女子高生が、納屋から発掘したR32に乗る話

エクシモ爺

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冬は総括

第一段階とハンガーヌンチャク

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 翌朝、駐車場から教室に行く前に、昨日準備した例の練習場の前を通ってみたのさ、そしたら、ばっちりガッキガキに凍ってて、狙い通りの路面状況の練習場に変わってたんだ。

 よぉ~し、これで放課後に、まずは試験運用って事で、あやかんと私らで走らせてみよう。

 よし、待ち遠しかったね今日の放課後がさ。
 燈梨も来てくれたんだけど、結衣が今日はバイトなんだって。
 しょうがないなぁ、結衣はいつもバイトバイトって、そんなにバイトが好きなら、バイトと結婚しちゃえばいいのに。

 「マイ、そんな事言うと、また結衣と喧嘩になるから……」」

 分かってるよ……って、優子は言う事がホントにおばさんみたいだな。どうして、そうやって人生達観してるんだよ、もっとアクティブに生きようよ。

 「いちいち余計な事言わなくていいでしょ! 早く始めてよ」

 さて、今回は冬の路面に慣れていない2人の体験教習と、みんなも4輪になってからは初体験のこの凍結路に一足早く慣れて貰おうって催しだから、最初はあやかんと燈梨に走って貰おう。
 一応部の場所だから、部車で……って事で、燈梨がGTEとセフィーロを用意してくれたよ。
 ありがとー燈梨。

 「ううん、大丈夫。今日の活動だと、どっちも使わないからさ」

 ちなみに今日も抜けて大丈夫なの?
 今日は、ガレージと部室の大掃除と、部車のS14の半年点検なんだって?

 「ところで舞華っち、なんで2台必要なの?」

 あやかん、いい質問だね。
 この2台は駆動方式が違うから、若干動きに差が出るんだよ。
 スカイラインは後輪駆動で、セフィーロは4輪駆動だよ。

 「正確には~、滑り出さないとセフィーロもFRだよ~」

 柚月め、初心者を混乱させるような注釈は不要だよ。
 あくまで、あやかんがイメージできればいいんだからさ。
 でも、FFが無いのがちょっと残念だったなぁ、あやかんの車はFFだからさ、やっぱり同じ駆動方式で慣れておいた方が良いじゃん。

 「でも、ノートもエッセも競技車だから、タイヤが無いぞ」

 悠梨の言う通りなんだよね。
 あれらは貴重な部の財産だからさ、夏タイヤで走らせて木に突っ込んで全損にさせちゃう訳にいかないんだよね。

 よし、まぁ、理論で語ってても仕方ないから、早速始めちゃおう……って、燈梨、どうしたの? え? 私から先に走ってみたいだって?
 そうかぁ~、燈梨ったら、一刻も早く私と同じ車の中で、2人きりでキャッキャウフフしたいって訳だね。良いよぉ~、早速いっちゃおう。

 最初は、駆動方式を自分の車と合わせた方が良いから、GTEからいこうかぁ。
 それじゃぁ、最初は普通に走らせてみて、コースは好きなように走らせていいからさ。

 お、反時計回りに周回を始めたね。
 いつもと同じように……って、燈梨はもう通学で凍結路に乗ったりしてるだろうから、脊髄反射でアクセルコントロールする癖がついてるよね。
 ただ、最初から危険の無いようにってコントロールしちゃってると、いざという時に手も足も出なくなっちゃうから、今日は一クラス上の練習をしていくよ。

 「一クラス上って?」

 そしたら燈梨、先に障害物の無いサイドに来たら、思い切ってアクセルを床の半分くらいまで踏み込んで、その状態で周回してみせて。

 「えっ!? でも……」

 いいから、言われた通りにやってみて。
 
 「うん……」

 燈梨は、頷くと言われた通りぐんぐん加速していった。
 燈梨の表情も緊張してるし、外で見てるみんなも慌てたり、驚いたりしてるけど、これをやるための練習場だからさ、これが無かったら、正直一部の遊園地のゴーカートと同じなんだよ。

 「それって、どういう意味?」

 一部の遊園地のゴーカートって、事故防止の意味合いなんだろうけど、レールで動いてたり、左右のタイヤの間にガイドレールみたいなのがあって、コースを外れたり、追い越しが出来ないようになってたりとか、面白みに欠けるのがあるんだよ。

 「そうだったんだぁ……前に行ったところは、違ってたかなぁ」

 そうなの? 燈梨、遊園地に行った事あるの?
 え? 遊園地という程のものじゃないけど、コンさんと一緒にアミューズメントパークに丸一日行って、遊んだ時に乗ったんだって?

 また、コンさんかぁ、私の燈梨を誑かしたたぶらかしただけでは飽き足らず、私ですら一緒に行った事の無い遊園地に行くなんて、なんて抜け目ない奴なんだぁ……。
 こうなったら、今夜にでも、風呂上がりに飲むビールの中にからしをたっぷり混ぜておいて、怯んだところをハンガーヌンチャクだぁ!

 「ちなみに、今コンさんは北海道に住んでるらしいから、これから出発しても今日中に到着できないよ」

 ええっ!? そうなの? 燈梨が住んでた実家に住んでるらしいって?
 くそぅ! コンさんめぇ、きっと、燈梨の部屋を寝室として使って、燈梨のベッドに毎日寝て、くんかくんかとかしてるに違いないよぉ!
 今日のところは、時間的な問題で命拾いしたかもしれないけど、明日もその命が続いてると思うなよぉ~!

 どしたの燈梨? ちょっと顔が赤い気がするけど、気のせいだって?

 まずは、さっきとはやり方を変えて、普段通りに曲がってみて。
 むしろ普段よりもちょっとアクセル踏んでるくらいの勢いでさ。

 燈梨は言われた通りに、普通よりちょっと速めのスピードでコーナリングを始めた。すると、私の狙い通り、後輪がズルズルと流れ始めた。

 「ああっ!!」

 燈梨は、ある程度予測できていたとは言え、流れた後輪を制御することが出来ず、内側に巻き込んでスピンして止まった。

 ハンドルに必死にしがみついている燈梨が、ようやく呼吸を整えて顔を上げてこちらを見たのと同時に私は言った。
 これが凍結路なんだよ。

 「もう~、マイちゃんの意地悪! 分かってるなら、最初から教えてくれてもいいじゃん~!」

 違うよ燈梨。
 分かっていて、何となく立て直した気になっちゃうのと、一度でも失敗してスピンした悔しさを味わって、そうならないように覚えていくのでは、途中が少し似ているだけで、出発点も結果も全く違ってくるんだよ。

 「ううっ!」

 そして、ここでの上達に、密接に関係してるのが、例の第二練習場なんだよ。
 あそこで覚えた事が、ここを攻略する大きな要素になるんだよ。あそこを何となくでも走れるようになっていれば、ここの攻略方法もなんとなくでも分かると思うんだよ。

 燈梨は、私の言った事をちょっと考えてみてから

 「分かったよ! だから、あそこで練習した方が良いって、マイちゃんは言ってたんだね」

 そうなんだ。だから、それを踏まえて走ってみせてよ。
 
 そこからの燈梨は、コツを掴んだようで、上手く乗りこなせていた。
 どの程度の速度でリアがスライドするのかを掴めば、それを見越してのスピードでの侵入もできるし、仮にお尻がズルっと滑っても、軽く立て直すことも出来るんだよ。
 
 燈梨は、こと、走らせてる分には、この凍結路でもエキスパートと言っても良いよね。この分野に関しては、免許皆伝で良いと思うよ。

 「ホントに? マジで嬉しいよ~!」

 キャッキャと喜んでいる燈梨を見ていると、なんか自分の事のように嬉しくなってきて、思わず頬をスリスリしちゃったよ。

 「あははははは……」

 だけど、燈梨。
 これはまだ第一段階なんだよ。
 凍結路にはまだまだ恐ろしい魔の手が潜んでいるんだよぉ。

 「ええっ!?」

 燈梨は、私の言葉を聞いて、さっきまでの嬉々とした表情から一転、蒼ざめた表情になった。
 私は、そんな燈梨の方に改めて真っ直ぐ向くと言った。

 「じゃぁ、第二段階に入ろう!」
 
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