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【第三部】共鳴と模倣
今日はいつもと違うよ
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季節は、アスファルトを焦がした真夏から、肌寒い風が吹く秋へと移り変わっていた。
あの日始まった浩一と芽衣の「秘密のレッスン」は、週に一度、時には二度、英恵の不在時を狙って続けられ、今や二人の倒錯した日常の一部と化していた。
ただ、秘密の日常には、非日常性がある。
そこに夢や幻のような儚さがあり、二人の情念をより昂らせていた。
リビングの作業デスク──。
二人は、並んで液晶タブレットに向かっていた。
芽衣のデジタル作画の技術は、この数ヶ月で飛躍的に向上していた。
「君……すごいな。もう僕が教えることはないかもしれない」
浩一は芽衣が仕上げた作品データを見て、素直に感嘆の声を漏らした。
それは芽衣が浩一から教わった「光の処理」や「線の癖」を真っ直ぐに吸収し、非の打ち所がないほど、見事に再現した風景にある、無垢な動物キャラクターだった。
「そんな……先生が丁寧に教えてくれたからです」
芽衣は恥ずかしそうに俯く。
浩一は、その絵から目を離せなかった。
それは、紛れもなく自分の技術の複製作品だった。
自分の才能が、自分以外の人間──それも、妻の親友であり、自分の愛人である女の手によって再現されていく。
その事実は、浩一に背徳的な快感と、自分の才能が増殖していくかのような全能感を与えていた。
「……そろそろ、次のレッスンにするかな」
浩一がタブレットの電源を落とす。
芽衣は、その言葉の意味を即座に理解し、「はい、先生」と潤んだ声で答えた。
二人は、いつもの和室に入った。
すると、あの古びた布団はもうなかった。
上質の布団に買い替えられ、部屋も整理されており、以前のような乱雑さはどこにもない。
(先生、整え直したんだ……)
芽衣は、そのささやかな空間の変化に自分が愛されているという嬉しさと、自分が夫婦の邸宅に侵略しているような暗い喜びを同時に味わっていた。
「芽衣くん……今日は少しいつもと違うよ」
浩一は芽衣を仰向けに寝かせ、いつものように、その上に覆いかぶさった。
だが、すぐには結合せず、彼女の耳元で囁いた。
「まだ、君が気づいていない『隠し事』が残ってるのに、気がついたんだ。いつもと違う深い繋がり方がある」
「え……でも、もう私、先生に全部……」
これまで、正常位、後背位、騎乗位など、一般的な体位を実行してきた。
「いいから、言われる通りに。そう、力を抜いて。今度は、こっちに。……違う、そこじゃない」
浩一は、自分の身体の角度を細やかに調整しながら、ゆっくりと彼女の内部へと進んでいく。
「もっと奥で、僕を感じてみて。……そう、そこだ」
彼は、あえて動きを止め、芽衣がまだ意識したことのなかった一点を、圧迫するように刺激し始めた。
「あ……! 先生……っ、そこ……なに……!?」
それはこれまでの数ヶ月で経験した繋がり合いとは違う、意識を集中させる精密な「指導」だった。
芽衣は自分の身体の奥に、まだ開発されていなかった快感のレイヤーがあることに、初めて気づかされた。
「ほら、感じた。……嘘つきさんめ」
浩一は、芽衣がその新たな感覚に戸惑い、腰を震わせるのを楽しんでいた。
彼は、この「未開発」だった身体が、自分の指導によって望む通りの「作品」に仕上がっていく過程に夢中になっていた。
だが、その時だった。
芽衣が、その一点の快感から逃れようとするかのように、不意に腰を捻った。
それは、浩一が妻の英恵に同じことをしている時に、英恵だけが示していた、ある種の「癖」だった。
「……っ!?」
浩一の動きが止まる。
「どうしたんですか、先生?」
芽衣は、自分が何をしたのかわかっていない様子で、熱に浮かされたように浩一を見上げる。
(……今のは)
妻と同じ反応。
英恵が長い恋人関係と夫婦関係を重ねて、娘を妊娠する少し前ぐらいに浩一に最適化して、彼の動きに合わせて彼のそこを強く刺激して、一気に放出させる反応を最適化した。
それをこの目の前で、顔を寄せ合い、身体を重ねている、妻の親友は、たったの一回で、ほとんど本能的に習得していたのだ。
(彼女は英恵と違って、僕を遠くからずっと観察してきた。そして接近してからも、僕の心の中まで見通そうとしている。だから、こんなに早く、僕に最適化したんだ)
浩一は「うっ」と呻くと、強い感動と、戦慄を同時に覚えながら、彼女の中に果てた。
「先生……好き」
芽衣が目を閉じて、足を絡めながら、唇を重ねる。
浩一は、芽衣の身体をさらに強く抱きしめた。
あの日始まった浩一と芽衣の「秘密のレッスン」は、週に一度、時には二度、英恵の不在時を狙って続けられ、今や二人の倒錯した日常の一部と化していた。
ただ、秘密の日常には、非日常性がある。
そこに夢や幻のような儚さがあり、二人の情念をより昂らせていた。
リビングの作業デスク──。
二人は、並んで液晶タブレットに向かっていた。
芽衣のデジタル作画の技術は、この数ヶ月で飛躍的に向上していた。
「君……すごいな。もう僕が教えることはないかもしれない」
浩一は芽衣が仕上げた作品データを見て、素直に感嘆の声を漏らした。
それは芽衣が浩一から教わった「光の処理」や「線の癖」を真っ直ぐに吸収し、非の打ち所がないほど、見事に再現した風景にある、無垢な動物キャラクターだった。
「そんな……先生が丁寧に教えてくれたからです」
芽衣は恥ずかしそうに俯く。
浩一は、その絵から目を離せなかった。
それは、紛れもなく自分の技術の複製作品だった。
自分の才能が、自分以外の人間──それも、妻の親友であり、自分の愛人である女の手によって再現されていく。
その事実は、浩一に背徳的な快感と、自分の才能が増殖していくかのような全能感を与えていた。
「……そろそろ、次のレッスンにするかな」
浩一がタブレットの電源を落とす。
芽衣は、その言葉の意味を即座に理解し、「はい、先生」と潤んだ声で答えた。
二人は、いつもの和室に入った。
すると、あの古びた布団はもうなかった。
上質の布団に買い替えられ、部屋も整理されており、以前のような乱雑さはどこにもない。
(先生、整え直したんだ……)
芽衣は、そのささやかな空間の変化に自分が愛されているという嬉しさと、自分が夫婦の邸宅に侵略しているような暗い喜びを同時に味わっていた。
「芽衣くん……今日は少しいつもと違うよ」
浩一は芽衣を仰向けに寝かせ、いつものように、その上に覆いかぶさった。
だが、すぐには結合せず、彼女の耳元で囁いた。
「まだ、君が気づいていない『隠し事』が残ってるのに、気がついたんだ。いつもと違う深い繋がり方がある」
「え……でも、もう私、先生に全部……」
これまで、正常位、後背位、騎乗位など、一般的な体位を実行してきた。
「いいから、言われる通りに。そう、力を抜いて。今度は、こっちに。……違う、そこじゃない」
浩一は、自分の身体の角度を細やかに調整しながら、ゆっくりと彼女の内部へと進んでいく。
「もっと奥で、僕を感じてみて。……そう、そこだ」
彼は、あえて動きを止め、芽衣がまだ意識したことのなかった一点を、圧迫するように刺激し始めた。
「あ……! 先生……っ、そこ……なに……!?」
それはこれまでの数ヶ月で経験した繋がり合いとは違う、意識を集中させる精密な「指導」だった。
芽衣は自分の身体の奥に、まだ開発されていなかった快感のレイヤーがあることに、初めて気づかされた。
「ほら、感じた。……嘘つきさんめ」
浩一は、芽衣がその新たな感覚に戸惑い、腰を震わせるのを楽しんでいた。
彼は、この「未開発」だった身体が、自分の指導によって望む通りの「作品」に仕上がっていく過程に夢中になっていた。
だが、その時だった。
芽衣が、その一点の快感から逃れようとするかのように、不意に腰を捻った。
それは、浩一が妻の英恵に同じことをしている時に、英恵だけが示していた、ある種の「癖」だった。
「……っ!?」
浩一の動きが止まる。
「どうしたんですか、先生?」
芽衣は、自分が何をしたのかわかっていない様子で、熱に浮かされたように浩一を見上げる。
(……今のは)
妻と同じ反応。
英恵が長い恋人関係と夫婦関係を重ねて、娘を妊娠する少し前ぐらいに浩一に最適化して、彼の動きに合わせて彼のそこを強く刺激して、一気に放出させる反応を最適化した。
それをこの目の前で、顔を寄せ合い、身体を重ねている、妻の親友は、たったの一回で、ほとんど本能的に習得していたのだ。
(彼女は英恵と違って、僕を遠くからずっと観察してきた。そして接近してからも、僕の心の中まで見通そうとしている。だから、こんなに早く、僕に最適化したんだ)
浩一は「うっ」と呻くと、強い感動と、戦慄を同時に覚えながら、彼女の中に果てた。
「先生……好き」
芽衣が目を閉じて、足を絡めながら、唇を重ねる。
浩一は、芽衣の身体をさらに強く抱きしめた。
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