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今まで春也以外には誕生日のことを話してこなかったけど、もう誕生日も知られてしまったんだしこの先輩に話したところで

そんなことを思った


「誕生日なんて嫌いですし、いらないですよ
生まれなきゃ良かったって何度も思ったし、
今でも思うときはありますよ
いっそのこと誕生日は記憶から消したいくらいです」


「・・・・・・そうなんだ・・・」


先輩は両手を膝の上において下を俯く



「先輩が暗くなる必要ないでしょ」



「それって家族となんかあったから
誕生日が嫌いになったの?」


「まあ、そんな感じです
親に捨てられたんで」


「捨て・・・られた??」


よっぽど衝撃的だったのか先輩は驚いた表情で俺を見る
家族から愛情をうけて育った先輩には捨てられたと言うことが
どういうことなのかわからないのだろう


「そうですよ
親から捨てられたんです
母親からも父親からも」


「そんな・・・・・・」


「生まれてから誰にも祝われたことないし
誕生日に限って嫌なことが起こるので祝われる気にもなんないんです
今も実際嫌なこと起きてるし」


先輩が暗い表情をするからその空気を紛らわせるため笑いながら冗談を言うと、先輩は俺から顔を背ける

これは・・・ちょっと言い過ぎた?冗談通じなかった?


「あの先輩・・・?
今のは・・・」


冗談だったと言おうとすると先輩が勢いよく立ち上がり
自分の鞄を持って走って屋上から出ていってしまった


は??そんなに怒ることだった??
 
最初は嫌だと思ってたけどなれていくうちに別に嫌ではなくなっていた自分に気づく

本当に帰ってしまったのか?
確認しようにも連絡先を知らない

自分勝手だろ
誘っといて帰るとか…
それか俺の態度があまりにも気に入らなかったのかもしれない


そもそもこんな奴に構ってくるあの人もおかしい
振ったら普通傷ついて距離置いてきたりするけど、あの人みたいなパターンは初めてだ


帰ろうかと思ったけどベンチから立ち上がるのがだるく感じる
背もたれに寄りかかり特に何かをするわけでもなく目の前の夜景を眺めた


そっと目を閉じると瞼の裏に映し出される幼い頃の記憶
いっそ記憶喪失にでもなって全ての事を忘れたい
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