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夏は休み
また貸しと風物詩
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ところでだ、緊急合宿の話はこのくらいにして、残り少ない夏を最後まで満喫したくね? と思う訳よ。
一応、私が立てた夏の計画はこうなんだけどね。
……って、誰だ! 私のノートに、キショい目つきの猫の落書きをしたのは? 悠梨に決まってるだろって?
柚月が、授業中に寝ちゃったからって、ノート貸したのにさ、その恩を仇でもとい、落書きで返すって、どういうつもりなのさ! って、待てい! そもそも、私はこのノートを柚月に貸したのに、なんで、悠梨に落書きされて戻って来るんだ?
「それはね~、私がノート写した後に、悠梨に貸してあげたからだよ~」
「バカぁ!」
ヘラヘラしながら言う柚月に、思い切りデコピンを喰らわせてから言った。
「痛いなぁ、なにするんだよぉ~!」
それは、こっちのセリフだい!
柚月、人から借りたものを、黙って第三者に貸すことを、また貸しって言うんだ。人としてやっちゃいけない、サイテーな行為なんだよ!
「いいじゃんか~、減るもんじゃあるまいし~」
しかも、悪びれもせずに、今度は開き直ろうってか?
よーし、そんなことを言うんなら、理屈で勝負してやろうじゃないか。
現に、悠梨の落書きで書くスペースが減ったじゃないか、減るもんじゃ無しって言ってたけど、減ったぞ! どうしてくれるんだよぉ、小指で済ませるか?
「誰が、小指なんか詰めるもんか~!」
あ、そ。
分かったよ、柚月がそんな態度だったら、こっちにも考えがあるもん。
今度柚月の車借りて、ウチの兄貴に貸しちゃおっと、この何年か、兄貴もポルテとかセレナしか乗ってないから、走りたくてウズウズしてるって、言ってたし、往年の兄貴並みの走りで、一晩で廃車になっちゃうよねぇ……。
「ううっ……」
言葉に詰まったところに
「柚月、いい加減にしとけよ!」
と、結衣が語尾に力を入れて言ったため、柚月は黙ってしまった。
さて、本題に戻って、私の考えてるこの夏を満喫するプランなんだけど……って、悠梨、勝手に人のノートを取るんじゃないよ。コラっ! 返しなさい!
「なになに、『真夏の北海道を満喫、セレブ気分な縦断プラン』? マイ、まだ北海道に未練があるのかよぉ」
うるさいな! 勝手に人のノートを見るんじゃないって、言ってるでしょ! 大体柚月と悠梨は、なんで人の邪魔ばっかりするのよ!
「悠梨もさ、いい加減にしとけって、分からないのかよぉ?」
結衣が、不快感たっぷりに悠梨に言ったため、ようやく始められた。
今年の花火大会について調べてきたんだ。
やっぱり夏と言えば、花火大会じゃね? という事でさ、近県含めた花火大会、あるかどうかを調べてみたのさ。
ウチの県は軒並み中止だったね。まぁ、ご時世だし、元々大規模スポーツイベントがあるから、今年は警備の関係で、やらない予定だったらしいよ。
そこで周辺県も調べたところ、なんと、この間のスカイライン博物館の近くで、あるんだよね。
前回の博物館の例を見るまでもなく、1時間弱くらいで着くしさ、ちょっと見に行ってみない?
どう思います? 結衣先生、優子先生?
「なんで、私と柚月には聞かないんだよ~?」
悠梨はどうせ、決定権のない『その他大勢』の1人だからに決まってるだろ? プレゼンってのは、決定権のある人、若しくは、決定権のある人に影響を与える人に行うものなんだよ。
なんの影響力もない下っ端は、そこで指を咥えて見てれば良いのっ!
「でもさ、周辺道路とか混むんじゃね?」
そうなんだよね、結衣。
でもって、花火自体は10分だからさ、そこまで、それ目的に遠くから来る人はいないと思うんだよね。
車を1台か2台に絞って、夕方あたりからいればさ、問題ないと思うんだよね。
「電車の方が良くね?」
悠梨~、頼むから都会の人みたいなこと言わないでよ~。
分かるでしょ、ウチらの駅のアクセスが壊滅的に悪いのは。
行きは、花火開始の2時間以上前に現地入りが、最も近くて、帰りは、乗り換えの駅で夜明かしね。最も早くて、翌朝の6時35分着だから、10分の花火見に行くのに、夕方5時前に駅に集合で、朝の駅前で解散だね。
「イヤだよ~! そんなの~」
当たり前だ、最初から嫌に決まってるだろーが、ちなみに、バイクも却下だからね。あんな夜中の山道を原付で上るなんて、絶対勘弁だし。
「あの辺って、観光地だからホテル多いでしょ? 泊まれないの?」
さすが優子、この状況を的確に判断してるね。
まだ調べてないけど、ハイシーズンになるんだろうから、難しいかもね。
花火は期間中、毎日上がるからさ、平日の混まない日を狙うんだけどさ、そこで何とかなるかなぁ……。
だから、泊まれればいいけど、無理と考えての弾丸ツアーってのを、今のところ考えてるんだよね。
敢えて山道を通って、楽しんでくるって、いうルートでも面白いんじゃないかなぁって、思ったんだよね。
「それは、面白いかもなぁ~」
でしょ、結衣。
きっと楽しいと思うんだよねぇ~。
「でもさ、マイ。私はやっぱり宿泊いかんだと思うよ。だって、5人で1台とかなったら、山道通っても大変なだけだと思うよ。重くなっちゃってさ」
そこで、優子が堅実な意見を挟んできた。
まぁ、そうだよね。
仕方ない、このプランは練り直しかなぁ……でもって、他に近県で花火って無いから、このまま中止かも……なんて思っていたら、不意に優子が続けて言った一言で、流れが妙な方向に向かって行くことになった。
「山道で、多人数は大変なんだよぉ、特に、ブレーキがノーマルな、ごくごく一部の車とかはねぇ……」
口角を上げて得意気な顔をする優子に、何故か不機嫌そうな結衣の表情が対照的だった。
──────────────────────────────────────
■あとがき■
★、♥評価、多数のブックマーク頂き、大変感謝です。
毎回、創作の励みになりますので、今後も、よろしくお願いします。
次回は
優子の最後の一言で、不穏な空気が流れた花火見物。
果たしてどうなるのか?
そして、その不穏な空気の中で行われる部活動。
お楽しみに。
一応、私が立てた夏の計画はこうなんだけどね。
……って、誰だ! 私のノートに、キショい目つきの猫の落書きをしたのは? 悠梨に決まってるだろって?
柚月が、授業中に寝ちゃったからって、ノート貸したのにさ、その恩を仇でもとい、落書きで返すって、どういうつもりなのさ! って、待てい! そもそも、私はこのノートを柚月に貸したのに、なんで、悠梨に落書きされて戻って来るんだ?
「それはね~、私がノート写した後に、悠梨に貸してあげたからだよ~」
「バカぁ!」
ヘラヘラしながら言う柚月に、思い切りデコピンを喰らわせてから言った。
「痛いなぁ、なにするんだよぉ~!」
それは、こっちのセリフだい!
柚月、人から借りたものを、黙って第三者に貸すことを、また貸しって言うんだ。人としてやっちゃいけない、サイテーな行為なんだよ!
「いいじゃんか~、減るもんじゃあるまいし~」
しかも、悪びれもせずに、今度は開き直ろうってか?
よーし、そんなことを言うんなら、理屈で勝負してやろうじゃないか。
現に、悠梨の落書きで書くスペースが減ったじゃないか、減るもんじゃ無しって言ってたけど、減ったぞ! どうしてくれるんだよぉ、小指で済ませるか?
「誰が、小指なんか詰めるもんか~!」
あ、そ。
分かったよ、柚月がそんな態度だったら、こっちにも考えがあるもん。
今度柚月の車借りて、ウチの兄貴に貸しちゃおっと、この何年か、兄貴もポルテとかセレナしか乗ってないから、走りたくてウズウズしてるって、言ってたし、往年の兄貴並みの走りで、一晩で廃車になっちゃうよねぇ……。
「ううっ……」
言葉に詰まったところに
「柚月、いい加減にしとけよ!」
と、結衣が語尾に力を入れて言ったため、柚月は黙ってしまった。
さて、本題に戻って、私の考えてるこの夏を満喫するプランなんだけど……って、悠梨、勝手に人のノートを取るんじゃないよ。コラっ! 返しなさい!
「なになに、『真夏の北海道を満喫、セレブ気分な縦断プラン』? マイ、まだ北海道に未練があるのかよぉ」
うるさいな! 勝手に人のノートを見るんじゃないって、言ってるでしょ! 大体柚月と悠梨は、なんで人の邪魔ばっかりするのよ!
「悠梨もさ、いい加減にしとけって、分からないのかよぉ?」
結衣が、不快感たっぷりに悠梨に言ったため、ようやく始められた。
今年の花火大会について調べてきたんだ。
やっぱり夏と言えば、花火大会じゃね? という事でさ、近県含めた花火大会、あるかどうかを調べてみたのさ。
ウチの県は軒並み中止だったね。まぁ、ご時世だし、元々大規模スポーツイベントがあるから、今年は警備の関係で、やらない予定だったらしいよ。
そこで周辺県も調べたところ、なんと、この間のスカイライン博物館の近くで、あるんだよね。
前回の博物館の例を見るまでもなく、1時間弱くらいで着くしさ、ちょっと見に行ってみない?
どう思います? 結衣先生、優子先生?
「なんで、私と柚月には聞かないんだよ~?」
悠梨はどうせ、決定権のない『その他大勢』の1人だからに決まってるだろ? プレゼンってのは、決定権のある人、若しくは、決定権のある人に影響を与える人に行うものなんだよ。
なんの影響力もない下っ端は、そこで指を咥えて見てれば良いのっ!
「でもさ、周辺道路とか混むんじゃね?」
そうなんだよね、結衣。
でもって、花火自体は10分だからさ、そこまで、それ目的に遠くから来る人はいないと思うんだよね。
車を1台か2台に絞って、夕方あたりからいればさ、問題ないと思うんだよね。
「電車の方が良くね?」
悠梨~、頼むから都会の人みたいなこと言わないでよ~。
分かるでしょ、ウチらの駅のアクセスが壊滅的に悪いのは。
行きは、花火開始の2時間以上前に現地入りが、最も近くて、帰りは、乗り換えの駅で夜明かしね。最も早くて、翌朝の6時35分着だから、10分の花火見に行くのに、夕方5時前に駅に集合で、朝の駅前で解散だね。
「イヤだよ~! そんなの~」
当たり前だ、最初から嫌に決まってるだろーが、ちなみに、バイクも却下だからね。あんな夜中の山道を原付で上るなんて、絶対勘弁だし。
「あの辺って、観光地だからホテル多いでしょ? 泊まれないの?」
さすが優子、この状況を的確に判断してるね。
まだ調べてないけど、ハイシーズンになるんだろうから、難しいかもね。
花火は期間中、毎日上がるからさ、平日の混まない日を狙うんだけどさ、そこで何とかなるかなぁ……。
だから、泊まれればいいけど、無理と考えての弾丸ツアーってのを、今のところ考えてるんだよね。
敢えて山道を通って、楽しんでくるって、いうルートでも面白いんじゃないかなぁって、思ったんだよね。
「それは、面白いかもなぁ~」
でしょ、結衣。
きっと楽しいと思うんだよねぇ~。
「でもさ、マイ。私はやっぱり宿泊いかんだと思うよ。だって、5人で1台とかなったら、山道通っても大変なだけだと思うよ。重くなっちゃってさ」
そこで、優子が堅実な意見を挟んできた。
まぁ、そうだよね。
仕方ない、このプランは練り直しかなぁ……でもって、他に近県で花火って無いから、このまま中止かも……なんて思っていたら、不意に優子が続けて言った一言で、流れが妙な方向に向かって行くことになった。
「山道で、多人数は大変なんだよぉ、特に、ブレーキがノーマルな、ごくごく一部の車とかはねぇ……」
口角を上げて得意気な顔をする優子に、何故か不機嫌そうな結衣の表情が対照的だった。
──────────────────────────────────────
■あとがき■
★、♥評価、多数のブックマーク頂き、大変感謝です。
毎回、創作の励みになりますので、今後も、よろしくお願いします。
次回は
優子の最後の一言で、不穏な空気が流れた花火見物。
果たしてどうなるのか?
そして、その不穏な空気の中で行われる部活動。
お楽しみに。
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