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しおりを挟むその後、宗介は凪の顔をじっと見つめながら、ふっと優しい笑みを浮かべた。
「凪、仲間はずれにしてごめんな」
さらりと、だけど真っ直ぐな声音だった。宗介は凪の頭をくしゃくしゃと撫でて、頬を軽く摘む。ふにっと頬が持ち上がり、凪は視線をそらした。
「別に……仲間外れにされたなんて思ってないよ。久しぶりに会った人だったんでしょ?だったら僕のことなんか気にしないで」
そう言いながらも、口調にはどこか拗ねた響きが混ざってしまう。抑えたつもりでも、自分の感情がどうしても滲み出てしまうのが悔しかった。
そんな凪の様子に宗介はにやりと口角を上げた。
「お隣はお友達?って聞かれてるけどさ、なんて答える?」
宗介はどこか楽しそうな口調で、凪の耳元に顔を寄せて囁いた。
「そんなの……僕に聞かないでよっ」
慌てて宗介から距離を取ろうと、凪は手のひらで彼の胸を押そうとした。けれど、その手首はすぐに掴まれ、するりと引き寄せられる。
「じゃあ、俺が好きに答えていいってことだろ?」
その言葉にドキッとしたと同時に、凪は目を見開いた。宗介は凪の手首を握ったまま、例の彼女の方に向き直り、さらりと告げる。
「友達でもあるし……俺の大事な人でもあるかな」
まるで天気予報でも話すかのような自然さだった。だがその言葉は、凪の胸にずしんと響く。
彼女一瞬、目を見開いて言葉を失ったようだった。視線を凪と宗介の間に揺らし、戸惑ったように笑みを浮かべる。
「……あ、え?そうなの?大事な人って……」
彼女がさらに何か言おうとした時、ちょうど注文の順番が回ってきた。気まずい空気を切り裂くように、レジから店員の明るい声が響く。
注文したクレープを受け取る間も、彼女は話しかけ続けたが、宗介はそれに大して反応を示さず、凪の手をそっと握った。
「宗介、あのさ、今度また連絡するから……その時、2人でどこか」
「わりぃ。2人で会うのは無理だわ。また、あいつらと集まった時にでもな。じゃあ、またな」
宗介は言葉を遮るようにきっぱりと返し、そのまま凪の手を引いた。
店を出てから、近くの公園に歩いて移動し、ベンチに並んで座った。夕暮れの風が、ほんのり甘いクレープの香りを運んでくる。
凪は、手にしたクレープを一口も食べられず、ただ俯いていた。どう口を開けばいいのかわからない。気まずい空気を壊そうと、宗介が静かに口を開いた。
「……凪、本当にごめんな。嫌な思いさせたよな。今度知り合いに会った時は、ちゃんとすぐに凪のこと紹介する。そしたら……もう不安にならねぇだろ」
凪は首を振る。
「……べつに、宗介が誰と話そうが僕がどうこういうことではないから…」
それは確かに凪の本音だった。束縛したいわけじゃないし、過去の交友関係を責めるつもりもない。ただ、それでも胸の奥には言葉にしがたいもやもやが残っていた。
「だけど……なんかわかんないけど、嫌だったみたい」
ぽつりと呟く。自分の感情にすら戸惑っている。嫉妬、という言葉が頭に浮かんでも、それがどんな種類のものなのか判別がつかない。
隣にいる宗介の膝に置かれた手に、凪はそっと自分の手を重ねた。握る力はとても弱い。まるで、壊れてしまいそうな何かに触れるように。
「なんか……宗介が僕の知らない人と仲良くしてるの、見てるのつらかった」
それが、数少ない友達を奪われるような寂しさなのか、恋心からくる独占欲なのか。凪にはまだ分からない。
だが、宗介はそんな凪の手を、強く、確かに握り返した。
「……凪。大事にするから、安心してろよ」
宗介は片手で凪の手を掬い取ると、手の甲を口に押し当てた。その姿はおとぎ話に出てくる王子の姿もを連想させる。
だが、その仕草がなんだかおかしくて、凪の口元に、ようやく小さな笑みが戻った。
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