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【第六部】長い夜の始まり
ここ、好きだったでしょう
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午後十時過ぎ。
浩一は、妻に促されるまま、この狂った決闘の「舞台」であるダブルベッドに、力なく横たわった。
むしろ、彼自身もこの舞台の一つだ。
思考など、この場に求められていない。
自分は夫であり、男であるというプライドは、この異常な状況を受け入れた二人の女によって、すでに跡形もなく打ち砕かれていた。
ただ、これから朝まで続く快楽を、動物のように受け入れることだけに専念しようと思った。
思考停止して、全てを二人に委ねる。
芽衣は、英恵が用意した部屋の隅のスツールに、背筋を伸ばして静かに座っている。
英恵は、コットンのルームウェア一枚になると、浩一をベッドに横たわらせた。
その黒髪はショートカットだが、スタンドの光を浴びて濡れたように輝いている。
「それじゃあ……始めましょうか」
英恵は浩一の隣に、いつものように横たわった。
しかし、二人とも夜間着ではないことだけが、いつもとはっきり違っていた。
(如月……芽衣……)
英恵は、部屋の隅でこちらを見つめる女の気配を感じながら、思考を巡らせた。
(決着のルールを定めた以上、あの子には、何か切り札があるはず。例えば、浩一が知らない『技術』を使うとか)
英恵は、くすっと微笑みかけて、浩一をリラックスさせようとした。
(あの子の企みがなんであれ、わたしと彼には年月の積み重ねがある。この男と、恋人同士だった時から、結婚して、子供が生まれて、これまで、何を好み、何を退屈だと感じてきたか、そのすべてを知っている)
英恵は、まず一回、確実に仕留めることを決意した。
(芽衣の『非日常』に対抗する武器は、わたしの『日常』。その日常に隠された、本当の『官能』)
彼女は、浩一が最も安心し、最も油断する「いつもの妻」として、彼の胸に自分の柔らかな肌をぴったりと寄せた。
そして、夫の耳元に優しく囁きかけた。
「……浩一。大丈夫よ。……わたしがいるから」
その言葉は、不安でいっぱいだった彼の心を、確実に落ち着かせた。
「少しくらいの浮気で、あなたを見限ったりしない」
浩一のこわばっていた身体から力が抜け、ほとんど縋るような目で妻の顔を見つめ始める。
英恵は、その「緩み」を見逃さなかった。
彼女は、「全部任せてね」と言い、彼の衣服を脱がしていく。そして、彼の引き締まった身体に、舌先を這わせ始めた。
彼を優しく抱きながら、どこまでも舐めていく。
やがて彼も発情の兆しが現れてきた。
「いつもみたいに、脱がして」
彼は英恵のルームウェアを脱がして、その柔らかな裸身に顔を沈めていく。
触れられて、心地よい。
彼もこんなに息を漏らしている。
英恵と、浩一は、長年連れ添ってきた夫婦らしく、仲睦まじく、互いの身体を味わい始めた。
ある時は背中を丹念に、ある時は足を丁寧に、そして英恵は、結婚初期にだけ試したことのある行為に踏み切った。
(夫の、このお尻)
その曲線を甘く噛みながら、不意にそこへ顔を向けていく。
「あ……っ、う……は、英恵っ!?」
彼の腰を力強く掴まえて、舌先を彼の秘密の割れ目に押し込んだ。
「前にしたことあったよね」と言い、彼が「ダメだ、そこは」と抵抗する。
「どうして? 可愛い生徒さんが見ているから? 見せつけたらいいじゃない」
さらに、その指先は彼の下半身の突起を包み込み、なぞり始めた。
「う……っ!」
浩一の身体が、忘れかけていた記憶を呼び覚まされたかのように、跳ね始めた。
「……ここ、好きだったでしょう? ずっと、してあげてなかったわね」
「く……英恵、やめ……」
英恵は一旦、手を休めた。
息の荒くなった彼も、動きを止めて、熱っぽい目で妻の笑みを怯えるように見つめている。
「あなた、いい子。わたし、あなたと結婚してよかった」
そう言って、彼の顔を自分の胸で挟んでいく。
そして、彼の下半身に跨り、何も付けずにそれを自身の中に埋めていく。
(あの子の貧相な胸では、絶対にできないこと。そして、本当の夫婦でないとできない生の出し入れ──)
英恵は、心の中でそう呟くと、芽衣の官能画など霞んでしまうほどの、圧倒的な「妻」としての技術で、浩一を攻め立てた。
浩一の呼吸がより荒くなる。
妻の熟練した快感と、愛人に見られている恥辱の興奮。
二つの相反する刺激に、浩一の理性は、もはや耐えきれなかった。
「う……ああ……っ!」
浩一は、抗う間もなく、妻の中で、最初の絶頂を迎えた。
時間は、まだ三十分も経っていなかった。
英恵は汗を拭い、浩一の隣から静かに起き上がると、満足げに微笑んだ。
「……まず、わたしが一本ね」
芽衣が、彼の妻に尊敬の眼差しを向けて言った。
「……さすがです、英恵さん。悔しいほどです。とっても勉強になります」
英恵は、ルームウェアを着込んで整えながら、挑戦者を見据えた。
「それじゃあ、ルール通り、休憩しましょう。……次は、あなたの番よ、芽衣ちゃん」
「はい。あ、先生。そのままでいてください。お風呂とか入らなくても、私、大丈夫ですから。あの……実は一度、夫婦の愛の跡を味わってみたかったんです」
浩一は、消耗しきった身体でシーツに沈みながら、薄闇の先で目を輝かせる芽衣の姿に戦慄していた。
浩一は、妻に促されるまま、この狂った決闘の「舞台」であるダブルベッドに、力なく横たわった。
むしろ、彼自身もこの舞台の一つだ。
思考など、この場に求められていない。
自分は夫であり、男であるというプライドは、この異常な状況を受け入れた二人の女によって、すでに跡形もなく打ち砕かれていた。
ただ、これから朝まで続く快楽を、動物のように受け入れることだけに専念しようと思った。
思考停止して、全てを二人に委ねる。
芽衣は、英恵が用意した部屋の隅のスツールに、背筋を伸ばして静かに座っている。
英恵は、コットンのルームウェア一枚になると、浩一をベッドに横たわらせた。
その黒髪はショートカットだが、スタンドの光を浴びて濡れたように輝いている。
「それじゃあ……始めましょうか」
英恵は浩一の隣に、いつものように横たわった。
しかし、二人とも夜間着ではないことだけが、いつもとはっきり違っていた。
(如月……芽衣……)
英恵は、部屋の隅でこちらを見つめる女の気配を感じながら、思考を巡らせた。
(決着のルールを定めた以上、あの子には、何か切り札があるはず。例えば、浩一が知らない『技術』を使うとか)
英恵は、くすっと微笑みかけて、浩一をリラックスさせようとした。
(あの子の企みがなんであれ、わたしと彼には年月の積み重ねがある。この男と、恋人同士だった時から、結婚して、子供が生まれて、これまで、何を好み、何を退屈だと感じてきたか、そのすべてを知っている)
英恵は、まず一回、確実に仕留めることを決意した。
(芽衣の『非日常』に対抗する武器は、わたしの『日常』。その日常に隠された、本当の『官能』)
彼女は、浩一が最も安心し、最も油断する「いつもの妻」として、彼の胸に自分の柔らかな肌をぴったりと寄せた。
そして、夫の耳元に優しく囁きかけた。
「……浩一。大丈夫よ。……わたしがいるから」
その言葉は、不安でいっぱいだった彼の心を、確実に落ち着かせた。
「少しくらいの浮気で、あなたを見限ったりしない」
浩一のこわばっていた身体から力が抜け、ほとんど縋るような目で妻の顔を見つめ始める。
英恵は、その「緩み」を見逃さなかった。
彼女は、「全部任せてね」と言い、彼の衣服を脱がしていく。そして、彼の引き締まった身体に、舌先を這わせ始めた。
彼を優しく抱きながら、どこまでも舐めていく。
やがて彼も発情の兆しが現れてきた。
「いつもみたいに、脱がして」
彼は英恵のルームウェアを脱がして、その柔らかな裸身に顔を沈めていく。
触れられて、心地よい。
彼もこんなに息を漏らしている。
英恵と、浩一は、長年連れ添ってきた夫婦らしく、仲睦まじく、互いの身体を味わい始めた。
ある時は背中を丹念に、ある時は足を丁寧に、そして英恵は、結婚初期にだけ試したことのある行為に踏み切った。
(夫の、このお尻)
その曲線を甘く噛みながら、不意にそこへ顔を向けていく。
「あ……っ、う……は、英恵っ!?」
彼の腰を力強く掴まえて、舌先を彼の秘密の割れ目に押し込んだ。
「前にしたことあったよね」と言い、彼が「ダメだ、そこは」と抵抗する。
「どうして? 可愛い生徒さんが見ているから? 見せつけたらいいじゃない」
さらに、その指先は彼の下半身の突起を包み込み、なぞり始めた。
「う……っ!」
浩一の身体が、忘れかけていた記憶を呼び覚まされたかのように、跳ね始めた。
「……ここ、好きだったでしょう? ずっと、してあげてなかったわね」
「く……英恵、やめ……」
英恵は一旦、手を休めた。
息の荒くなった彼も、動きを止めて、熱っぽい目で妻の笑みを怯えるように見つめている。
「あなた、いい子。わたし、あなたと結婚してよかった」
そう言って、彼の顔を自分の胸で挟んでいく。
そして、彼の下半身に跨り、何も付けずにそれを自身の中に埋めていく。
(あの子の貧相な胸では、絶対にできないこと。そして、本当の夫婦でないとできない生の出し入れ──)
英恵は、心の中でそう呟くと、芽衣の官能画など霞んでしまうほどの、圧倒的な「妻」としての技術で、浩一を攻め立てた。
浩一の呼吸がより荒くなる。
妻の熟練した快感と、愛人に見られている恥辱の興奮。
二つの相反する刺激に、浩一の理性は、もはや耐えきれなかった。
「う……ああ……っ!」
浩一は、抗う間もなく、妻の中で、最初の絶頂を迎えた。
時間は、まだ三十分も経っていなかった。
英恵は汗を拭い、浩一の隣から静かに起き上がると、満足げに微笑んだ。
「……まず、わたしが一本ね」
芽衣が、彼の妻に尊敬の眼差しを向けて言った。
「……さすがです、英恵さん。悔しいほどです。とっても勉強になります」
英恵は、ルームウェアを着込んで整えながら、挑戦者を見据えた。
「それじゃあ、ルール通り、休憩しましょう。……次は、あなたの番よ、芽衣ちゃん」
「はい。あ、先生。そのままでいてください。お風呂とか入らなくても、私、大丈夫ですから。あの……実は一度、夫婦の愛の跡を味わってみたかったんです」
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