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【第四部】炎上、そして爆発
ガチのエロ絵師
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あの日当たりの悪い、隠微な和室の書斎。
詩的な背景に、鮮やかな色彩で描かれる二人の淫らな接合、口淫、初めての体位。
いずれも男の顔は見えない。
しかし、女の顔は細微に再現されていた。
それはあの子鹿と同じ目をしていた。
初めての戸惑い、恥じらい、喜びが、顔や身体の動きから、絶妙に読み取れる。
結婚指輪から二人が既婚者であることも示されているが、日中に男女が切なく交わる図に、夫婦を連想する人はいない。
これは、芽衣が浩一への想いをそのまま作品にしたものであった。
SNSは、爆発的に拡散された。
浩一の指示も、英恵の善意も、企業の擁護も、すべてを置き去りにして、芽衣が投じた作品は、炎上の意味そのものを変質させた。
生々しい情景。
>『下半身が爆発』
>『え、イグニスって、あの鹿のパクリの?』
>『イグニス炎上からイグニス爆発へ』
>『僕の下半身もイグニス爆発しそうです……』
彼女の投稿はR-18のラインをも越えるセンシティブな内容として、アカウントは規約違反により、数時間後に凍結された。
だが、その数時間で、作品は無数の人々に保存・拡散され尽くしていた。
イグニスを批判していたインフルエンサーが、削除された彼女の画像を『検証』と称して、無断で再アップロードしたことで、その矛先は大きく変わった。
『こいつ、イグニス先生の作品を、勝手に投稿してるぞ』
『こんな奴が著作権を論じてたの。笑える』
とりわけインフルエンサーのアンチが騒ぎ立てて、大きな燃え上がりが始まった。
匿名掲示板では、昨日まで「パクリ疑惑」で燃えていたスレッドが止まり、代わりに「【速報】イグニス先生、ガチのエロ絵師だった」というスレッドが、乱立し始めた。
世間の反応は、批難から絶賛へと変わった。
『これ、オイルマンのパクリとかどうでもいいわ。画風は似てるが、圧が違う』
『オイルマンは「光」を描く。イグニスは「熱」と「湿度」を描く』
『あの無垢な子鹿の瞳に感じた「官能的な湿度」の正体、これだったのかよ』
『パクリ絵師から、一日で『最高のエロ絵師』に転生したぞ』
炎上は鎮火したのではない。
私刑目的の「パクリ」の火は消え、芽衣の「才能」への称賛の聖火が、まったく別の場所で、より激しく燃え上がったのだ。
ミネラルウォーター企業は、該当アカウントが凍結されたため、言及する責任などないように沈黙した。
一般のネットユーザーは、イグニスの今後の活動に期待を寄せる声が増えていた。
『イグニス先生、新作お待ちしています』
『企業もこれを非難しないよね。某電力会社のキャラデザ描いていた女漫画家の作品、あれもヤバかったし』
『先生の男女、いい。この二人をモチーフにこれからも描いてほしい』
芽衣は、この様子を無表情に見つめながら、「よかった……。これで守られた。……全部」と胸を撫で下ろした。
しかし、ネットの空気が変わるのを見て、青ざめている人物がいた。
出光浩一であった。
詩的な背景に、鮮やかな色彩で描かれる二人の淫らな接合、口淫、初めての体位。
いずれも男の顔は見えない。
しかし、女の顔は細微に再現されていた。
それはあの子鹿と同じ目をしていた。
初めての戸惑い、恥じらい、喜びが、顔や身体の動きから、絶妙に読み取れる。
結婚指輪から二人が既婚者であることも示されているが、日中に男女が切なく交わる図に、夫婦を連想する人はいない。
これは、芽衣が浩一への想いをそのまま作品にしたものであった。
SNSは、爆発的に拡散された。
浩一の指示も、英恵の善意も、企業の擁護も、すべてを置き去りにして、芽衣が投じた作品は、炎上の意味そのものを変質させた。
生々しい情景。
>『下半身が爆発』
>『え、イグニスって、あの鹿のパクリの?』
>『イグニス炎上からイグニス爆発へ』
>『僕の下半身もイグニス爆発しそうです……』
彼女の投稿はR-18のラインをも越えるセンシティブな内容として、アカウントは規約違反により、数時間後に凍結された。
だが、その数時間で、作品は無数の人々に保存・拡散され尽くしていた。
イグニスを批判していたインフルエンサーが、削除された彼女の画像を『検証』と称して、無断で再アップロードしたことで、その矛先は大きく変わった。
『こいつ、イグニス先生の作品を、勝手に投稿してるぞ』
『こんな奴が著作権を論じてたの。笑える』
とりわけインフルエンサーのアンチが騒ぎ立てて、大きな燃え上がりが始まった。
匿名掲示板では、昨日まで「パクリ疑惑」で燃えていたスレッドが止まり、代わりに「【速報】イグニス先生、ガチのエロ絵師だった」というスレッドが、乱立し始めた。
世間の反応は、批難から絶賛へと変わった。
『これ、オイルマンのパクリとかどうでもいいわ。画風は似てるが、圧が違う』
『オイルマンは「光」を描く。イグニスは「熱」と「湿度」を描く』
『あの無垢な子鹿の瞳に感じた「官能的な湿度」の正体、これだったのかよ』
『パクリ絵師から、一日で『最高のエロ絵師』に転生したぞ』
炎上は鎮火したのではない。
私刑目的の「パクリ」の火は消え、芽衣の「才能」への称賛の聖火が、まったく別の場所で、より激しく燃え上がったのだ。
ミネラルウォーター企業は、該当アカウントが凍結されたため、言及する責任などないように沈黙した。
一般のネットユーザーは、イグニスの今後の活動に期待を寄せる声が増えていた。
『イグニス先生、新作お待ちしています』
『企業もこれを非難しないよね。某電力会社のキャラデザ描いていた女漫画家の作品、あれもヤバかったし』
『先生の男女、いい。この二人をモチーフにこれからも描いてほしい』
芽衣は、この様子を無表情に見つめながら、「よかった……。これで守られた。……全部」と胸を撫で下ろした。
しかし、ネットの空気が変わるのを見て、青ざめている人物がいた。
出光浩一であった。
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