240 / 256
5
しおりを挟む僕は拳をギュッと握りしめて、河田君のことを断ち切るという意味を込めながら言葉を放った。
「ダメだよ、僕たちだって女の子狙ってるんだからさ。」
無理に笑顔を浮かべて、最後の方の声はもう消え入りそうになりながらも言い切った。
河田君は一瞬だけ目を丸くした後、興味なさげな顔をした。
「…ふうん」
「そうだ!千秋!よく言った!」
雅也は笑顔を浮かべながら、僕の肩に腕を回してくる。
雅也の知り合いの後輩は僕をじっと見つめる。
「なんか見た目と違って肉食なんすね!意外!
じゃあ今度合コンあるとき絶対誘ってくださいね!臣行こうぜ」
「じゃあ、勝手に着いて行くんで。」
「え?!」
さっきので折れたかと思っていたら、そんな簡単ではないようだ。
「は?!何言ってんの!
だからダメだって」
雅也が河田君の言動に焦りの表情を浮かべる。
「今日、同席させてくれたらあいつら紹介しますけど」
河田君が指差した方向には、一緒にいた女の子達がいる。それに遠目から見ても可愛いことがわかるほどのレベルだ。これは嫌な予感がする。
「…まじ??」
「マジです」
「しょうがないなあ、じゃお今回は…」
「待ってよ!人数だって決まってるんでしょ!
その分、誰かを省くってことなら僕が抜けるよ!」
こんな気まずい状況になるくらいなら自分が抜けた方がマシだと思った僕は咄嗟に提案した。
「だめだ!誰のために開いた合コンだと思ってんだ!お前の失恋慰め合コンだろ!」
失恋というワードを強調していう雅也。
本気でこの場から逃げ出したくなった。何でこんな地雷を踏むワードばかりを言ってくるのだろう。
「へえ、失恋したんですね」
河田君はその失恋相手が自分だということに気づいているはずだ。冷や汗のようなものが一筋背中をツーッと伝う。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
646
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる