14 / 50
第14話 戦慄の滝下り
しおりを挟む
瀕死の少女はこちらを見て無理して笑った。彫刻のように神秘的な姿に私は息を飲む。
おっと、そんな場合じゃない。
「あなた大丈夫? 見るからに大丈夫じゃないわね」
『加勢していただきありがとうございます。わたくしは湧水の精ブルータル=チューガ……具現の限界は近い。どうか我が子を保護していただけないでしょうか。私が消滅するとこの子はひとり。可愛い我が子は異界に流され彷徨うものになる……この子を故郷の海にお連れください』
「うん! 任せて頂戴」
『有難うございます……』
私は差し出された小魚……迷子のマーメイドちゃんを受け取った。そして、ブルータル=チューガは安心した表情で煙のように消えていく。
何があったか事情を聞けなかったけれど仕方なし。
しかし、後先考えず私は何やってるのか。お人よしが過ぎるよ。
「二人とも水龍はもういいわ。逃げるわよ……え」
水龍って手足なかったのかな。これ蛇よね?
「すでに蛇に種族を変えて横たわってるじゃない」
「もうペットだよ」
「……」
驚愕しながら水面を目指そうとすると足元に亀裂が、私たちは水龍もろとも口を開けた亀裂に吸い込まれていく。
吐き出された先は沢の中、すごい勢いで流されて崖や石などの景色が飛ぶように移り変わっていく。
私達はというと水龍を筏にして丸太下りを楽しんでいる。
小魚はポケットに収まり、双子は櫂を握る船頭と呼んでも間違いはない。
ああ、なんてこと!
目の前には滝。勢いがついてるからジャンプした!!
「滝から落ちるぅぅぅぅぅ!!」
スキリアの傘が10個以上展開していて、どうにか大減速できたはず。
ふんわり着水は無理だけどコンクリートと化した滝つぼに落ちることは免れそう。
「姫様着水するから目を瞑って鼻つまんでね」
「ひぃぃぃ!!」
私は湖畔でくつろぎ優雅に半裸で日光浴をしている。
ずぶ濡れで気持ち悪いので下着になって日向ぼっこなのよ。
女子しかいないから貴族の娘だからとかで問題にされることはない。
横には歌を熱唱するマーメイド。とてもお上手。
今までもことが噓のようである。
湖の依頼はというと、敵はおろか何も出てこないので、双子の自発性にお任せしている。
無理やり正当化したけど、言い訳などできないただの身勝手、丸投げなのである。
私はすでにホームシックに取りつかれ、お家に帰りたいが口癖になってしまった。
依頼を終えて組合経由で家に戻った私は食事を終えて寝床でゴロゴロ。
モザイカと軽く話したところ、貢献度と討伐数が規定を越えステージアップしていた。まだステータスは見えず。守護者は現れないらしい。
なんでも妖精の守護は、加護などとは次元が異なり貢献度は高かったようだ。
いつものことながら他人事である。
ステージアップボーナスと制限解除はボッチ街道をひた走る私には意味がなかった。
ステージが上がったと聞いても、私は何もしてないから恥ずかしくてしかたない。
そういえば組合ランクも上がっていたけどこれっぽっちも興味なし。
実際、死にたくないので努力しているだけだから。
「あれ? 雫が頬に……雨漏り?」
いつの間にかうたた寝したようで、跳ね起きて天井を見上げると部屋に水が流れ込み水没してしまう。
あ、これ夢だ。寝てしまったのね。息できるし……。
でも、おかしくない?
水浸しの部屋に何か居るように感じて窓のあたりを見る。
そこには壁から水草が生えていて、窓の前に水色の少女が佇んでいる。
「あ、水の精……ブルータル=チューガさん?」
『夢を邪魔して申し訳ありません。時間がなく用件だけ。我が子を無事に現世に連れ帰っていただいたこと感謝いたします。私にできることは限られ、残念ながら貴方様に一度限りの護符を授けることしかできません。これを受け取りください』
いつのまにか私の首にアミュレットが揺れる。
緑のマダラ模様の金属に透き通った青い宝玉。それは瞬きながら私の胸に消えていく。
「いまのは?」
『貴方が危機に瀕したときに効能が現れるでしょう。時間が尽きたようです。我が子のことお頼み申します』
返事をするよりも早く部屋の水が引き出して、妖精は足元に残された水たまりに消えていった。
夢ではなく睡眠中に干渉されたのだろう。
私は安心感から今度こそ深い眠りに落ちていく。
おっと、そんな場合じゃない。
「あなた大丈夫? 見るからに大丈夫じゃないわね」
『加勢していただきありがとうございます。わたくしは湧水の精ブルータル=チューガ……具現の限界は近い。どうか我が子を保護していただけないでしょうか。私が消滅するとこの子はひとり。可愛い我が子は異界に流され彷徨うものになる……この子を故郷の海にお連れください』
「うん! 任せて頂戴」
『有難うございます……』
私は差し出された小魚……迷子のマーメイドちゃんを受け取った。そして、ブルータル=チューガは安心した表情で煙のように消えていく。
何があったか事情を聞けなかったけれど仕方なし。
しかし、後先考えず私は何やってるのか。お人よしが過ぎるよ。
「二人とも水龍はもういいわ。逃げるわよ……え」
水龍って手足なかったのかな。これ蛇よね?
「すでに蛇に種族を変えて横たわってるじゃない」
「もうペットだよ」
「……」
驚愕しながら水面を目指そうとすると足元に亀裂が、私たちは水龍もろとも口を開けた亀裂に吸い込まれていく。
吐き出された先は沢の中、すごい勢いで流されて崖や石などの景色が飛ぶように移り変わっていく。
私達はというと水龍を筏にして丸太下りを楽しんでいる。
小魚はポケットに収まり、双子は櫂を握る船頭と呼んでも間違いはない。
ああ、なんてこと!
目の前には滝。勢いがついてるからジャンプした!!
「滝から落ちるぅぅぅぅぅ!!」
スキリアの傘が10個以上展開していて、どうにか大減速できたはず。
ふんわり着水は無理だけどコンクリートと化した滝つぼに落ちることは免れそう。
「姫様着水するから目を瞑って鼻つまんでね」
「ひぃぃぃ!!」
私は湖畔でくつろぎ優雅に半裸で日光浴をしている。
ずぶ濡れで気持ち悪いので下着になって日向ぼっこなのよ。
女子しかいないから貴族の娘だからとかで問題にされることはない。
横には歌を熱唱するマーメイド。とてもお上手。
今までもことが噓のようである。
湖の依頼はというと、敵はおろか何も出てこないので、双子の自発性にお任せしている。
無理やり正当化したけど、言い訳などできないただの身勝手、丸投げなのである。
私はすでにホームシックに取りつかれ、お家に帰りたいが口癖になってしまった。
依頼を終えて組合経由で家に戻った私は食事を終えて寝床でゴロゴロ。
モザイカと軽く話したところ、貢献度と討伐数が規定を越えステージアップしていた。まだステータスは見えず。守護者は現れないらしい。
なんでも妖精の守護は、加護などとは次元が異なり貢献度は高かったようだ。
いつものことながら他人事である。
ステージアップボーナスと制限解除はボッチ街道をひた走る私には意味がなかった。
ステージが上がったと聞いても、私は何もしてないから恥ずかしくてしかたない。
そういえば組合ランクも上がっていたけどこれっぽっちも興味なし。
実際、死にたくないので努力しているだけだから。
「あれ? 雫が頬に……雨漏り?」
いつの間にかうたた寝したようで、跳ね起きて天井を見上げると部屋に水が流れ込み水没してしまう。
あ、これ夢だ。寝てしまったのね。息できるし……。
でも、おかしくない?
水浸しの部屋に何か居るように感じて窓のあたりを見る。
そこには壁から水草が生えていて、窓の前に水色の少女が佇んでいる。
「あ、水の精……ブルータル=チューガさん?」
『夢を邪魔して申し訳ありません。時間がなく用件だけ。我が子を無事に現世に連れ帰っていただいたこと感謝いたします。私にできることは限られ、残念ながら貴方様に一度限りの護符を授けることしかできません。これを受け取りください』
いつのまにか私の首にアミュレットが揺れる。
緑のマダラ模様の金属に透き通った青い宝玉。それは瞬きながら私の胸に消えていく。
「いまのは?」
『貴方が危機に瀕したときに効能が現れるでしょう。時間が尽きたようです。我が子のことお頼み申します』
返事をするよりも早く部屋の水が引き出して、妖精は足元に残された水たまりに消えていった。
夢ではなく睡眠中に干渉されたのだろう。
私は安心感から今度こそ深い眠りに落ちていく。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる