変な味。あ、唾をたっぷり出さないと、生の味が強くなるって書いてる……」
小春は口先を使いながら、スマートフォンの画面を見ている。
「……当たり前、だろ。汚ねぇから、もうやめろ」
しかし、小春は聞いていない。
「これが男の人の匂いなんだね。……洋介くんも、こういう味がするのかな」
彼女は、剛志の秘密の味を学びながら、脳内では別の男を想い描いている。
剛志のそれは、洋介の代用品でしかない。
その絶望的な事実が、皮肉なことに剛志のサディスティックな征服欲と、マゾヒスティックな献身欲を同時に刺激していた。
彼の彼女は、洋介に対してこの上ない裏切りをしているにもかかわらず、彼女は剛志に対しても洋介にも裏切りと思ってなどいない。
それどころかこうしなければ、洋介の恋人でいられなくなると危機感に襲われている。
小春はスマホの画面をスクロールさせると、意を決したように大きく息を吸い込んだ。
「次は……口に含んで、真空状態にする……」
彼女の小さな唇が、大きく開かれる。
濡れた粘膜の赤色が、剛志の視界に焼き付いた。
彼女は剛志の膝に手を置いて体を支えると、ゆっくりと頭を沈めた。
湿った音と共に、剛志の先端が熱い口腔内へと侵入する。
「ん、……ん、……っ」
小春の喉が鳴り、鼻にかかった苦しげな呼吸音が部屋に響く。
それはとても狭く、きつかった。
彼女の口内は、剛志のサイズを受け入れきれず、舌が逃げ場を失って剛志の裏筋に絡みついてくる。
口内のひだや、上顎のざらつき、そして熱せられた唾液の感触が、剛志の敏感な皮膚を容赦なく擦り上げた。
「ぁ、ぐ、……小春、歯が……」
剛志がわずかに腰を引く。
慣れない彼女の前歯が、硬くなったその部分に当たり、鈍い痛みが走ったからだ。
小春はパッと口を離し、電灯に光る唾液の糸を引かせながら、不安げに剛志を見上げた。
「ごめん! 痛かった? ねえ……どうすればいいの? ちゃんと教えて、剛志」
その目は怯えていた。
ここで剛志が教えなければ、本番で洋介を痛がらせてしまうかもしれない。
その恐怖が彼女を突き動かしている。
剛志は自嘲気味に笑うしかなかった。
自分の恋人が、他の男に抱かれるために、自分に指導を求めている。
剛志は震える手で小春の後頭部に触れ、優しく引き寄せた。
「……唇で、歯を隠すようにするんだ。……そう、包み込むみたいに」
「こう? ……ん……」
その口から生々しい音が鳴る。
「あぁ、そうだ……もっと、舌を……」
剛志のアドバイスに従い、小春は再び剛直を咥え込んだ。
今度は唇を内側に巻き込み、吸盤のように張り付かせる。
先ほどとは比べ物にならない、卑猥で濃厚な水音が響き始めた。
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