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幸せな日々
しおりを挟むあの出来事があって以来、伊織は繋がっていた女を全てきり、自分と関係を持っていた若い女中は暴君ぶりを発揮して全員解雇するといった。
流石に恵麻はそこまでしなくていいと止めたが、時すでに遅しその時には関係を持っていた女中は全員姿を消していた。
伊織の父、そして金剛家の人間は伊織と恵麻が再び一緒に暮らすことにまるで納得のいっていなかったが、伊織は有無を言わせかった。
伊織は恵麻と住めないというのであれば家を出て金剛家とは縁を切ると言った。
稼ぎ頭の伊織がいなくなることは金剛家にとってもかなりのリスクだと感じ、許可をしたまでとは言わないが、父は2人について口を出すことが減った。
その様子みた金剛家の者ももう何を言っても無駄だと諦めがついたようで、恵麻のことについて特に何も言わなくなったのが一番の変化だろう。
「伊織様」
「ん~」
縁側で膝に寝転がりながら間延びした返事をする伊織の頭を恵麻が撫でると気持ちようさそうに目を細める。
今までは全く想像のつかなかった2人の様子。
あれから伊織は恵麻が離れていくことがトラウマとなり、恵麻を逃さないようにとスキンシップを測ることが多くなり、事あるごとに場所を問わず抱き締めたり、キスをしたりする。
「私、伊織様の近くにいれて幸せです」
恵麻の高くも落ち着きのある声が伊織の耳元に響く。
その言葉を聞いて、伊織はフッと口元に笑みを浮かべた。
「当たり前のことやん
恵麻ちゃんは俺のこと大好きやもんな」
「はい、もちろんです」
ふんわりとした笑顔を浮かべる恵麻に伊織は頬へと手を伸ばす。
「えらいべっぴんさんやなあ」
「伊織様がそんなこと言ってくださるなんて嬉しいです
以前は一言も褒めてくださらなかったのに」
「なんや嫌味か?
恵麻ちゃんと離れるくらいなら、あんなんもうする意味ないねん」
「では、私の我儘聞いてくださいますか?」
「おう、何でも言ってええよ」
今までは聞くことがなかった
伊織の柔らかいの声が心地よい。
「私は伊織様にすごく依存しているのです
伊織様も私にもっと依存してください」
相手を縛りつけるような言葉。
これは伊織が一番嫌うようなものだ。
だが、伊織はその言葉に不満げな表情を一切見せることなく、むしろ笑みを浮かべた。
「上等やん
その言葉に後悔しても知らんからな」
「はい、後悔なんていたしません」
伊織は恵麻の後頭部に手を回すと、その頭を自分に近づけてキスをした。
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