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しおりを挟む入学してから数日が経った。
光の姿を時折見かけてはいたが、ただ遠くから見つめることしかできなかった。話しかける勇気などとても持てない。
いつも友人たちに囲まれて、自然体のように見える綺麗な笑みを浮かべている。周囲を惹きつけるその笑顔を、いつか自分にも向けてもらえたらそんな淡い願いを抱くこともあった。
だが、それはきっと叶わない夢にすぎないと、心のどこかで理解していた。
一方で、朝陽自身の学生生活は誰もが思うようなキラキラした生活ではなかった。
入学早々、クラスメイトたちは次々と友達を作り、あっという間に小さな輪を築いていく。だが、もともと友人関係を築くのが得意ではない朝陽は、その流れに上手く乗ることができなかった。声をかけられても、どう返せばいいかわからず、ただぎこちなく笑うばかり。結果として「ノリの悪いやつ」という烙印を押され、次第に誰も話しかけてこなくなってしまった。
孤立。
朝陽は「仕方ない」と割り切ろうとした。割り切らなければ、やりきれないからだ。
そんなある日。次の授業が移動教室だったため、朝陽は教科書を抱えて廊下へ出た。クラスメイトたちが連れ立って歩いていく中、朝陽は少し遅れて一人で教室を出る。足音が響く廊下の冷たさが、なぜかやけに身に染みた。
その時。
「おい、もやし」
扉のすぐそばに立っていた男子生徒が、苛立ちを含ませたような声を投げた。クラスの中心にいる目立つ存在の一人だ。呼ばれた誰かを探すように、周囲の生徒が笑いを含ませながら視線を向ける。
一瞬、朝陽は立ち止まった。だが自分が呼ばれたはずはないと思い直し、そのまま歩き出そうとした。友人のあだ名か何かだろう、と。
「おい、もやし!無視すんなよ」
再び呼ばれる声。朝陽は反射的に振り返った。
「……?」
「お前のことなんだけど、もやし」
男子生徒は薄笑いを浮かべ、仲間たちはクスクスと笑い声を立てる。その瞬間、朝陽はようやく理解した。自分が「もやし」と呼ばれているのだと。
「もやしって……僕のこと?」
信じられない気持ちで問い返すと、男子生徒は肩をすくめて当然だと言わんばかりに言った。
「そうだよ。白くてほっせーのお前しかいねーだろ。なぁ、これ持ってってくれよ。次の教室でさ、俺たちの分の席、後ろのほう確保しといて」
差し出された数冊の教科書。積み重ねると結構な重さになる。
「あの、えっと……」
戸惑う声しか出てこない。だが、頭の中では理解していた。これは所謂“パシリ”だ。従えば、この先もずっといいように扱われ続ける。だが、拒めばきっとそれはそれで、今度は露骨ないじめが待っているかもしれない。どちらに転んでも、結果は暗い。だが、ここで素直に受け止めるのは違う気がした。
手のひらが汗でじっとりと濡れ、心臓が不規則に脈打つ。無意識に拳を握りしめ、肩に力が入った。伸ばしかけた手を、途端に引っ込める。
「……自分たちで…もって…けば…いいんじゃない?」
朝陽の声は小さくて男子生徒たちにはところどころしか伝わらない。
「は?なんて?」
「自分たちで持っていけばいいんじゃない…かな」
男子生徒たちの顔に一斉に不快の色が浮かぶ。お前如きが逆らうのかとでも言いたげな表情だ。
「お前、何言ってんの?」
「そうだよ、いいから持ってよ~。席取られちゃうじゃん」
男子は鋭い視線で睨みつけ、女子はふざけた調子で駄々をこねる。その圧力に朝陽は負けそうになった。そして、反抗しなければ良かったという後悔も少し浮かぶ。
その時だった。
「じゃあ、俺が持ってってあげよっか?」
背後から、落ち着いた声が響く。場の空気を一変させるような響きだった。朝陽はその声を聞いた瞬間、間違えようがないと直感した。
「……光?!」
男子生徒の一人が驚いたように声を張り上げる。
それはあの時の眩しい彼だった。
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