冴えない女なのに美男子に言い寄られてます。

ぽぽ

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環side

今回の合コンが開催されるきっかけは少し前、先輩とバーに飲みに行った際、その時たまたま隣に座っていた優香さんから声をかけられた。


「あの…すっごくカッコいいですね?
もしかしてモデルとかですか?」


こう声かけられるのは珍しいことではないが、素直に答えていいものなのかと毎回悩んでしまう。

有名でないことは自覚しているから、気取っているつもりはないけど、今の時代、どんな噂話を流されるかわからない。返事に困っていると、隣に座っていた先輩が俺の肩に腕を回した。


「芸能活動やってますよ~
こいつすんごいカッコいいでしょ?雑誌の編集者のお気に入りなんですよ」

「へえ、そうなんだ!すごい!
どんな雑誌に載ってるのか教えて!あとSNSとか!」

「それはちょっと…」


距離をとりながら質問を返すも、先輩はそんな彼女を気に入ったようで話が盛り上がっていく。

名前は優香というらしい。優香さんが酒に酔ってきたのか、突然彼氏が欲しいなんて言い出した。
美人なのに彼氏いないんだと思ったけど、よく話を聞いてみると別れる予定とのこと。

適当に話を聞いていた俺だったけど、先輩が耳打ちして俺に伝えてくる。


「環、いっとけば?
一般人にしてはかなり美人だし、いいんじゃね?
事務所のやつも普通に遊んでるよ」


既に同棲中の彼女がいる先輩は、最近浮気していたことがバレて、まだ許されていないため、優香さんには手を出せないようだった。

俺は最近、彼女という存在が面倒に感じて恋人は作らず、程よく遊んでいる身だ。事務所も派手に遊ばなければいいというくらいでしかセーブをかけてこない。

そこから流れるように優香さんと合コンをするという話になった。

後日、高校時代からの友人である蓮介と大学で行動を共にする裕也に話を持ちかけると暇だからいいよなんて言われてメンバー集めもすぐに完了した。

美人な優香さんの友達だからと少し期待したが、いざ、女性側のメンツを見てみると、一人だけ本当に優香さんの友達なのかと疑いたくなるような人がいた。

地味な服装に、顔を隠しそうなほど長い前髪、極め付けには太っているときた。

優香さんは自分をよく見せるためにこの人を連れて来たのかもしれないけど、もうちょっとマシな人を連れて来て欲しかったと心の中でため息をつく。

今まで何人かの年上女性と遊んだり、付き合ったりしたことがあったため、相手が年上であることに特に抵抗はないけど、この人に関しては色気のかけらもない。
優香さんの友達だからって期待しすぎた俺も悪いけど。

その人をみた蓮介と裕也の表情を見てみると、きっと俺と同じようなことを考えていたんだろう。2人して不満げな表情を浮かべていた。
2人と順番に目を合わすと、裕也から3人のグループにメッセージが送られてきた。

“環くん??
美人がくるっていってたよね?”

”二人は美人連れてきたよ
俺もこんなレベルの人連れてくると思ってなかった“

すると、蓮介からもメッセージが送られてくる

“端っこ残念すぎでしょ。”

“俺も驚いてる
俺は優香さんからいい子連れていくよとしか言われてないよ”


すかさず裕也から返信が送られてくる。


“あの様子だと人数合わせというか、女はがモテようとしてあえて自分よりレベル下のやつ連れてくるってやつでしょ。女って怖いね。”


蓮介と裕也はあからさまにあの人に話しかけない。

女が怖いなんて言ってたけど、お前らも十分怖いよなんて思いながら、流石に不憫に思えて来た俺は、1人で飲み食いしてるハズレの人に声をかけにいったけど、話は弾まず気まずい空気が流れるだけ。

せめて、中身は明るいとかの要素があれば救いがあったのに。

時間も経つに連れ、5人で話も盛り上がっていき、あの人に話を振ってみるもやっぱり返事はイマイチな反応ばかり。

おそらく人数合わせと利用されるために連れてこられて、居心地悪いのだろう。可哀想だという同情まで湧いてくる。

そんなことを考えていると裕也に肩を叩かれた。


「ちょっと一旦席はずそ」

「何で?」

「いいから」 


きっと作戦会議に行きたいのだろう。

裕也がタバコに行ってくるといい3人で部屋の外に出る。向かった先は店の中にあった喫煙所だった。

俺はタバコを既に辞めているが、匂いにも特に抵抗はないし、喫煙所の中は誰もいなかったため共に喫煙所に入る。


「何?作戦会議?」

「それもそうだけどさ、俺良いこと思いついちゃって
この前3人で遊んだ時、環ダーツ負けたじゃん」


裕也はポケットからライターとくしゃくしゃに潰れたタバコの箱を取り出し、口元に一本咥える。
それをみた蓮介が裕也に向かって手を伸ばした。


「裕也~、俺も一本」

「はいはい
てか、お前禁煙するいうてたじゃない」

「そうだっけ?」


裕也は箱から一本取り出し、蓮介に渡すと、蓮介が口元に咥えたタバコに火をつける。


「で、ダーツで負けたのがどうした?」

「その時、罰ゲーム保留にするって言ったじゃん?」

「うん、そう言ってたな」


そういえばあの時、思い付かないとか言って罰ゲームの内容を保留にされていた。
1ヶ月ほど前のことであるため、すっかり忘れていた。

罰ゲームの内容なんて、裕也のことだから何となくはわかる。

どうせ1週間昼飯奢りとかだろう。悪い方でいっても飲み代奢りとかだ。
もうすぐ給料もでるし、学食くらいなら全く問題はない。


「あのおデブちゃんを落としてみてよ
それでさ、三ヶ月付き合って」

「「は?」」


俺と蓮介の声が重なる。


「だってあの人さ、恋愛経験なさそうじゃん。
そんな人がさ、環みたいなやつが落としたら面白そうじゃん。
なんかこう間近でドラマ見てるみたいな!俺の女友達が最近、そんなドラマ見てたんだよなあ。」


興奮気味に話す裕也の横で俺は呆気に取られてしまう。蓮介も興味を持ったのか話に乗っていく。


「何それおもろそう。
何話構成にする?それともシリーズものにする??」


こいつら人ごとだからって、好き勝手言いやがって…。
確かに面白そうだけど、俺は絶対傍観者でありたい。当事者になるなんてごめんだ。
流石にあの人では、俺の中で何も刺激されない。


「ちなみに落とせなかったら、俺に服買ってね。
まあ今考えてるのだと十万以上は確実」

「は?!なんでだよ?!罰ゲーム重すぎだろ!」

「まあ、そう言わずに罰ゲームする約束なんだからさ。
環君は約束を破るような小さい男には見えないけどなあ。
それにさ、罰ゲームでなんでもするって言ったの誰だっけ?」


裕也が肩に腕を回す。
酒に酔って聞いていないだろうと適当に言った言葉をまさかここで出されるかと思わなかった。


「そのかわり環が見事に落とせたら、俺が代わりに服買ってやるから。十万以上。」

「え??まじ??」


さっきまであんなに嫌がっていたのに、すぐに釣られる俺はあまりにも単純だ。

それだったら悪くない話かもしれないなんて思えてくる。
苦痛な時間が続いた先にはちゃんと褒美が待っているというなら頑張る価値もある。


「お?興味出てきた?」

「まあ…落とすだけで景品が手に入るなら…」

「そんなこと言っちゃって自信満々じゃん。さすがイケメンだ。」


蓮介がニヤつきながら、タバコ煙を天井に向かって吐き出した。


「まあ、そこまで難しくはなさそうかなって」

「やっぱ?環のその顔が自信ありげだもん
じゃあ、俺が恋路を邪魔しちゃおうかななんて」


蓮介が楽しげにそんなことを言い出す。


「は?何で?」

「理由は簡単です。そのほうが面白いからです。」

「君はよくわかってますね。私の助手に任命しましょう。邪魔をして俺の十万の支出を阻止しなさい」

「わかりました。教授」


裕也が差し出した手を、蓮介が握り2人の間で意味のわからない協定が結ばれたようだった。


「はあ…勝手にやってろ」

「まあ、頑張れって」


蓮介は俺を励ますように肩をぽんぽんと叩く
こいつのせいで余計に面倒臭くなりそうだというのに。


「ちなみに期間は三ヶ月あれば十分でしょ
環のことだからどうせすぐ落とせそうだから…」


裕也は顎に指を当てて何かを考え始める。


「あ、やっぱ4ヶ月付き合うでいいや
恋を芽生えさせないと。」

「は?!そんな話聞いてないんだけど!それに何勝手に期間延長してんの。」

「そりゃ、今決めたルールだし」


こいつが咥えるタバコを摘んで、口の奥に押し込めたくなる。お前が罰ゲームの時は覚悟しとけよと密かな復讐心が芽生えた。


「流石に無理。罪悪感すげえし。
それにお前、あれ見たでしょ?逆にお前はあの人相手になんか湧いてくるものとかあるの?」

「別にセックスもキスもしなきゃいいじゃん
手繋ぐくらいは最悪して欲しいけど」

「それ付き合うって言うの??」

「まあ、いいんじゃない?
たかが遊びだし」


蓮介が絶妙なところでいらない言葉を言ってくる。


「じゃあ、はい!
罰ゲーム開始~」


裕也は憎たらしい笑みを浮かべて始まりを告げた。

あまり乗り気ではないが、こうなったら拒否なんてできないだろう。考えている間に裕也達のタバコが吸い終わり部屋に戻り、2次会の場所について話し出す。

けど、あの人は帰ると言い出したため、どうしようかと頭の中で思考を巡らせていると蓮介と裕也がニヤニヤした顔で俺を見つめていた。

こいつら…。
あのの人がテーブルの上に金を置いて部屋を出て行ってしまう。
俺はしばらく考えて、後からに2次会の会場に行くと伝えて、あの人を追いかけた。

あの人なら寄り道せずにすぐ帰りそうだし、駅に向かっているか。
そう考えて駅に向かって走っていくと、大きく丸まった背中が見えた。

走るスピードを緩めて息を整えながら、話しかけると、目が飛び出そうなほど目を見開いて驚いていて俺自身も困惑してしまった。

忘れそうになっていた名前を慎重に思い出す。ユイさんだ。
ここで名前を間違えてしまったら気がないということがバレてしまうかもしれない。

メッセージアプリの連絡先を交換したが、ユイさんは早くその場を後にしたいようで、俺と軽く会話を交わすとすぐに駅のほうへと向かっていった。

送ると言って断られたのは初めてだし、何だかそっけない対応を女性にされたのも初めての経験で少し戸惑った。

あの人簡単に落とせるかな。
さっきまでの自信とは異なり、少し不安を感じつつも俺は2次会の場所へと向かっていった。
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