女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

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冬は総括

師範とマックと最速記録

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 あれから5日が経って、ようやく干してたシートが完全乾燥したよ。
 うん、触ってみた感じも、柔軟剤が効いててゴワゴワじゃないし、OKだね。

 座面と背面が、予想通り乾燥に時間がかかったんだけど、こっちもOKだ。
 懸念だった煙草臭さも、すっかり消えたし、気になるようだったら布の臭い消しで対応すれば良いかな。

 じゃぁ、早速外側の布からつけていっちゃおう。
 実は、この布って、本来は一部接着されてたのを剥がす時に剥いじゃってるから、厳密に言うとピッタリって訳にはいかないんだよね。
 でも、この布自体のサイズが、ほぼジャストフィットな感じで作られてるから、きっとズレてはこないと思うんだよね。

 「もしズレてきたら、縫っちゃうから大丈夫だよ」

 燈梨ぃ、さすがだよぉ。
 もう、思わず頬をスリスリしちゃうぞぉ~

 「あはは、くすぐったいよぉ~」

 くくくっ、いつも燈梨とのキャッキャウフフを邪魔するななみんは、後ろで柚月に羽交い絞めにされて、悔しそうな表情でこっちを見てるぞ。
 ななみんめ、もっと悔しがれ~。

 でもって、車のシートって、布地も厚くてクッションも硬いから、結構丈夫な針じゃないと曲がっちゃうからね。

 「そうだね。気をつけるね」

 うん、車と裁縫スキルって、関係ないように見えて実は色々なところで役に立つんだよ。
 シートもそうだし、サンバイザーとかもそうなんだから。

 「えっ!? サンバイザーって、ビニールじゃないんですか?」

 ななみん、それは今の車の話ね。
 昔は上級車種になると、サンバイザーも布張りになったんだよ。R32を見てみると分かるけど、シートの生地に似た感じの布張りになってるよ。
 
 「あ、ホントだ」

 でしょー。
 だから、案外、必要になるスキルなんだよね。
 ちなみに、家事全般、ほぼ何から何までダメな柚月だけど、唯一裁縫は得意だからね。

 「何から何までダメとはなんだよぉ~」

 何から何までダメじゃないか、料理は何させてもダメだし、洗濯させれば干せないし、掃除させれば、はたきかけ忘れた上に、家具の下とか掃除機かけないから、掃除が終わった途端に埃が噴出してくるし、トイレ掃除させればトイレ詰まらせるし、風呂掃除させれば、必要ないのに何故か空焚きしてお風呂壊すし、何一つまともにできてないじゃないか。

 しかも、裁縫が得意な理由も、柚月はしょっちゅう道着を破ってて、おばさんが怒って柚月の道着を縫ってくれなくなっちゃったから、だからね。

 「ううっ……」
 「でも、柚月ちゃんは、その話を聞く限りは、数をこなせば出来るようになるんじゃない?」

 燈梨は優しいなぁ。
 でもね、柚月のいけないところは、一度できないと決めたら、脳内フィルターがかかっちゃって、同じ失敗を繰り返すところなんだよね。
 だから、当人が嫌になって投げちゃうんだ。

 ところで燈梨、柚月とななみんと一緒に料理する話はどうなったの?
 燈梨にみっちり特訓して貰って、せめてもインスタントラーメンや、目玉焼きくらいはクリアして欲しいところなんだよねぇ……。

 「なんか、柚月ちゃんが、道場の師範で忙しいから、延び延びになってるんだ」

 マジ?
 ちなみにアイツの家の道場は、もう弟子も取らなくなって、今やってるのは小中学生向けのレッスンと通信教育、ママさんエクササイズだけだったから、アイツが出る幕なんてないよ。

 「そうなの?」

 はは~ん、柚月め。
 自分の醜態をさらすのが嫌で、ウソの口実を作って逃げようって魂胆だなぁ。

 おーい、柚月。

 「なんだよマイ~、私はダイヤル取り付けの指導で忙しいんだよぉ~」

 あのさ、今からおばさんに
 『柚月が師範で忙しいって、燈梨の料理教室断わってるから、燈梨が困ってるんですよね~。なんとかなりません? テヘペロッ』
 って、LINEしようと思うんだけど、忙しいんじゃしょうがない。柚月の意見は聞かずに送信しようっと。

 「やめろ~!」

 なんでだよ、師範で忙しいんだろ? 師範って、マックとかでやってるの? 柚月最近よくマックにいるもんね。

 「燈梨ちゃん。もう、師範の用事は済んだんだ。だから、いつでも大丈夫だよ!」

 よしよし、これで一件落着だな。
 これで作業に戻れるぞ。

 表皮の布を被せた感じは、結構ピッタリで、縫って固定させる必要はなかったね。
 でもって、こうやって改めて取り付けてみると、煙草の焦げ穴が目立ってきちゃうよね。

 「これこそ縫っちゃえばいいんだよね」

 そうだね、燈梨。
 でも、ここは柚月の得意分野だよ。
 柚月は布地の厚い道着の裁縫を得意としてたからね、こういう厚手の布はお手のものなんだよ。
 さぁ、たまには部の役に立て、柚月。

 「いちいち余計な一言が多いんだよ~、マイは~」

 うるさい、柚月、さっさと縫え!
 なんだったら、さっきのメッセージをおばさんに今すぐ送ってもいいんだぞぉ~。柚月今日家に帰ったら、夕飯の前におばさんに道場に呼び出されるだけだからさ。
 あぁ~、久しぶりに見てみたいなぁ、柚月とおばさんのプロレス対決。今日はどんな技が炸裂するのかなぁ~。

 「ゴメンなさい~、参りました~!」

 まったく、最初から余計なこと言わずに、黙って縫ってればよかったんだよ。 

 よし、これで、外側はOKだね。
 今度は、柚月がダイヤルを取り付けてくれたから、前倒しレバーを取り付けちゃおう。
 先につけておくことによって、布の位置も固定できる狙いもあるんだよ。
 取り付け自体は、布の穴の開いてる位置とレバーの操作用の穴の開いている位置を合わせて、まずはレバー下にあるカバーを取り付けて、布を固定した後、レバーの先端にノブを取り付ける。

 ポイントは2つで、まずはカバーでしっかり布を挟み込んで抑え込む事と、ノブがキッチリついたか、引っ張ってみて確認する事だよ。
 特にノブは、取り付けが甘くて落っことしてるうちに、中にある固定用の小さなピンを失くしちゃって……って事になると最悪だからね。
 じゃぁ、力には定評のあるななみんに引っ張って貰おう……OKだね。

 あとは座面と背面をサクッとつけちゃおう。
 つけ方は外した時と逆の要領だよ。背面の上と、座面の下に爪があるから、それを本体の爪に引っ掛けてつけるんだ。

 よし、これで完成だね。後はレールだけだね……って、燈梨持ってたの?
 え? 解体屋さんで、おじさんがくれたんだって? なんで持ってたんだろ。

 まぁいいや、じゃぁ、レールまでつけちゃおう。
 シートをひっくり返して底面を見ると、前に4箇所、後ろに2箇所のネジ穴が開いてるでしょ?
 この穴の位置に、レールの穴を合わせて留めていくんだよ。

 「レールの穴の位置が、フレームに邪魔されてつきません」

 普通に見てみるとそうだけど、スライドさせていくと、穴が現れる位置が存在するはずだよ。
 だから、スライドレバーを取り付けて、都度スライドさせながら穴位置を探すんだ。
 これを1人でやると、とても地獄なんだよ。
 車種によっては、二度と取り付けしたくないと思うくらい、大変な作業なんだよ。
 スライドレバーをレールの片側だけに取り付けて、スライドさせると高確率で、バコーンって感じでレバーが外れて、顔面とかを直撃するからね。

 1人の場合は、両側いっぺんに……とかできないし、片側ずつチマチマやるんだけど、レールをスライドさせてる最中に指挟んだりして、滅法痛い目見るんだって。
 でも、部の場合は、人海戦術が使えるんだから、両方で作業していった方が良いよ。
 両側でピッタリ息を合わせてレールの位置決めとネジ留めをする担当、スライドレバーの操作で、レールを動かす担当、そしてレール本体を押さえる担当。これだけいればパーフェクトだね。

 ほらほら、凄くスムーズに進んでるでしょ。うん、完璧だ。
 凄いよ、このシートの難関の作業の1つであるレールの組み付けが5分で完了したよ。
 これって、世界最速記録じゃね?

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