偽りに燃えて

羽翼綾人

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【第四部】炎上、そして爆発

それだけ僕たちが本気だってこと

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 日曜日の午後三時。
「それじゃあ、夜までに帰るわね」
「ああ、いってらっしゃい」
 玄関ホールで英恵が娘の手を引き、ショッピングモールへと出かけていく。
 やがて静まり返った室内に、インターホンが鳴った。
 浩一がモニターを無言で確認し、エントランスのロックを解除する。
 玄関のドアが静かに開いた。
 息を殺すようにして入ってきたのは、ダークグリーンのワンピース姿の芽衣だった。
 ベビーカーに息子を乗せている。
「……行かれた、みたいですね」
「ああ。夜まで帰ってこない」
 例のリクエスト──『より刺激的な場所で』。
 その「レッスン」のために、二人は英恵の外出を待っていたのだ。
 二人でしばらく、芽衣の息子と遊んで過ごした。
 やがて、遊び疲れて寝息を立てる時間になる。
 浩一と芽衣は、どちらからともなく目を合わせ、笑みを浮かべた。
「場所……どこにするんです?」
「決まってるよ」
 浩一は、ある部屋のドアを開けた。
 浩一と英恵の「寝室」だった。
 ダブルベッドと、英恵のドレッサーが置かれている、夫婦だけの空間。
「え、ここで……。う……嘘ですよね……?」
 芽衣は、不安そうな顔で、浩一の顔を見た。
「あの和室、君のアパートよりも『刺激的な場所』を、君に味わってもらうには、ここが最適解だよ」
 浩一は戸惑う芽衣を、ベッドの上に押し倒して、身を重ねてきた。
 芽衣はシーツから、英恵が愛用する柔軟剤の香りがするのを感じた。
 それが彼女を本能的に抵抗させた。
 首を横に振り、彼の身から逃れようと動く。
「ここ……英恵さんの、場所ですよね……。やめませんか?」
 だが、後ろから浩一がその細い肩を掴んで、彼女の髪を掻き分けて、そのうなじに唇を寄せて吸い付くと、芽衣は痺れたように身を震わせて、抵抗の力が失せていった。
 浩一は、芽衣の耳元で囁く。
「あってはならない場所で、あってはならないことをする。……それだけ僕たちが本気だってことだ」
 その言葉が、芽衣の罪悪感を奇妙な興奮へと変質させていく。
(本気……。私たち、本気……。先生がそう言ってる)
 浩一は芽衣の薄いワンピースのファスナーに手をかけ、一気に引き下げた。
 現れた華奢な背中に、浩一は舌を這わせていく。
「ひゃ……!」
 妻のベッドで、妻の親友を抱く。
 二人はすでに、タブーを犯してでも互いを求め合ってしまう強い欲望の力に、身を委ねる、そして屈する興奮を覚えており、自身の器官が濡れていくのを感じた。
 ドレッサーの鏡には、英恵の私物が並んでいる。その鏡に今、自分たちが絡み合う姿が映り込んでいる。
(ごめんなさい、英恵さん……私、ごめんなさい……!)
 背中に何度も重ねられるキス。
 心で謝罪しながらも、身体は浩一の愛撫に熱く反応していた。
 浩一は、芽衣の身体を反転させると、彼女の両足を大きく開かせていく。
「先生……明るいのに……そんな不潔なところ」
「君はどこから見ても美しいよ」
 芽衣は、彼から離れようとしたが、浩一の力強さの前では、全くの無駄だった。
 浩一は、芽衣の潤んだ秘部を覗き込むと、容赦なく自分の熱を突き入れていく。
「ああっ……! まだゴム付けてないですよね?」
 抵抗を押し除けるほど彼は強い意志で、あってはならないところで、あってはならないことを決行している。
 それほど『本気』であることを示されて、快感の閾値を麻痺されていった。
 浩一の指が、芽衣の敏感な蕾を的確に刺激するたび、芽衣はこれまで感じたことのないほど、激しく腰を震わせた。
「あ……あっ……! 先生、だめ、私……!」
 芽衣の意識が、一瞬、白く飛んだ。
 その動きでベッドが大きく揺れた。
 彼女の器官が、ぎゅっと彼を締め付ける。
 まだ装着していなかったので、彼は思わず身を離した。
 すると、二人が繋がっていたところから、これまでにない量の彼女の愛の水がこぼれ落ちた。
 芽衣は数秒間、恍惚としていたが、やがて異変に気づき、小さな悲鳴を上げた。
「あっ……! え、あ、どうしよう……!」
 純白のシーツに、彼女の愛液が小さなシミを作っていた。
「英恵さんのシーツに……」
 芽衣は、慌てて身体を起こし、シミを隠そうと手で擦ろうとする。
 だが、浩一は、小さなパニックに陥った芽衣の手首を掴んで、笑みを浮かべた。
「気にするな。どうせわかりやしない」
 浩一は、慌てる芽衣の顔に、自身のそれを近づけていく。
「それに、僕はまだ終わっていない」
 その後、彼は彼女の口内で、数日間、溜め込まれていた欲望を放ち、「これはこぼさないで」と言われて、初めて彼の味を飲み込んだ。
 すると、浩一は彼女のまだ濡れているところを、指で愛し、そして次は避妊具を装着して埋めていき、互いが二度目を迎えるまで、全身を愛し続けた。
 二人はもうさっきのシミを忘れるどころか、さらにその痕跡を増やして気にすることがなくなっていた。
 芽衣も心の底が、偽りとも真実ともわからない二人の愛に燃えていて、自ら歓びを求めて声を上げ、腰を揺らして、水滴を落としていった。
 夕日が部屋に差し込む頃、二人はシャワーを終えて、別れを惜しむ抱擁と、穏やかなキスを繰り返していた。
「……先生は、悪い人です」
「その、悪い先生をどう思う?」
「大嫌いです。でも……私、先生が大好きです……」
 甘い言葉を交わした後、芽衣は息子を連れて帰っていく。
 だが、浩一は気づいていなかった。
 彼女が落としたのは、愛の雫ばかりではない。
 彼女の琥珀色した髪の影で、密かに輝いていたイヤリングの片方が、ベッドと壁の隙間に落ちているのに、気づいていなかった。
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