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【第二部】秘密の授業
孤独な主婦の、自分への言い訳
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「あっ、だめ……浩一さん、そこ……!」
畳の上で重なり合いながら、芽衣は甲高い声を上げた。
万年床になりかけている布団は、シーツが乱れ、二人の熱を吸い込んでいる。
浩一は、目の前で肌を赤く染め、潤んだ瞳で自分を見上げる女の身体を、強く求めていた。
(私……どうして、またここに来ちゃったんだろう)
激しく揺さぶられる快感の中で、芽衣の意識は数時間前に飛んでいた。
あの日、一度きりの過ちを犯して以来、浩一とは連絡を取っていなかった。
罪悪感が胸を締め付け、英恵の顔をまともに見ることができなかったからだ。
だが、育児のストレスと、単身赴任中の夫の不在が彼女の孤独感を深めていた。そして、その内情を理解する唯一の男が、浩一であった。
そして今日、アパートの自室から窓の外を見ていると、偶然、英恵が娘を連れて出かける姿が見えた。
(……今、あの家には、彼が一人)
そう認識した瞬間、芽衣は吸い寄せられるように家を飛び出していた。
出光家のインターホンを鳴らす。
モニターに映る浩一の驚いた顔に、芽衣は何も言えず、ただ無言でレンズを見つめていた。
玄関のドアが開く。
中に入ると、浩一は何も言わなかった。
芽衣も、何も言えなかった。
ただ、無言で彼の胸元に歩み寄り、顔をうずめる。
浩一は、彼女を強く抱きしめた。
それがあの関係を再開させる合図となった。
「ん……ぁ……!」
自分の声と、和室の熱気が、芽衣を現実に引き戻す。
浩一の愛撫は、あの日よりも深く、執拗だった。
芽衣は、腰を揺らす以外の行為を、全てを浩一に委ねたまま、大きな快楽の声を上げて、ふっと力が抜けた。
浩一もまた、彼女の中で激しい律動の果てを迎えた。
二人は汗だくのまま、互いの身体を離し、荒い息を整えていた。
浩一は、すでにぐったりとして、呻き声だけを漏らしていた芽衣の姿を思い返し、ある確信を抱いていた。
(彼女は、ひどく受け身だ──)
快感に戸惑い、どう反応していいか分からず、ただ耐えるように身体を硬くする。
それは、妻の英恵とは全く違う反応だった。
(そして……とても不慣れだ)
如月夫妻の夜がどのようなものか、浩一は知らない。
だが、彼女が本当の快楽を知らぬまま放置されてきたことは明らかだった。
芽衣は、ゆっくりと身体を起こすと、額の汗を拭い、散らばった服を黙々と集め始めた。
その背中が、か細く震えている。
「……浩一さん」
服を着終え、後始末をしながら、芽衣が小さな声で言った。
「私、お願いしたいことがあるんです」
「……なに?」
「あの……絵を、教えてもらえませんか?」
「絵を?」
「このままじゃいけない気がして。あの、何か変なことを、言ってるみたい、ですけど」
彼女は、少しだけ早口にそう言った。
顔に迷いがあり、絵を学びたいという口実を作って、自分の恥ずかしい欲求を、不器用に隠そうとするかのようであった。
これは孤独な主婦の、自分への言い訳だった。
浩一は笑みを浮かべた。
「いいよ。僕でよければ」
浩一は、プライベート用のスマートフォンを取り出し、秘匿性の高いチャットアプリを起動させた。
「レッスン用の連絡先だ」
「……はい」
芽衣も、震える指でそれに応じる。
二人の関係はここに、偶発的な過ちから、継続的な結びつきに変わっていくことになる。
畳の上で重なり合いながら、芽衣は甲高い声を上げた。
万年床になりかけている布団は、シーツが乱れ、二人の熱を吸い込んでいる。
浩一は、目の前で肌を赤く染め、潤んだ瞳で自分を見上げる女の身体を、強く求めていた。
(私……どうして、またここに来ちゃったんだろう)
激しく揺さぶられる快感の中で、芽衣の意識は数時間前に飛んでいた。
あの日、一度きりの過ちを犯して以来、浩一とは連絡を取っていなかった。
罪悪感が胸を締め付け、英恵の顔をまともに見ることができなかったからだ。
だが、育児のストレスと、単身赴任中の夫の不在が彼女の孤独感を深めていた。そして、その内情を理解する唯一の男が、浩一であった。
そして今日、アパートの自室から窓の外を見ていると、偶然、英恵が娘を連れて出かける姿が見えた。
(……今、あの家には、彼が一人)
そう認識した瞬間、芽衣は吸い寄せられるように家を飛び出していた。
出光家のインターホンを鳴らす。
モニターに映る浩一の驚いた顔に、芽衣は何も言えず、ただ無言でレンズを見つめていた。
玄関のドアが開く。
中に入ると、浩一は何も言わなかった。
芽衣も、何も言えなかった。
ただ、無言で彼の胸元に歩み寄り、顔をうずめる。
浩一は、彼女を強く抱きしめた。
それがあの関係を再開させる合図となった。
「ん……ぁ……!」
自分の声と、和室の熱気が、芽衣を現実に引き戻す。
浩一の愛撫は、あの日よりも深く、執拗だった。
芽衣は、腰を揺らす以外の行為を、全てを浩一に委ねたまま、大きな快楽の声を上げて、ふっと力が抜けた。
浩一もまた、彼女の中で激しい律動の果てを迎えた。
二人は汗だくのまま、互いの身体を離し、荒い息を整えていた。
浩一は、すでにぐったりとして、呻き声だけを漏らしていた芽衣の姿を思い返し、ある確信を抱いていた。
(彼女は、ひどく受け身だ──)
快感に戸惑い、どう反応していいか分からず、ただ耐えるように身体を硬くする。
それは、妻の英恵とは全く違う反応だった。
(そして……とても不慣れだ)
如月夫妻の夜がどのようなものか、浩一は知らない。
だが、彼女が本当の快楽を知らぬまま放置されてきたことは明らかだった。
芽衣は、ゆっくりと身体を起こすと、額の汗を拭い、散らばった服を黙々と集め始めた。
その背中が、か細く震えている。
「……浩一さん」
服を着終え、後始末をしながら、芽衣が小さな声で言った。
「私、お願いしたいことがあるんです」
「……なに?」
「あの……絵を、教えてもらえませんか?」
「絵を?」
「このままじゃいけない気がして。あの、何か変なことを、言ってるみたい、ですけど」
彼女は、少しだけ早口にそう言った。
顔に迷いがあり、絵を学びたいという口実を作って、自分の恥ずかしい欲求を、不器用に隠そうとするかのようであった。
これは孤独な主婦の、自分への言い訳だった。
浩一は笑みを浮かべた。
「いいよ。僕でよければ」
浩一は、プライベート用のスマートフォンを取り出し、秘匿性の高いチャットアプリを起動させた。
「レッスン用の連絡先だ」
「……はい」
芽衣も、震える指でそれに応じる。
二人の関係はここに、偶発的な過ちから、継続的な結びつきに変わっていくことになる。
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