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夏は休み
あした、スポーティに生きる
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■まえがき
DOHCとツインカムは同じものです。
DOHCが正式名称で、ツインカムというフレーズは、トヨタが日本でDOHCエンジンを普及化させるために呼び始めた呼称で、スカイラインでもR30型まではDOHC、R31型以降はツインカムと呼称しているため、本作でも混同しておりました。
読み辛さがあるため、今後は『ツインカム』に統一します。
過去話に関しては、今後前後の整合性等を見て判断し、修正行っていきます。
読み辛さがありまして申し訳ありません。
──────────────────────────────────────
よぉし、今度はR33だ。
もう、この辺になると、私たちにもお馴染みだよね。
この車の背景と特徴は言うまでもなくで、R32の不評の原因である後席とトランクの狭さの原因を究明せずに、ボディのサイズアップに対策を求め、元来、2ドアだけショートホイールベースにする計画が、不況によるコスト削減で4ドアはおろか、ローレルとも共通化される話に変更されてしまったため、2ドア、4ドア共にボディのサイズアップが顕著な事が特徴に挙げられるのだ。
また、従来型車からR32に乗り換えなかった層の声の中に、一部『ボディが小さすぎてみすぼらしい』というものがあったらしい。
私個人的には、2ドアクーペは、ちょっと間延びした感があって、真横から見ると微妙な感じがするけど、セダンに関しては、さほど悪くない見た目だと思うんだよね。
しかも、先代型のセダンが、セダンって言いながら、ハードトップで、しかも、トヨタがお得意のピラー付きハードトップなんて中途半端なボディなのに対して、本当にセダンになっているのなんて、凄く良いことだと思うんだよね。
だってさ、ハードトップ車が使うサッシュレスドアのおかげで、私のR32だって、ウェザーストリップの劣化で水が漏ったりしたんだからさ、『窓枠が無い方がカッコ良い』なんて開発者は言うんだけどさ、使ってる私たちにとってメリットがないんだったら、採用すべきでないでしょ。
見た目で個人的に言うと、セダンはあと数センチ背が高ければ、言う事ないと思うんだけどな。
それで、エンジンからは、遂に4気筒モデルが消えてるんだよね。
まぁ、4気筒に関してはR32の時点でやる気がなかったよね。R31までは、1800ccの4気筒だけで2~3グレードは基本用意してて、そこから特別仕様車とかで派生させていってたんだけど、R32は全く手つかずで放置だったし、今までと違って4気筒の専用部品がほとんどなかったしね。
結衣には想像つかないだろうけど、R31までは、タコメーターの付かない廉価版メーターが存在してたんだよ。しかも、1グレードだけのために。
「えっ!? なんで?」
恐らくだけど、1800ccでも、それなりに上級版を買わせるために、敢えてみすぼらしい仕様を用意してたんだよ。
歴代に渡って1グレードだけタコメーターがある場所に、大きな時計の付いた仕様があったんだって。
2000ccもツインカムやターボが消えて、1種類だけになって、それと2500のツインカムとツインカムターボで3種類と、かなりスッキリしたラインナップになったんだよ。
ただ、迷走したなぁ……と、当時思わせたのは、登場時の4ドアセダンのグレードは5グレード存在したんだけど、5速MTは、2グレードしかなかったんだよ。
2000ccの最廉価版のGTSと、ツインカムターボのGTS25tタイプMのみで、2000ccの豪華版のGTSタイプGや、2500ccツインカム車は、ATのみしか選べなかったんだよ。
スポーツセダンを標榜するスカイラインのラインナップとしては、当時、かなり疑問を呈する声が多かったんだよね。
そう、ATで言い忘れてたけど、R32の後期型からは、先進の5速ATが採用されて、このR33でも2500ccツインカム車に採用されているよ。ただ、後期型で廃止になって4速に戻されるけどね。
それと、ツインカムターボ車のエンジン出力が、MT車では250馬力なのに対し、AT車では、特性に合わせて245馬力になってるんだよ。
そして、CMはジャパン以来の、男女のカップリングCMになったんだけど、正直、ジャパンまでのインパクトのある物じゃなくて、なんかふんわりしたイメージCMだから初期のバージョンのみで、この2人は姿を消している。CMコピーも『あした、スポーティに生きる』っていう、正直、よく分からないもので、本当に迷走感が凄かったよね。
でも、メカ的には悠梨の車でお馴染みの2500ccツインカムターボは、ターボの弱点であるターボラグを感じさせないように、ブースト圧を低めて、エンジンの圧縮比を高め、大排気量車のように淀みないパワーの出方になるような『リニアチャージコンセプト』を採用したり、電動スーパーハイキャスへと進化したり、アクティブLSDをオプションで採用したり……と、積極的だったんだよ。
ただ、リニアチャージコンセプトは、同時期のS14シルビアと共に、『ターボらしくない』って言われて、あまり評判はよろしくなかったんだよね。
結局、これらの迷走感と、大きくなったボディが嫌われて、R33型は初っ端から評判が芳しくなかったんだよね。
R32型からの乗り換え需要がほとんどない代わりに、R31からの乗り換え需要があったのが救いだったみたいで、R31の時ほどの拒絶反応ではなかったけど、やっぱりそれでも不評だったことは間違いなかったんだよね。
GTS-4が遅れて追加されるんだけど、R33のGTS-4は、R32がツインカムターボのみで、降雪地の一般ユーザーから『そこまでの高性能版はいらない』と言われて敬遠された事を受けて、2500ccのツインカムエンジンに設定されたんだ。
それからね、結衣、R33には世にも珍しい特別なモデルがあるんだよ。
「なによ、その特別なモデルって?」
'94年にセダンにGTS25tタイプGリミテッドってモデルが出てるんだ。
これは、豪華装備のツインカムターボ車っていう性格の特別仕様車で、ATのみの設定なんだ。
「それの、どこが、世にも珍しいんだよ」
フフフ、訊いて驚け、結衣、このGTS25tタイプGリミテッドの型式はER33なんだよ。
「えっ!?」
気がついた? そう、R32以降のスカイラインで、唯一、標準状態でハイキャスの付かないツインカムターボ車なんだよ。
これには理由があって、このグレードはGTS25tタイプMに豪華装備をつけたのではなく、豪華装備のGTS25タイプGに、ツインカムターボ車のメカニズムを移植したために、ベース車に準じて、ハイキャスがついていないんだよ。
そして、R33の迷走ぶりは歴代でも際立っていて、発売の翌年には、販売不振を受けてのテコ入れが、さっきのGTS25tタイプGリミテッドを含め、多数行われたんだけど、特に首を傾げたのは、GTSアーバンライナーだね。
「ナニソレ? アーバンライナー? 電車の名前?」
これはね、結衣、2500ccのみのラインナップにしたハズの、2ドアクーペに追加した、シングルカムの2000ccを積んだ廉価仕様だよ。
R31以降は、2ドアのイメージを高めるために、2ドア車に最低ランクのエンジンを積まないようにしていたポリシーを破壊してしまったんだよ。
「そうか、R31の2ドアには1800ccは無かったし、R32に至っては、1800はおろか、2000ccのシングルカムエンジンもなかったもんね」
そうだよ、考えてみようよ。
R32ですら、2ドアの高性能イメージのために、2000ccのシングルカムエンジンをパスしてるのに、重量が増えたR33でそれを設定するって、普通に考えて、どういう事よ? って思っちゃうでしょ。
そして、ほぼ同時期に、R33と同じ年にモデルチェンジしたローレルが、スカイラインとの性格分けをするために、ツインカムターボエンジンを廃止したにもかかわらず、販売不振を受けて復活させてきたことからも分かるんだけど、当時の日産のこのクラスの車は、販売がボロボロで、なりふり構わぬ攻勢に出ていた事がよく分かるよね。
ちなみにこのC34型ローレルでも、スポーティグレードのクラブSは、従来からツインカム専用グレードだったのに、販売不振で、スカイラインと同じく2000ccシングルカムのクラブSを発売してるんだよ。
「当時は、ホントにズタボロだったんだな~」
まぁ、両車の不振は、車の中途半端さが際立ったことと、ライバルのキャラクターがしっかりと立ち過ぎたんだよね。
R33登場前年に、7代目のX90系にモデルチェンジしたマークII系は、開発者が『R32に影響されて、ベンチマークにした』と公式に言うほど、走りの質を磨いてきたんだ。
それまでのマークIIは、豪華な装備やデザイン、エンジンのパワーはあっても、足回りはグニャグニャで、ブレーキは格下の物がついていて……って感じで、パワーはあっても飛ばせないし、止まれないし、曲がらない……って、いうものだったんだけど、7代目からは別物みたいにレベルが高くなったんだよ。
しかも、最強グレードのツアラーVは、スカイラインと同じ2500ccツインカムターボながら、自主規制値いっぱいの280馬力を発揮。
自主規制値の280馬力に留まっているGT-Rに忖度して、280馬力が出せないスカイラインは、マークII系の注目の影に完全に隠れちゃったんだよね。
「そうなのかぁ、確かに、X90系から、マークII系にも、走りのイメージがついてくるもんな」
ただ、マークIIの歴史の中では、若返ったデザインや、3ナンバー専用車になった事から、先代モデルから売り上げを半分以下に落として、マークII消滅の落日になったA級戦犯として扱われてるけどね。
「そうなのか~!」
まぁ、スカイラインで言うと、ちょっと異なるけど、R30型に近いのかなぁ……走りのイメージは高めたけど、販売をダメにしたっていう点では共通だからね。
そして、話を戻して、R33迷走政策では、R33が登場して暫くした頃、『スカイラインの愛称募集キャンペーン』が行われたんだよ。
「なんだそれ?」
ハコスカ、ケンメリ、ジャパンみたいな、素敵な愛称をみんなで考えて応募し、スカイライン人気の復活と、話題性の創出を狙ったんだ。
「なんか、もうダメな気がしてきたよ」
みなまで言うなよ、結衣!
その通りだったんだから。
まず、お金をかけないようにしたかったのか、当時主流のテレビCMは行わず、ディーラーの店頭や、新聞広告なんかで、ひっそりと募集されたから、認知が進まず、R33の人気のなさから、真面目に応募する人も少なく、しかも、抽選で、当たり障りのないものに決められちゃうから、結局気がついた時には
「時には?」
『GT9』って、なってたんだよ。
「オイ、マイ、そんな愛称知らないぞ!」
うん、そうだろうね。
全然定着しなかったらしいからね。
よく考えてみれば、ハコスカとかケンメリってのは、ユーザーや、ユーザー予備軍の人たちが、愛着持って接していくうちに、自然に生まれてきた『あだ名』だからね。
それを無理やり考えようったって、無理があるんだよ。
新任で、不愛想な先生が、突然『俺の呼び名を考えてくれよ』って、言っても、ロクに案が集まらないのと一緒だよ。
それに、ケンメリやジャパンってのは、しっかりとした販促施策と、CMやグッズ展開、それを実現する、しっかりした投資があってこそ、自然に愛称が出てくるほどの認知度になるんだよ。
悪いけど、R31以降の広告展開は、どれもこれも、イメージが途中で変わり過ぎて、まったくメッセージも伝わらなければ、何が狙いなのかも分からないよ。
「そうだな~、マイ、『GT9』で、ググってみても、ポルシェしか出てこないぞ」
ダメだよ結衣、そんな認知度のないものを、ワードだけで調べようとしても『GT9 スカイライン』くらい入れないと。
「ホントだ。でも、やっぱり、どこも、GT9は定着してないって書いてあるよ」
でしょ。
そして、1年5ヶ月おいて、ようやくGT-Rの発売になるんだよ。
──────────────────────────────────────
■あとがき■
★、♥評価、多数のブックマーク頂き、大変感謝です。
毎回、創作の励みになりますので、今後も、よろしくお願いします。
次回は
思いもよらずに、長引いたR33編。
次回は、遂にGT-Rが登場します。
お楽しみに。
DOHCとツインカムは同じものです。
DOHCが正式名称で、ツインカムというフレーズは、トヨタが日本でDOHCエンジンを普及化させるために呼び始めた呼称で、スカイラインでもR30型まではDOHC、R31型以降はツインカムと呼称しているため、本作でも混同しておりました。
読み辛さがあるため、今後は『ツインカム』に統一します。
過去話に関しては、今後前後の整合性等を見て判断し、修正行っていきます。
読み辛さがありまして申し訳ありません。
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よぉし、今度はR33だ。
もう、この辺になると、私たちにもお馴染みだよね。
この車の背景と特徴は言うまでもなくで、R32の不評の原因である後席とトランクの狭さの原因を究明せずに、ボディのサイズアップに対策を求め、元来、2ドアだけショートホイールベースにする計画が、不況によるコスト削減で4ドアはおろか、ローレルとも共通化される話に変更されてしまったため、2ドア、4ドア共にボディのサイズアップが顕著な事が特徴に挙げられるのだ。
また、従来型車からR32に乗り換えなかった層の声の中に、一部『ボディが小さすぎてみすぼらしい』というものがあったらしい。
私個人的には、2ドアクーペは、ちょっと間延びした感があって、真横から見ると微妙な感じがするけど、セダンに関しては、さほど悪くない見た目だと思うんだよね。
しかも、先代型のセダンが、セダンって言いながら、ハードトップで、しかも、トヨタがお得意のピラー付きハードトップなんて中途半端なボディなのに対して、本当にセダンになっているのなんて、凄く良いことだと思うんだよね。
だってさ、ハードトップ車が使うサッシュレスドアのおかげで、私のR32だって、ウェザーストリップの劣化で水が漏ったりしたんだからさ、『窓枠が無い方がカッコ良い』なんて開発者は言うんだけどさ、使ってる私たちにとってメリットがないんだったら、採用すべきでないでしょ。
見た目で個人的に言うと、セダンはあと数センチ背が高ければ、言う事ないと思うんだけどな。
それで、エンジンからは、遂に4気筒モデルが消えてるんだよね。
まぁ、4気筒に関してはR32の時点でやる気がなかったよね。R31までは、1800ccの4気筒だけで2~3グレードは基本用意してて、そこから特別仕様車とかで派生させていってたんだけど、R32は全く手つかずで放置だったし、今までと違って4気筒の専用部品がほとんどなかったしね。
結衣には想像つかないだろうけど、R31までは、タコメーターの付かない廉価版メーターが存在してたんだよ。しかも、1グレードだけのために。
「えっ!? なんで?」
恐らくだけど、1800ccでも、それなりに上級版を買わせるために、敢えてみすぼらしい仕様を用意してたんだよ。
歴代に渡って1グレードだけタコメーターがある場所に、大きな時計の付いた仕様があったんだって。
2000ccもツインカムやターボが消えて、1種類だけになって、それと2500のツインカムとツインカムターボで3種類と、かなりスッキリしたラインナップになったんだよ。
ただ、迷走したなぁ……と、当時思わせたのは、登場時の4ドアセダンのグレードは5グレード存在したんだけど、5速MTは、2グレードしかなかったんだよ。
2000ccの最廉価版のGTSと、ツインカムターボのGTS25tタイプMのみで、2000ccの豪華版のGTSタイプGや、2500ccツインカム車は、ATのみしか選べなかったんだよ。
スポーツセダンを標榜するスカイラインのラインナップとしては、当時、かなり疑問を呈する声が多かったんだよね。
そう、ATで言い忘れてたけど、R32の後期型からは、先進の5速ATが採用されて、このR33でも2500ccツインカム車に採用されているよ。ただ、後期型で廃止になって4速に戻されるけどね。
それと、ツインカムターボ車のエンジン出力が、MT車では250馬力なのに対し、AT車では、特性に合わせて245馬力になってるんだよ。
そして、CMはジャパン以来の、男女のカップリングCMになったんだけど、正直、ジャパンまでのインパクトのある物じゃなくて、なんかふんわりしたイメージCMだから初期のバージョンのみで、この2人は姿を消している。CMコピーも『あした、スポーティに生きる』っていう、正直、よく分からないもので、本当に迷走感が凄かったよね。
でも、メカ的には悠梨の車でお馴染みの2500ccツインカムターボは、ターボの弱点であるターボラグを感じさせないように、ブースト圧を低めて、エンジンの圧縮比を高め、大排気量車のように淀みないパワーの出方になるような『リニアチャージコンセプト』を採用したり、電動スーパーハイキャスへと進化したり、アクティブLSDをオプションで採用したり……と、積極的だったんだよ。
ただ、リニアチャージコンセプトは、同時期のS14シルビアと共に、『ターボらしくない』って言われて、あまり評判はよろしくなかったんだよね。
結局、これらの迷走感と、大きくなったボディが嫌われて、R33型は初っ端から評判が芳しくなかったんだよね。
R32型からの乗り換え需要がほとんどない代わりに、R31からの乗り換え需要があったのが救いだったみたいで、R31の時ほどの拒絶反応ではなかったけど、やっぱりそれでも不評だったことは間違いなかったんだよね。
GTS-4が遅れて追加されるんだけど、R33のGTS-4は、R32がツインカムターボのみで、降雪地の一般ユーザーから『そこまでの高性能版はいらない』と言われて敬遠された事を受けて、2500ccのツインカムエンジンに設定されたんだ。
それからね、結衣、R33には世にも珍しい特別なモデルがあるんだよ。
「なによ、その特別なモデルって?」
'94年にセダンにGTS25tタイプGリミテッドってモデルが出てるんだ。
これは、豪華装備のツインカムターボ車っていう性格の特別仕様車で、ATのみの設定なんだ。
「それの、どこが、世にも珍しいんだよ」
フフフ、訊いて驚け、結衣、このGTS25tタイプGリミテッドの型式はER33なんだよ。
「えっ!?」
気がついた? そう、R32以降のスカイラインで、唯一、標準状態でハイキャスの付かないツインカムターボ車なんだよ。
これには理由があって、このグレードはGTS25tタイプMに豪華装備をつけたのではなく、豪華装備のGTS25タイプGに、ツインカムターボ車のメカニズムを移植したために、ベース車に準じて、ハイキャスがついていないんだよ。
そして、R33の迷走ぶりは歴代でも際立っていて、発売の翌年には、販売不振を受けてのテコ入れが、さっきのGTS25tタイプGリミテッドを含め、多数行われたんだけど、特に首を傾げたのは、GTSアーバンライナーだね。
「ナニソレ? アーバンライナー? 電車の名前?」
これはね、結衣、2500ccのみのラインナップにしたハズの、2ドアクーペに追加した、シングルカムの2000ccを積んだ廉価仕様だよ。
R31以降は、2ドアのイメージを高めるために、2ドア車に最低ランクのエンジンを積まないようにしていたポリシーを破壊してしまったんだよ。
「そうか、R31の2ドアには1800ccは無かったし、R32に至っては、1800はおろか、2000ccのシングルカムエンジンもなかったもんね」
そうだよ、考えてみようよ。
R32ですら、2ドアの高性能イメージのために、2000ccのシングルカムエンジンをパスしてるのに、重量が増えたR33でそれを設定するって、普通に考えて、どういう事よ? って思っちゃうでしょ。
そして、ほぼ同時期に、R33と同じ年にモデルチェンジしたローレルが、スカイラインとの性格分けをするために、ツインカムターボエンジンを廃止したにもかかわらず、販売不振を受けて復活させてきたことからも分かるんだけど、当時の日産のこのクラスの車は、販売がボロボロで、なりふり構わぬ攻勢に出ていた事がよく分かるよね。
ちなみにこのC34型ローレルでも、スポーティグレードのクラブSは、従来からツインカム専用グレードだったのに、販売不振で、スカイラインと同じく2000ccシングルカムのクラブSを発売してるんだよ。
「当時は、ホントにズタボロだったんだな~」
まぁ、両車の不振は、車の中途半端さが際立ったことと、ライバルのキャラクターがしっかりと立ち過ぎたんだよね。
R33登場前年に、7代目のX90系にモデルチェンジしたマークII系は、開発者が『R32に影響されて、ベンチマークにした』と公式に言うほど、走りの質を磨いてきたんだ。
それまでのマークIIは、豪華な装備やデザイン、エンジンのパワーはあっても、足回りはグニャグニャで、ブレーキは格下の物がついていて……って感じで、パワーはあっても飛ばせないし、止まれないし、曲がらない……って、いうものだったんだけど、7代目からは別物みたいにレベルが高くなったんだよ。
しかも、最強グレードのツアラーVは、スカイラインと同じ2500ccツインカムターボながら、自主規制値いっぱいの280馬力を発揮。
自主規制値の280馬力に留まっているGT-Rに忖度して、280馬力が出せないスカイラインは、マークII系の注目の影に完全に隠れちゃったんだよね。
「そうなのかぁ、確かに、X90系から、マークII系にも、走りのイメージがついてくるもんな」
ただ、マークIIの歴史の中では、若返ったデザインや、3ナンバー専用車になった事から、先代モデルから売り上げを半分以下に落として、マークII消滅の落日になったA級戦犯として扱われてるけどね。
「そうなのか~!」
まぁ、スカイラインで言うと、ちょっと異なるけど、R30型に近いのかなぁ……走りのイメージは高めたけど、販売をダメにしたっていう点では共通だからね。
そして、話を戻して、R33迷走政策では、R33が登場して暫くした頃、『スカイラインの愛称募集キャンペーン』が行われたんだよ。
「なんだそれ?」
ハコスカ、ケンメリ、ジャパンみたいな、素敵な愛称をみんなで考えて応募し、スカイライン人気の復活と、話題性の創出を狙ったんだ。
「なんか、もうダメな気がしてきたよ」
みなまで言うなよ、結衣!
その通りだったんだから。
まず、お金をかけないようにしたかったのか、当時主流のテレビCMは行わず、ディーラーの店頭や、新聞広告なんかで、ひっそりと募集されたから、認知が進まず、R33の人気のなさから、真面目に応募する人も少なく、しかも、抽選で、当たり障りのないものに決められちゃうから、結局気がついた時には
「時には?」
『GT9』って、なってたんだよ。
「オイ、マイ、そんな愛称知らないぞ!」
うん、そうだろうね。
全然定着しなかったらしいからね。
よく考えてみれば、ハコスカとかケンメリってのは、ユーザーや、ユーザー予備軍の人たちが、愛着持って接していくうちに、自然に生まれてきた『あだ名』だからね。
それを無理やり考えようったって、無理があるんだよ。
新任で、不愛想な先生が、突然『俺の呼び名を考えてくれよ』って、言っても、ロクに案が集まらないのと一緒だよ。
それに、ケンメリやジャパンってのは、しっかりとした販促施策と、CMやグッズ展開、それを実現する、しっかりした投資があってこそ、自然に愛称が出てくるほどの認知度になるんだよ。
悪いけど、R31以降の広告展開は、どれもこれも、イメージが途中で変わり過ぎて、まったくメッセージも伝わらなければ、何が狙いなのかも分からないよ。
「そうだな~、マイ、『GT9』で、ググってみても、ポルシェしか出てこないぞ」
ダメだよ結衣、そんな認知度のないものを、ワードだけで調べようとしても『GT9 スカイライン』くらい入れないと。
「ホントだ。でも、やっぱり、どこも、GT9は定着してないって書いてあるよ」
でしょ。
そして、1年5ヶ月おいて、ようやくGT-Rの発売になるんだよ。
──────────────────────────────────────
■あとがき■
★、♥評価、多数のブックマーク頂き、大変感謝です。
毎回、創作の励みになりますので、今後も、よろしくお願いします。
次回は
思いもよらずに、長引いたR33編。
次回は、遂にGT-Rが登場します。
お楽しみに。
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