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番外編(馨)ラブなレター7
しおりを挟む凪はその場で震える指先を落ち着けるように封を切り、手紙を開いた。
ーーーーーーー
小鳥遊凪先輩。
初めまして。一年生の村井といいます。あなたのことを初めて見たときから、他の人とは違うものを感じました。
小鳥遊先輩は見かけるたびに綺麗になっていって、そのたびに心惹かれました。人見知りなのに、困っていそうな人に積極的に声をかけていく心優しさも好きです。
指輪を外したということは何か理由があったんだと思います。
もし、小鳥遊先輩の中に俺が入り込める隙があるのであれば、入りたいです。
返事は急ぎません。でも、返事をくれたら嬉しいです。
ーーーーーーー
単調な文体ではあったが、それだけにごまかしのない気持ちが伝わってきた。それは凪宛てのラブレターだった。
「……」
凪はしばらく呆然と便箋を見つめ、次にどうすべきか分からなかった。恋愛の告白をこうして文字で受け取るのは初めての経験だったし、何よりも今の心の状態では素直に受け止めきれない。
胸の奥にはまだ馨の存在が強く残っていて、痛みすら伴っているのに、別の誰かから向けられる温かな言葉がそこに重なってしまうことが戸惑いを呼んだ。
「へえ、それ……ラブレターか」
唐突に頭上から声が降ってきた。反射的に凪は勢いよく顔を上げる。
「宗介!! いるなら呼んでよ!」
視線の先には宗介が立っていた。いつの間に来たのか、凪の表情を覗き込みながら、からかうような笑みを浮かべている。慌てた凪は手紙を後ろに隠し、頬を赤く染めた。
「いや、お前があまりにも真剣な顔してたからさ。邪魔するの悪いかなって思って」
軽い調子で言いながらも、宗介の目の奥は意外と鋭く、凪の様子を注意深く観察しているように見える。その笑みには悪気はなく、ただ少しの茶化しと、ほんのわずかな心配が滲んでいた。
「……蓮見馨と別れたのか?」
宗介は一瞬真剣な顔になった。
思いがけない言葉が投げかけられ、凪の心臓が大きく跳ねた。
「え? いや、別に……」
返事ははっきりしない。否定しようとすればできるはずなのに、言葉が喉の奥で詰まってしまう。結局は曖昧に誤魔化すしかなかった。
ここではっきりと「別れてない」と言い切れればいいのに。
心の中でそう呟いた瞬間、自分の弱さを痛感する。指輪を外してしまった自分、ニュースから逃げるように携帯を閉じた自分、そして誰かの想いを受け取ってしまった自分。その全てが「答えを出せていない現実」を突きつけていた。
「それにしてもお前、なんでそんなモテてんだよ。生意気なんだよ」
「モテる宗介に言われたくない」
なかなか答えない凪に対して何かを悟った宗介はそれ以上聞くことはなかった。
冗談気味に言って肩をすくめるように笑った。その笑みが余計に、凪の胸を締めつけていった。
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