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第19話 幼い魔鳥の見る夢は
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私は寝る時間も惜しんで魔鳥の傍らにいる。介護は虚しく徐々に弱っていく魔鳥。優しくなでると黒い目で私を見つめる。
その瞳に私が写り込む。泣きそうな顔をした私が小さく見えた。
まだ温かい。生きる努力をする魔鳥は輝いている。
私のように萎びてなどいない。
ふと思いつき昔使っていた植物用のマナ発生魔導具を引っ張り出して魔鳥の横に設置した。これは魔導学的に如何わしい商品とわかっている。でも、藁をもすがる気持ちで使ってしまう。
霊感商法と何ら変わらない効果の疑わしい道具は優しい光を投げかけていた。
あれほど怯えていた魔鳥がおとなしくしている。
「気持ちいい?」
無意識に頭をなでてしまう。特に嫌がるでもなく抵抗はしないようだ。
私は我が子をあやすように魔鳥の頭を触り、ふんわりした羽毛に指先を通した。滑らかで張りのある羽根は、いつまでも触っていたい誘惑にかられる。撫でているとしだいに眠くなり、いつのまにか深い夢に落ちていた。
月夜の海岸、何か小さな生き物が歌を唄っている。波打ち際には黒く小さな鳥が駆けまわる。波は打ち寄せ、鳥は波に洗われそうになると空に飛び立ち滑空しはじめる。夜空の月は静かに輝き、無数の鳥が乱舞する。
魔鳥の願望、それは自由に大空を飛ぶこと。
私は見たこともないほど大きな魔鳥となっていた。ミッドナイトブルーのビロードのような身体、羽根の先は月光で七色に煌めき、長く美しい羽根は砂浜に影を落とす。
砂浜には幼鳥が私を見上げている。その黒い瞳は憧れに見開かれていた。
飛ぶこと。あなたが望むのはただそれだけ。
「さあ、おいで!」
心の限り、私は一際高く鳴いた。
二つの月は螺旋を描くように旋回しはじめ、流れ星が海に落ちていく。私は呼びかけるように低い軌道で旋回する。
雛鳥は砂浜を走り始める。転んでも起き上がり、走り続けている。
短い羽根を伸ばし、風をつかんで空に舞い上がる。
一緒に夜空を飛ぶ。何も考えず滑空する。
やがて、月や星が私たちの周りを廻りはじめた。
月が無数に現れ空を埋めていく。
月の光が夜空を覆ったとき、雛鳥が高く鳴く。その時、すべてが捻じれるように渦巻き、光は霞のように消えた。
残されたのは暗黒。
目覚めた私は亡骸をもって誘われるようにバルコニーに出た。理由などない。ただ突き動かされただけ。月夜の空を見上げると黒い影が羽ばたいて静止している。私は両手で亡骸を天に向けて差し出す。
親鳥がバルコニーに降りてきて、我が子を食べるでもなく咥えて空に昇っていく。
魔鳥は大空を旋回して、徐々に上昇して見えなくなった。
私は親子が立ち去ってもなお、祈りを捧げ空を見上げる。
今の時代、魔物も滅亡に瀕している、だから親子の絆が強くてもおかしくない。
母子愛は尊い、雛鳥は母と共に大空に飛べたのだから、きっと後悔はない。
私は少しだけ生きる勇気をもらった。これは魔鳥からのプレゼントと思うことにした。
無益に過ごす暇などない最後に輝けと。
「ありがとう。そしてさようなら」
あなたは喜んでくれたのだろうか、最後の夢が幻でも。
私はバルコニーから部屋に入り、床に座り込む。風が優しく私の髪を揺らす。あけ放たれた引き戸から月光が射しカーテンが揺れていた。穏やかな世界。このまま永久に続けばいいのに。
部屋に舞う埃が月光に照らされている。
私と同じで、どこにも行き場がないのかもしれない。
放心していると何者かが窓が叩く音がする。
私は振り向いて音の主を探す、だが誰もいない。バルコニーに出ても何物もいなかった。
これはきっと彼の迎なのかもしれない。
会いに行こう病院に。
その瞳に私が写り込む。泣きそうな顔をした私が小さく見えた。
まだ温かい。生きる努力をする魔鳥は輝いている。
私のように萎びてなどいない。
ふと思いつき昔使っていた植物用のマナ発生魔導具を引っ張り出して魔鳥の横に設置した。これは魔導学的に如何わしい商品とわかっている。でも、藁をもすがる気持ちで使ってしまう。
霊感商法と何ら変わらない効果の疑わしい道具は優しい光を投げかけていた。
あれほど怯えていた魔鳥がおとなしくしている。
「気持ちいい?」
無意識に頭をなでてしまう。特に嫌がるでもなく抵抗はしないようだ。
私は我が子をあやすように魔鳥の頭を触り、ふんわりした羽毛に指先を通した。滑らかで張りのある羽根は、いつまでも触っていたい誘惑にかられる。撫でているとしだいに眠くなり、いつのまにか深い夢に落ちていた。
月夜の海岸、何か小さな生き物が歌を唄っている。波打ち際には黒く小さな鳥が駆けまわる。波は打ち寄せ、鳥は波に洗われそうになると空に飛び立ち滑空しはじめる。夜空の月は静かに輝き、無数の鳥が乱舞する。
魔鳥の願望、それは自由に大空を飛ぶこと。
私は見たこともないほど大きな魔鳥となっていた。ミッドナイトブルーのビロードのような身体、羽根の先は月光で七色に煌めき、長く美しい羽根は砂浜に影を落とす。
砂浜には幼鳥が私を見上げている。その黒い瞳は憧れに見開かれていた。
飛ぶこと。あなたが望むのはただそれだけ。
「さあ、おいで!」
心の限り、私は一際高く鳴いた。
二つの月は螺旋を描くように旋回しはじめ、流れ星が海に落ちていく。私は呼びかけるように低い軌道で旋回する。
雛鳥は砂浜を走り始める。転んでも起き上がり、走り続けている。
短い羽根を伸ばし、風をつかんで空に舞い上がる。
一緒に夜空を飛ぶ。何も考えず滑空する。
やがて、月や星が私たちの周りを廻りはじめた。
月が無数に現れ空を埋めていく。
月の光が夜空を覆ったとき、雛鳥が高く鳴く。その時、すべてが捻じれるように渦巻き、光は霞のように消えた。
残されたのは暗黒。
目覚めた私は亡骸をもって誘われるようにバルコニーに出た。理由などない。ただ突き動かされただけ。月夜の空を見上げると黒い影が羽ばたいて静止している。私は両手で亡骸を天に向けて差し出す。
親鳥がバルコニーに降りてきて、我が子を食べるでもなく咥えて空に昇っていく。
魔鳥は大空を旋回して、徐々に上昇して見えなくなった。
私は親子が立ち去ってもなお、祈りを捧げ空を見上げる。
今の時代、魔物も滅亡に瀕している、だから親子の絆が強くてもおかしくない。
母子愛は尊い、雛鳥は母と共に大空に飛べたのだから、きっと後悔はない。
私は少しだけ生きる勇気をもらった。これは魔鳥からのプレゼントと思うことにした。
無益に過ごす暇などない最後に輝けと。
「ありがとう。そしてさようなら」
あなたは喜んでくれたのだろうか、最後の夢が幻でも。
私はバルコニーから部屋に入り、床に座り込む。風が優しく私の髪を揺らす。あけ放たれた引き戸から月光が射しカーテンが揺れていた。穏やかな世界。このまま永久に続けばいいのに。
部屋に舞う埃が月光に照らされている。
私と同じで、どこにも行き場がないのかもしれない。
放心していると何者かが窓が叩く音がする。
私は振り向いて音の主を探す、だが誰もいない。バルコニーに出ても何物もいなかった。
これはきっと彼の迎なのかもしれない。
会いに行こう病院に。
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