偽りに燃えて

羽翼綾人

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【第一部】真夏にこぼれた夢

和室の昂り

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 唇が触れた瞬間、芽衣はそっと目をつむった。
 拒絶はない。
 むしろ、乾いたスポンジが水を吸うように、浩一の唇を受け入れた。
 二人のキスは初め、思春期の若者のようにぎこちなかったが、大人のキスになるのに時間はかからなかった。
 浩一は、芽衣の腰に手を回した。
 Tシャツの裾から滑り込ませた指先に、彼女の熱い素肌が触れる。
 芽衣は「ん……」と小さく喘ぎ、浩一の肩を掴んだ。
 リビングでは、子供が寝ている。
 浩一は唇を離し、彼女の耳元で囁いた。
「……こっち」
 芽衣は、熱に浮かされたようにこくりと頷く。
 浩一は彼女の手を引き、リビングの隣にある和室の襖を開けた。
 そこは浩一の書斎であり、仮眠用の寝室だった。
 万年床になりかけている布団が敷いてある。
 襖を閉めると、部屋は薄暗くなり、二人の世界だけが切り取られた。
 言葉はなかった。
 互いの飢えを確かめ合うように、服を脱がせ合う。
 浩一は妻の友人に、芽衣は夫以外の男に、触れ合うという、あってはならない事態に、それぞれ興奮を高ぶらせていた。
 芽衣のTシャツを脱がせると、汗で湿った白い肌が現れた。
 浩一がその柔らかな膨らみに顔をうずめると、芽衣は「あ……そこは……汗が」とか細い声で抵抗したが、その手は浩一の髪を強く掴んでいた。
 唇が、手が触れていくたびに、芽衣の声が漏れた。
 その声は、戸惑いと甘さが混ざっている。
 半年間、誰にも触れられていなかった彼女の肌は、浩一の愛撫に敏感に反応した。
 浩一もまた、日常と化した妻の身体とは違う、未知の反応を返す芽衣の身体に夢中になった。
 畳の上で重なり合い、互いの体温と湿った呼吸を感じる。
「浩一さん……」
 芽衣が、潤んだ瞳で浩一を見上げる。
 浩一は何も答えず、彼女の孤独と、自分の倦怠感を塗りつぶすように、深く体を結びつけた。
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