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夏は休み

不遇と活路

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■まえがき
 長らく休載していた最大の理由は、アルファポリスの某ウイルスに関わる言葉への制限です。
 正直やっていられないのでやめてましたが、非常に反響が大きいため再開していますが、今回の話にも制限がかかっています。
 これ以上、言論の自由を阻害するここではやっていられませんが、この作品に関しては最終話までアップさせて頂きます。

 このサイト、トヨタに訴えられて欲しいです。
 私はトヨタの車の車名だと、何度申し上げたかお判りでしょうか?

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 さて、遂に展示車だね。
 う~ん、やっぱりR33はジャパン、R31と並んで不遇の扱いを受ける代なんだね、GT-Rしかないよ。
 私的《わたしてき》には、初期型のタイプMのフルオプション車とか、GTS25tタイプGリミテッドとか、今となってはGTSアーバンライナーとか貴重だと思うんだよ。

 「なんで初期型のタイプMのフルオプション車なの?」

 バブル崩壊と、不人気の影響で、初期型だけで廃止されてるオプションって、結構多くて、ツインフォグや、オートスポイラーなんかも、実は、ごく初期には設定されてるんだよ。
 あと、初期モデルに採用されてるスーパークリアレッドっていう、私のR32と同系統のワイン系の赤は、コストのかかる色だったために、一部改良でしれっと廃止してるから、やっぱり見どころのあるものだと思うよ。

 「この青い色の妙なR33って、なんだ?」

 結衣、これこそが、'93年の東京モーターショーに出展された、R33GT-Rのプロトタイプだよ。
 当時は、東京モーターショーと言いながら、幕張メッセでやってたんだけどね。このGT-Rプロトの前には人だかりができていたんだよ。

 「そうなのか~」

 この間、海行った時のホテルの料理長が見たのはこの車だよ。
 あの人は、これを見て『こんなのだったら、タイプMを買っておいて正解だった』って思ったんだよ。
 ちなみに、突貫工事で、モーターショーに無理矢理間に合わせただけのものだったので、エンジンはタイプMのRB25DETのままだったらしいよ。

 「そうなんだな……うん、微妙だ」

 この展示車両を見た途端、継続販売していたR32GT-Rを買いにくるお客さんが増えたために、開発陣は、かなりショックだったっていう逸話があるんだって。
 
 「マイ、このつや消し黒のR33はなに?」

 これは、R34GT-Rの先行試作車だって。
 色々なメカを先行搭載してのテストをしたんだよ。
 まぁ、ボディがR33なのは、スクープ対策の偽装って意味合いも大きいよね。
 さっきのR32ベースのFMパッケージの試作車もそうなんだけど、本来、この手の試作車ってのはデータ取りが終了して、実車の試作車が完成したら廃棄処分になって日の目は見ないのが一般的なんだよ。
 それが、ここに残ってるってのが奇跡なんだよ。

 レース仕様は、全日本GT選手権仕様だね。
 さっきのJTCCは、始まりがワンメイク化したGT-Rの追い出しってところに主眼が置かれていたっぽいから、人気がイマイチ盛り上がらなかったんだよ。
 ほぼイコールコンディションで戦っているはずの車なのに、妙に強い車が固定化されていて面白くないんだよ。
 市販車では、FFのスポーツセダンとして人気のあったプリメーラや、マツダのランティスなんかは、期待されてたのに蓋を開けるとさっぱりで、国内でスポーツグレードもないおじさんセダンのCORONAが勝ちまくって、見てる方が白けちゃうしね。
 だってCORONAだよ、兄貴から訊いたけど、CORONAって、校長が置いていったプレミオの先祖だよ。CORONAが、CORONAプレミオになって、プレミオになったんだって、言うんだからさ、校長のプレミオがレースで勝っても誰も欲しいと思わないじゃん。

 観客動員数も下がって、マツダ、日産、ホンダの順で国産メーカーが撤退、トヨタが自分のところの車が強いからって、車種を増やして悪ノリして、最後はそれに比例して観客が減り、最終に至っては10台集まらなかったって言う中で終了したんだって。

 それに代わって盛り上がったのがこの全日本GT選手権だね。
 これはトヨタ、日産、ホンダの他に、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ、マクラーレン、ベンツと言った世界の名だたるメーカーのマシンが参戦して、改造範囲の広いマシンが激闘を繰り広げて、今ではこのカテゴリーは、日本から世界大会に発展して行われてるんだって。
 
 まぁ、このGT選手権でも外せないのはGT-Rだよね。格下のクラスを含めると、R30~R32までも出走してたんだけど、大型のクラスで、当初の主力はR33GT-Rだったんだよ。
 このほかに、日産では、シルビアが出たり、GT-R空白の時代にはフェアレディZなんかも出場してたんだって。

 いやぁ、盛りだくさんの内容のR33だったんだけど、販売は不調のままで、30万台売れていたR32からも更にダウンして21万台に留まっちゃったんだよ。
 まぁ、売れなかった原因は、単純なサイズアップだけじゃなくて、この頃から車の在り方が変わってきて、従来のセダン一強って状態じゃなくなってきたんだよ。
 この頃、RVがブームで、クロカンと呼ばれるパジェロやテラノから始まり、レガシィツーリングワゴンや、オデッセイなどもヒットをはじめて、幅の広いジャンルの車にみんなの興味が移行したんだよ。
 それが証拠に、それまでバカ売れしていたマークIIだって、ここから凋落していっているから、これは、1つの時代の終焉とも言えるので、個々の車に責を負わすだけではない総括が必要だったんだよね。
 ただ、あのボロカスの評判っぷりから考えると、それでも20万台のラインを堅持したところは、さすがスカイラインとフォローしておこうかな。

 「マイは、R33が嫌いなのか?」

 結衣、そんな事ないよ、さっきも言った通り、GT-Rだったら、断然R33派だし、標準車のセダンも悪くないし、クーペも、斜め後ろから見た姿は、歴代で一番カッコいいって、思ってるくらいだよ。

 「本当~、そうだよね~! やっぱりR33はカッコいいよね~!」

 あれっ!? 悠梨、突然入ってきて、なんだよ! 全然存在感無いから、てっきり柚月と一緒に、口にガムテ貼って見学してるのかと思ってたのに。

 「そんな事、するわけないだろーが、柚月はさっきから、涙流しながら、こっちをチラチラ見てて、ウザいから、目を合わせないようにしてるんだから」

 それにしても、なんか、今日は時間が長く感じるね。
 なに? 私の蘊蓄《うんちく》が長いから、そう感じるんだって? 悠梨は、やっぱり柚月と一緒に見学して来いよぉ~、優子の有難い高説を拝聴して来いよぉ!


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 ■あとがき■

 ★、♥評価、多数のブックマーク頂き、大変感謝です。
 毎回、創作の励みになりますので、今後も、よろしくお願いします。

 次回は
 遂にR33が終わり、R34の話へと入ります。
 ミュージアム巡りも終盤に入ります。

 お楽しみに。
 

 
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