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春は出会い……
制服とアウェーと検査登録事務所
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遂に水曜日がやって来たよ。
朝、いつもより2時間も早く優子を迎えに行くと、柚月と合流して、2台の車で、陸運支局を目指した。
柚月のシルビアが前で、私の車が後ろね。
なにせ、シルビアには、文明の利器であるナビがついてるからさ、安心だよね。
水野曰く、6年前のモデルで、一応、去年バージョンにアップされてるらしいけど、こんな田舎だと、そうそう滅多に道が変わったりしないから、大丈夫だよね。
やっぱり、高速使わないとダメだよね。朝は特に道が混むからね。山を降りたら即高速だろうね。じゃないと、朝一に着かないよ。
柚月、こういう状態なんだから、飛ばしたりしたらダメだからね。もし、こんな状態で取り締まられたら、柚月、停学になるかもよ。よし、出発ね。
山を降りるところまでは空いてて、高速も、ほぼすんなりと行って、陸運局のすぐ目の前までついた時には、まだ40分くらい余裕があったよ。
門も開いてたから、中に入って待ってたんだけど、建物の近くの方が有利じゃね?と思って、2台で陣取ってみたよ。
「車検の時って、ここまで来ないといけないんだね」
優子がしみじみと言って、はぁ~っと、ため息をついた。
まぁね、初回の登録の時は、ここに来ないとナンバー貰えないからね。
継続はさ、近所の認証工場でも、取れるけどね。若しくは、ディーラーとかにお願いするかだね、ホラ、見てよ。
私が指さした先には、続々と、新車や、ナンバーの無い中古車を積んだトラックが入ってきた。
中からツナギ着た、おじさんたちが、たくさん降りてきて、もう、戦場って感じだよね。
私らさ、超場違いじゃね? 制服着た女子高生なんて、私らだけじゃん。
まぁ、警察署や市役所でも、このアウェー感はあったけどさ、それとは、レベルが違うっつーか、なんつーか。
早く来たんだから、今のうちに、残りの書類の記載をしておこう。
事務所の建物が2棟に分かれてるけど、奥の方は、ナンバーとか税金関係でしょ。この車にはナンバーが無いから、手前の方だよ。
そこで、新規登録関係の書類を持って行って、書き方例に従って、書いていけば良いんだよ。
新規検査に丸して、ナンバーは確定してないから空欄。
『原動機の型式』は、SR20と、DETは記載しなくて良いんだ。
『車体番号』は、S14-0※※※※※と。
『走行距離計表示値』は……あっと、え? 12万6千キロだって。1260と。
『予約番号』は、電話で予約した時のだよね。よし記入と。
『前面ガラス』は、有に丸をと。
『受験者の氏名、住所、電話番号』は、優子の名前と住所……と。
「ええっ!? なんで私?」
それはこっちのセリフだよ、優子。
そもそも、何にもしないんだったら、何のために、今日、課外活動扱いにして、ここまで来てるの?
私は、部長として監督と、書類記載、柚月は、車両運搬と整備責任者、そしてマゾヒスト部の部長として……って痛っ、とにかく、優子には、実際のラインの担当として、来て貰ったんだよ。
さて、新規登録申請書は、学校の印鑑が必要だから、既に出して貰ってきてたんだよね……ってか、この辺の用紙って、今はダウンロードできちゃうから、事前に、全部書いておくこともできたんじゃね? と思うんだよね。
ここまで書いて、あと、分からないところは受付で訊いてみよう。
すみませ~ん。
……まだ時間前なのに、かなり親切に教えてくれたよ。
1ヶ所抜けてるところに、丸つけてくれたから、そこを記入して、あとは隣の建物の窓口だって。
ここは主に納税とか、手数料の納付とかなんだね。
ここにかかるお金と、自賠責保険が、車検の基本料金なんだよね。
それ以外は、整備や、部品交換にかかるお金なんだね。
なるほど、こうやって、1回登録や車検をやってみると、何に、どうお金がかかっているのかが分かるよね。
よし、書類をさっきの建物の窓口に提出してくるよ。
確認して貰ったら、OKが出たから、遂に検査ラインに突入だよ~。
◇◆◇◆◇
早くから来てたけど、ちょっと書類の提出に手間取ってたから、検査ラインは結構並んでるね。
優子、同乗不可だから、ラインの中は、優子1人でお願いね。
あ、ラインのおじさんが来た。
はい、自動車部の部車の登録に来ました。
はい、登録も車検も初めてです。よろしくお願いします。
私ら2人は、ラインの見学は出来るから、一緒に連れて行ってくれるって。
ラインの順番を待つ間、ボンネットを開けてるんだね。
あ、また、おじさんが来た。
まずはボンネットを開けて、書類と、車体番号の確認をするんだ。
そして、エンジンの様子を目視して、ウインカー右、左、ライト、ハイビームを確認して閉めて、クラクションが鳴るか、今度は後ろに回って、ブレーキランプが点くかを確認してる。
あれ? なんでおじさんは、ハンマーでホイールを叩いてるの? ホイールナットを叩いて、緩みが無いかを見てるんだって? これで、第1、2段階はOKみたいだよ。ハンコ押してくれた。
じゃぁ、ここから私と柚月は、脇から見学してるからね。優子、頼んだよ。
最初の検査は、サイドスリップだって、あの板の上を、ハンドル切らずに真っ直ぐ通過して、横滑り量を見る検査か、これがダメだと、アライメント狂いが疑われるけど、実際には、トーのずれが見られているので、トーを思いきり内側に向けると引っかからないらしい。
ちなみにトーってなに? え? つま先の事だから、考えれば分かるだろって? いや、分かんないし、タイヤの前端側の事で、トーインだと、内股っぽくなって、トーアウトだとガニ股みたいな感じと解釈しておけば、私レベルなら問題ないって?
なんか、いちいちムカつくなー! 柚月、ここで1回パンツ脱ぐ? 参っただって?
あ、『〇』がついた。どうやら、サイドスリップは合格みたいだよ。
次は、移動してブレーキの検査だね。
あそこで前輪を合わせて止まって、OKが出たら、指示に従ってブレーキとサイドブレーキをかけるのか。
あ、両方『〇』だ。ここも合格だね。そうだよね、オーバーホールしたもんね。
場所はそのままで、今度はスピードメーターの検査だ。
そうか、あのローラーの上を走らせてれば、車は前に飛び出さないって事だね。40キロになったらパッシングなんだ。
よし、『〇』だ。ここも合格だね。スピードメーターなんて、今日中にはどうにもならないもんね。良かった。
次は、移動してライトの検査か。
昔は、ハイビームで検査してたんだけど、今は、ロービームで検査するんだって。
機械が移動してきて、検査するんだ。高さと明るさが見られてるんだ。確かに妙に上にズレて眩しいのとかいるもんね。
あれ、『×』だよ。ダメだって、柚月、どこがダメだったんだろう?
「どうダメだったかは、あとで検査官から説明があるから」
分かりました。
良かったぁ、どうダメだったか分からないと、ライトの場合、直しようがないもんね。
バルブ交換したばかりだから、明るさが足りないって、ことはないだろうから、そうなると光軸かな。
ここで1度車から降りて、機械で、紙に記録するんだね。
で、次はちょっと前に移動して、排気ガスの検査か。
そこにある管を、マフラーの中に突っ込んで、CO(一酸化炭素)と、HC(炭化水素)の濃度を測るんだね。
よし、『〇』だ。良かった。ここなんて、ダメだったら、どうにもならないからね。
排気ガス検査が終わるとまた記録するんだね。
そして、次が最後の下回り検査なんだ。
なんか、部のガレージみたいに、真ん中が低くなってる所に行って、止まるんだね。
なんか前にいるヴェルファイアが、マイクで言われてるよ。
聞こえてきたのは、床から何かが垂れ下がってるのと、左ブーツが破れてるみたいだよ。
どしたの、柚月、何がおかしいの? え? そんな指摘されるって事は、そもそも、何の整備もせずに、ここに来てるとしか思えないって?
あ、優子が行ったよ。どうなんだろうね。
まずは、ブレーキをかけずに止まって、ブレーキを踏んで、離して、その間、下から頭が出てきてるから、下から見られてるんだね。
そして、車がゆさゆさ揺れてるよ。
あれは、床がそういう構造になっていて、何かが落ちてきたりとか、緩んでたりとかを見てるんだって?
あ、『〇』だよ。そして、また記録するんだね。
最後は出口のところの、総合判定室ってところに行くんだね。
優子がそこで紙を渡して、色々と説明を受けて、用紙を返却されてるよ。
よし、S14が出てきたから、私らも、優子のいる場所に行こうよ。
朝、いつもより2時間も早く優子を迎えに行くと、柚月と合流して、2台の車で、陸運支局を目指した。
柚月のシルビアが前で、私の車が後ろね。
なにせ、シルビアには、文明の利器であるナビがついてるからさ、安心だよね。
水野曰く、6年前のモデルで、一応、去年バージョンにアップされてるらしいけど、こんな田舎だと、そうそう滅多に道が変わったりしないから、大丈夫だよね。
やっぱり、高速使わないとダメだよね。朝は特に道が混むからね。山を降りたら即高速だろうね。じゃないと、朝一に着かないよ。
柚月、こういう状態なんだから、飛ばしたりしたらダメだからね。もし、こんな状態で取り締まられたら、柚月、停学になるかもよ。よし、出発ね。
山を降りるところまでは空いてて、高速も、ほぼすんなりと行って、陸運局のすぐ目の前までついた時には、まだ40分くらい余裕があったよ。
門も開いてたから、中に入って待ってたんだけど、建物の近くの方が有利じゃね?と思って、2台で陣取ってみたよ。
「車検の時って、ここまで来ないといけないんだね」
優子がしみじみと言って、はぁ~っと、ため息をついた。
まぁね、初回の登録の時は、ここに来ないとナンバー貰えないからね。
継続はさ、近所の認証工場でも、取れるけどね。若しくは、ディーラーとかにお願いするかだね、ホラ、見てよ。
私が指さした先には、続々と、新車や、ナンバーの無い中古車を積んだトラックが入ってきた。
中からツナギ着た、おじさんたちが、たくさん降りてきて、もう、戦場って感じだよね。
私らさ、超場違いじゃね? 制服着た女子高生なんて、私らだけじゃん。
まぁ、警察署や市役所でも、このアウェー感はあったけどさ、それとは、レベルが違うっつーか、なんつーか。
早く来たんだから、今のうちに、残りの書類の記載をしておこう。
事務所の建物が2棟に分かれてるけど、奥の方は、ナンバーとか税金関係でしょ。この車にはナンバーが無いから、手前の方だよ。
そこで、新規登録関係の書類を持って行って、書き方例に従って、書いていけば良いんだよ。
新規検査に丸して、ナンバーは確定してないから空欄。
『原動機の型式』は、SR20と、DETは記載しなくて良いんだ。
『車体番号』は、S14-0※※※※※と。
『走行距離計表示値』は……あっと、え? 12万6千キロだって。1260と。
『予約番号』は、電話で予約した時のだよね。よし記入と。
『前面ガラス』は、有に丸をと。
『受験者の氏名、住所、電話番号』は、優子の名前と住所……と。
「ええっ!? なんで私?」
それはこっちのセリフだよ、優子。
そもそも、何にもしないんだったら、何のために、今日、課外活動扱いにして、ここまで来てるの?
私は、部長として監督と、書類記載、柚月は、車両運搬と整備責任者、そしてマゾヒスト部の部長として……って痛っ、とにかく、優子には、実際のラインの担当として、来て貰ったんだよ。
さて、新規登録申請書は、学校の印鑑が必要だから、既に出して貰ってきてたんだよね……ってか、この辺の用紙って、今はダウンロードできちゃうから、事前に、全部書いておくこともできたんじゃね? と思うんだよね。
ここまで書いて、あと、分からないところは受付で訊いてみよう。
すみませ~ん。
……まだ時間前なのに、かなり親切に教えてくれたよ。
1ヶ所抜けてるところに、丸つけてくれたから、そこを記入して、あとは隣の建物の窓口だって。
ここは主に納税とか、手数料の納付とかなんだね。
ここにかかるお金と、自賠責保険が、車検の基本料金なんだよね。
それ以外は、整備や、部品交換にかかるお金なんだね。
なるほど、こうやって、1回登録や車検をやってみると、何に、どうお金がかかっているのかが分かるよね。
よし、書類をさっきの建物の窓口に提出してくるよ。
確認して貰ったら、OKが出たから、遂に検査ラインに突入だよ~。
◇◆◇◆◇
早くから来てたけど、ちょっと書類の提出に手間取ってたから、検査ラインは結構並んでるね。
優子、同乗不可だから、ラインの中は、優子1人でお願いね。
あ、ラインのおじさんが来た。
はい、自動車部の部車の登録に来ました。
はい、登録も車検も初めてです。よろしくお願いします。
私ら2人は、ラインの見学は出来るから、一緒に連れて行ってくれるって。
ラインの順番を待つ間、ボンネットを開けてるんだね。
あ、また、おじさんが来た。
まずはボンネットを開けて、書類と、車体番号の確認をするんだ。
そして、エンジンの様子を目視して、ウインカー右、左、ライト、ハイビームを確認して閉めて、クラクションが鳴るか、今度は後ろに回って、ブレーキランプが点くかを確認してる。
あれ? なんでおじさんは、ハンマーでホイールを叩いてるの? ホイールナットを叩いて、緩みが無いかを見てるんだって? これで、第1、2段階はOKみたいだよ。ハンコ押してくれた。
じゃぁ、ここから私と柚月は、脇から見学してるからね。優子、頼んだよ。
最初の検査は、サイドスリップだって、あの板の上を、ハンドル切らずに真っ直ぐ通過して、横滑り量を見る検査か、これがダメだと、アライメント狂いが疑われるけど、実際には、トーのずれが見られているので、トーを思いきり内側に向けると引っかからないらしい。
ちなみにトーってなに? え? つま先の事だから、考えれば分かるだろって? いや、分かんないし、タイヤの前端側の事で、トーインだと、内股っぽくなって、トーアウトだとガニ股みたいな感じと解釈しておけば、私レベルなら問題ないって?
なんか、いちいちムカつくなー! 柚月、ここで1回パンツ脱ぐ? 参っただって?
あ、『〇』がついた。どうやら、サイドスリップは合格みたいだよ。
次は、移動してブレーキの検査だね。
あそこで前輪を合わせて止まって、OKが出たら、指示に従ってブレーキとサイドブレーキをかけるのか。
あ、両方『〇』だ。ここも合格だね。そうだよね、オーバーホールしたもんね。
場所はそのままで、今度はスピードメーターの検査だ。
そうか、あのローラーの上を走らせてれば、車は前に飛び出さないって事だね。40キロになったらパッシングなんだ。
よし、『〇』だ。ここも合格だね。スピードメーターなんて、今日中にはどうにもならないもんね。良かった。
次は、移動してライトの検査か。
昔は、ハイビームで検査してたんだけど、今は、ロービームで検査するんだって。
機械が移動してきて、検査するんだ。高さと明るさが見られてるんだ。確かに妙に上にズレて眩しいのとかいるもんね。
あれ、『×』だよ。ダメだって、柚月、どこがダメだったんだろう?
「どうダメだったかは、あとで検査官から説明があるから」
分かりました。
良かったぁ、どうダメだったか分からないと、ライトの場合、直しようがないもんね。
バルブ交換したばかりだから、明るさが足りないって、ことはないだろうから、そうなると光軸かな。
ここで1度車から降りて、機械で、紙に記録するんだね。
で、次はちょっと前に移動して、排気ガスの検査か。
そこにある管を、マフラーの中に突っ込んで、CO(一酸化炭素)と、HC(炭化水素)の濃度を測るんだね。
よし、『〇』だ。良かった。ここなんて、ダメだったら、どうにもならないからね。
排気ガス検査が終わるとまた記録するんだね。
そして、次が最後の下回り検査なんだ。
なんか、部のガレージみたいに、真ん中が低くなってる所に行って、止まるんだね。
なんか前にいるヴェルファイアが、マイクで言われてるよ。
聞こえてきたのは、床から何かが垂れ下がってるのと、左ブーツが破れてるみたいだよ。
どしたの、柚月、何がおかしいの? え? そんな指摘されるって事は、そもそも、何の整備もせずに、ここに来てるとしか思えないって?
あ、優子が行ったよ。どうなんだろうね。
まずは、ブレーキをかけずに止まって、ブレーキを踏んで、離して、その間、下から頭が出てきてるから、下から見られてるんだね。
そして、車がゆさゆさ揺れてるよ。
あれは、床がそういう構造になっていて、何かが落ちてきたりとか、緩んでたりとかを見てるんだって?
あ、『〇』だよ。そして、また記録するんだね。
最後は出口のところの、総合判定室ってところに行くんだね。
優子がそこで紙を渡して、色々と説明を受けて、用紙を返却されてるよ。
よし、S14が出てきたから、私らも、優子のいる場所に行こうよ。
応援ありがとうございます!
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