冴えない女なのに美男子に言い寄られてます。

ぽぽ

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ふと横にある水槽に目を向けると、目を奪われるほど綺麗な色をした魚が泳いでいた。
照明に反射して、青とも紫ともつかない鱗がきらきらと光っている。

「……綺麗……」

思わず声が漏れた、その瞬間。

「なにが?」

「わっ!」

急に真横から声がして、心臓が跳ね上がる。
顔を向けると、至近距離に蓮介くんの顔があって、思わず一歩引いてしまった。

「そんなに驚くことなくない?」

蓮介くんは、どこか面白そうに、少しバカにしたような表情で私を見る。

この年で恋愛経験もほとんどないんだから、こんな年下のイケメンが急に距離を詰めてきたら、驚くに決まってる。

私は一旦距離を取り、さっきまで見ていた魚を指差した。

「綺麗だなって思って……」

「そう? 俺、何にも感じないけど」

興味なさそうにそう言って、蓮介くんはすぐ水槽から視線を逸らした。
随分あっさりした反応だ。

きっと、環くんと同じで、彼女が行きたいって言ったから付き合って来ただけなんだろう。
そう思うと、少しだけ納得がいった。

「それにしても、環はよく耐えられるなあ」

「え?」

「いや、何でもないっす」

蓮介くんは話を切り上げるように言うと、別の方向を指差した。

「あっちの方も見に行きましょ」

「でも……そっちだと、伊藤くん達と離れちゃわない?」

私がそう言うと、蓮介くんは軽く肩をすくめた。

「大丈夫っすよ。俺がちゃんと見てるから。あいつら、目で追ってるんで」

本当かどうか分からなかったけれど、蓮介くんの言葉を信じて、私はその後をついて行った。

「てか俺、昔から海外と日本を行き来してるんで、敬語ってあんまり慣れてなくて、基本タメ口になるかも」

海外と日本を行き来している、さらっと言うけれど、それだけで一気に世界が広がる気がした。

「全然大丈夫」

「私も、いつの間にかタメ口で話してたし……」

「ならよかった。周りの大人、うるさいから……とか言って、俺ももう大人だけど…とりあえず、こっち」

言われるがままについて行くけれど、歩く方向がどんどん伊藤くん達とは逆になっている気がする。

不安になって周囲を見渡すと、もう二人の姿は見えなかった。

「あの……蓮介くん」

「ん? なあに?」

呑気な返事。
本当に見ていたんだろうか。

「伊藤くん達が、見えなくなっちゃって……」

「あ、本当だ」

驚く様子もなく言う蓮介くん。
私は慌てて携帯を開くと、ちょうど伊藤くんから着信が入っていた。

折り返そうと通話ボタンに指を伸ばした、その時。

「ねえ、ユイさん」

「……なに?」

「ユイさんって、環のこと好きなの?」

「え……?」

「だってさ」

「環を見るユイさんの目、俺を見る時と全然違う」

「そ、そうかな……?」

誤魔化すように笑う。

「うん。わかりやすいくらい」

胸の奥が、少しだけざわついた。

確かに。
初めて会った時と比べて、伊藤くんに対する気持ちは、もう誤魔化せないほど変わってきている。

そのことを、他人に指摘されるなんて思ってもいなかった。
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