魔術師達と彼方

本和 奏

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第2章 少年と友人

少年と友人 4

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 さて、仲良くなりたい、友達になりたいと言ったって、内気な僕には声をかけることすらできず、無情にも時間だけが過ぎていった。
 因みにこの学校、魔術師という名の貴族様達が通うのだから、学校の設備は豪華絢爛の限りを尽くしている。表向きには超名門私立大学及びその附属高校、中学校などと思われているらしい。たった一握りのアッパークラスの為にある品行方正なスクール……との評判だが実情はこの通り、いつ誰が死のうが特に驚きもしない人間としての人格破綻者が溢れている恐ろしい、世も末とでも言いたくなるような学校だ。
 その中で、ウィルは比較的庶民的だった。僕ですら、表向きではかなりの地位のある貴族の跡取りなのだから庶民とは言い難い生活をしてきたけれど、彼は僕よりさらに庶民に近かった。魔術というのは兎に角金がかかる。品はないが、金がなければ何も出来ないのだ。だから、ウィルが授業に問題なくついていけている事を、当時の僕は随分と不思議に思ったものだ。
 話は変わるが、所謂自称お上品な貴族様達のご機嫌取りに時間を割くのは、いくら僕でも正直御免である。だが、彼らは自分たちが何よりも尊ばれる存在だと信じて疑わない。僕のように立場が弱い人間にはとにかく突っかかり、嫌がらせをしてるくのだ。対嫌がらせ用の魔術は随分と上達しだが、嬉しくないのが本音である。もっと別の理由で上達したかった。
 「おい、スタッフォード。お前のごとき二流がそんないい席とっていいと思っているのかよ」
 そんな馬鹿げた事をほざいたのは、これまた名門のデュトルエル家の跡取りだった。僕より成績が低かったと理解する理由になったらしいテストの後から、随分と攻撃的になったのだ。
 正直小者じみていると思ったが、言っても騒ぎ立てるだけなので言わないでおくことにする。
 そんなんで彼は自分の家を栄光へと導けると思っているのだろうか。甚だ疑問だがそんなこと考えてすらいないだろうと思い、口を噤んだ。
「いいからどけよ!この「煩いんだけど」はぁ?!」
 デュトルエルの言葉に被せる形で文句を言ってきたのは、あのウィルフレッドだった。いつも通りの不機嫌そうな顔で、いつも通りの口調で、ウィルはその鼻持ちならない、変なプライドのみが高い彼に対して反論をした。
「だから、煩いって言ったんだよ。それすらも分からないの?ボク、無駄なことに時間は使いたくないんだけど」
 そう言ったウィルに対して、デュトルエルは顔を真っ赤にして反抗したが、先生が入って来た所でそのみっともない姿を晒すのを止めた。
 正直、胸のすく思いをした。あいつの我が儘な子供が駄々をこねているような姿は、あまりにも滑稽で、まるで道化の寸劇を見ているかのようだったからだ。
「お前、少しは反論しろよ。ここは東洋の島国じゃないんだから、静かなのは美徳じゃないんだぞ」
 「……なんで、僕を庇ってくれたの?」
 ようやく振り絞れたのは、こんなどうでもいいセリフだった。そんな事どうでもいいから、とっとと仲良くなりたいと言えばいいのに、自分はやはり面倒くさい。
「庇ったわけじゃない。ただ、あいつらが目障りだっただけだ。だから、お前もボクに感謝する必要は無いよ」
 当たり前に優しくしてくれて、あえてそれを言わない彼は、さながら物語の中に出てくるヒーローのようにも見えたのだった。

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