女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

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春は出会い……

入部案内とSR20DET

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 遂にスカイラインと比較対象として、よく名前の出てくるシルビアの部車がやって来たよ。
 え? イチヨンゼンキだって? 待て待て、もう以前の私じゃないから、この手の呪文っぽい隠語に惑わされたりしないぞ。 
 R32がサンニーなんだから、きっと、このシルビアは『なんとか14型』に違いない。ゼンキは、きっと前期の事で、前期型の事を指しているんだろう。

 どうだ……やっぱりだ。正解は、S14前期型の事らしい。
 シルビアとしては6代目のモデルで、1993年10月から、1998年いっぱいまでの期間の販売で、前期は1996年6月までの物らしい。
 正確には、1995年6月以降の物は、中期と言われるんだけど、そこまで見分けるのはマニアだけなので、ざっくり前期と後期、という認識で良いらしいよ。

 うん、今日は基本整備で、オイルとフィルター交換と、プラグチェックだね。……そしたら、悠梨と2年生の一部で、リアシートの取付と、内装のチェックをやって貰おうかな。

 悠梨以外の3年生で、エンジンルームを覗いてみる。
 うん、スッキリしてるね。
 エンジンがちょっと短いよ。でも、教習車のR32の4気筒車は、妙に短かすぎる感じがするけど、このシルビアの4気筒は適度に詰まってるよ。

 そして、プラグチェックが、凄く簡単だよぉ。
 R32と同じで、ダイレクトイグニッションコイルを使っていて、プラグの所に蓋もされてるんだけど、R32みたいに、プラグの上をパイプが跨いでないから、純粋にプラグを外してチェックするだけの作業ができるよ。
 R32は、1人で作業すると、プラグに到達するまで30分かかるけど、シルビアなら5分かからないんだよ。

 プラグは見たところ、白っぽいし、ちょっと錆びてるから、交換した方が良いね。
 エアクリーナーは、このキノコ型は社外品だけど、これも、フィルター交換した方が良いよね。え? このタイプは専用の洗浄キットがある? ふーん、じゃぁ、それを買ってくれば良いんだね。

 じゃぁ、オイルを交換しちゃおう。フィルターも、水野が用意してくれてたみたいで、あったのさ。
 オイル交換の要領は、R32と何も変わる事がないから、すんなりとできちゃったよ。フィルターも、ほぼ似たような位置だったから、難しい事もなく、あっさり終了しちゃった。

 タイヤの空気も見たし、それじゃぁ、早速走ってみようよ。
 え? 私が、そんな事を言い出してくるなんて珍しいって? いいじゃん、別に私が言ったってさ。
 よーし、いつもの練習場で、早速シルビアの走りを試しちゃうぞ……って、なんか、このシートベルト、取りやすくね? シートベルトが、肩の位置あたりまで、アームで延長されてるから、肩を捻って取る必要がないよ。
 へぇ、アーム式シートベルトガイド、っていうんだ。ベルトを取りやすくするための装備で、前の型の、S13の前期でオプション、後期では、主力グレードに標準、S14は、その流れをステイして、S15では、コストダウンで廃止になったんだ。……ふーん、なんか、私らの車にも、なんか似たような仕組みを考えられないかな……なんて思うんだよねぇ。R32は、ドアが長くて、カッコ良いんだけどさ、シートベルトが取り辛くてね……。
 なに? シルビアは、スペシャルティカーって言って、スポーツよりも、お洒落とか、カッコ良さ、助手席に乗る女の子受けを狙って作った車だから、そういう細かな、おもてなしの装備が充実してるんだって? 
 なるほどね。そういう装備に関しては、シルビアの方が、勝ってるってことだね。

 よし、スタートだ。
 おぉ……、柚月、なんかさ、発進から、結構ゆったりとしたトルクが感じられて、速いね。同じ2000ccのターボなのに、この辺りの力感は、圧倒的にシルビアの方が上だね。
 なに? 本来6気筒は、もう少し大排気量で成立させてバランスが取れるものなんだけど、日本は税率の問題で設定しているから、低速が足らなくなるんだって? 同じ2000ccなら、エンジンの効率や、中低速のトルクの問題もあって4気筒の方が、バランスが取れてるって?

 確かに、運転してて神経質な感じが無くて、どこからでも、安心してアクセル踏んでいけそうな力感はしっかりあるよね。
 そして、曲がってみて実感したんだけど、シルビアの方が、すんなり曲がっていくんだけど、ちょっと、8の字やってみよう。
 うん、間違いない。8の字やってみると、特に分かるんだけど、切り返す場所とかでの切り返した感じとかが、軽やかなんだよ。スカイラインが、どっしりしてるのに対して、シルビアが軽やかな感じで、シルビアの方が、ワンテンポ早く曲がっていけるよ。
 え? それはエンジンの重さの問題だって? シルビアのエンジンは、4気筒で、
尚且つアルミブロックだから、軽量なのに対して、スカイラインのエンジンは、重量があるのがネックなんだって?
 なるほどね。一時期の一部のドリフトやってる人の中には、RBエンジンを降ろして、シルビアのSRエンジンに換装する人もいたくらいなんだ……。

 両方乗ってみて思うのは、やっぱり両方の良さってのがあるから、一概には言えないよね。
 曲がりやすくて、低速もしっかりあって、シルビアの乗りやすさは、物凄く感じちゃうよね。
 半面で、エンジンの回ってる感じのスムーズさとか、足回りのどっしりした感じとか、そういう質的な面で見ると、スカイラインの方が好みかなぁ……って感じがしちゃう。まぁ、私の車が、そうだから、っていうのがあって、慣らされちゃってるってのもあるんだけどね。

 う~ん。でも、楽しいよ。もうあと何周かしちゃおう。
 ……やっぱりね、シルビアは、乗りやすいし、走りやすい。
 面白いし、満足しちゃったよ。これから、また部が楽しくなっちゃうような、そんな車だったよ。
 ウチの部にはタイプMもあるから、乗り比べも楽しめるよね。

 よし、他のみんながシルビアに乗っている間に、新入部員に活動案内をしなくちゃね。
 創部間もない部で、色々試しながらやってる最中だから、もし、なんか提案とかがあれば言ってね。検討するから。

 まぁ、部車も複数あるけど、そんな凄い車ってのは、ないからね。
 あのシルビアは、今日入ってきたばかりだけど、見た目があんなだからね。それと、このスカイラインは、ライトが両側バラバラで見た目が怖い、とかね。
 で、コレが、1、2年生が運転を練習する教習車ね。うん、コレは元本物の教習車だから、免許持ってる3年生が同乗して、ヤバくなったら、助手席からブレーキ踏むからね。
 それで、コレが制作中の競技車。このノートで、ジムカーナに、こっちのエッセで、耐久レースに出場する予定だよ。
 え? このノートの、カラーリングがイケてるって? このノートは、元々の見た目は、あのシルビアみたいな感じだったんだけど、あそこにいる渡邉悠梨が、リーダーになって仕上げたんだよ。そこに、塗装ブースも作って、本格的に塗ったんだよ。

 だから、みんなの持ち味を活かして、活動に役立てていってね。
 え? ドリフト走行は、出来ないんですか? うぅ~んとね、まずは、運転の基本から覚えようね。応用はそれからだよ。足し算引き算覚える前に、微分積分は出来ないでしょー。

 今の活動は、競技車の製作と、部車の基本整備なんかがメイン。それと、運転練習ね。
 3年生になって誕生日が来たら、即免許が取れるのが、当面の運転の目標になるかな。基本を覚えたなと思ったら、ちょっとお遊び要素を入れていこうと思ってるよ。

 あ、柚月~。なに、新入部員の案内を、私に押し付けてるんだよ~。え? 私は部長だろって、柚月だって、副部長だろーが。

 そんな感じで、柚月と合流した私の目線の先には、手招きをしている水野の姿があった。


 

 
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