上 下
250 / 256

15

しおりを挟む


そこには舞さんが立っていた。雅也が舞さんの元へと歩み寄っていく。


「舞、どうした?誰かに用でもあんの?
それとも俺に用があんの?放課後ならあいてるけど」

「誰があんたを誘うの?」


舞さんは刺々しい言葉を吐いた後、僕へと視線を移す。


「千秋」

「どうしたの?舞さん?」

「ちょっときて」


袖を引かれて廊下へと連れて行かれてる。周りを見渡すと静かに話し始めた。


「あの…今日って空いてる?」 


僕の袖を掴みながら上目遣いで聞いてくる。
舞さんの噂をする男たちが小さくて愛らしくて守ってあげたくなるということを言っていたけどよくわかるような気がする。


「今日?
ごめん、今日は図書委員の当番になってるから空いてないんだ」

「そうなんだ…」

「ごめんね、また別の日にでも」

「わかった…
でも、ちょっとだけ…」


舞さんは小さく呟くと、僕の腰の周りに腕をゆるく回して少しだけ体を寄せてきた。


「ま、舞さん??!どうしたの??!」

「別になんでもない」


一瞬だけ腰にまわる腕に力を込めたかと思うとすぐに離れていく。


「じゃあ、またね」


戸惑う僕をおいていって、舞さんは肩を落として廊下を歩いていく。
一体どうしたのだろう。嫌なことでもあったのかと心配になる。それになぜ抱きついてきたのだろう。

疑問が残ったまま教室に戻ると、雅也に何を話したのかしつこく聞かれた。けど、舞さんみたいな人が僕みたいなやつを誘って、それだけじゃなくてその誘いを断ったなんて知られたら変な噂が流れそうだと思ったため何も言わなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,230pt お気に入り:1,129

不撓不屈

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:198pt お気に入り:1

オレはゲイじゃない

Rei
BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:10

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:156pt お気に入り:348

憂鬱喫茶

ホラー / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:0

悪の組織の一番の嫌われ者のパートだ

青春 / 連載中 24h.ポイント:284pt お気に入り:17

川と海をまたにかけて

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

祭囃子と森の動物たち

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:1

処理中です...