魔術師達と彼方

本和 奏

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第2章 少年と友人

少年と友人 3

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 僕は、目立たない存在だった。
 ただ目立たないだけならそれで良かったのだけれど、そういう訳でもなく、家柄は古くてもろくに栄えていなかったスタッフォード家の長男だった僕はスクールカーストでもかなり下の方だった。
 魔術師の世界というのは、基本的に貴族社会である。それぞれの派閥にわかれ、事ある事にいがみ合っていた。
 いっそ、長男ではなく次男だったら良かったのだ。そしたら、家督を継ぐという責務もなく、もしかしたら魔術という世界すら知らぬままに生きられたかもしれないのに。
 一般的なスクールカーストなら、きっと僕にだってクラスに溶け込めるだけの地位を手に入れるチャンスはあった。
 ……隣で何かを喋っている人達の中に入れるような、そんな機会だってあったはずだ。
 魔術師だから友達は要らないと切り捨てることが出来れば良かったのだけれど、僕にはそれが出来なかった。子供らしく、友達という存在が羨ましかったのだ。絵本の中に描かれる世界に憧れて、ずっとそれを望んでいた。
 「あれ?アイツ、初めて見る顔じゃね?」
 集団の中の一人がそういったのが聞こえた。彼らの目線の先には、一人の少年がいる。
 少し長めの髪に、不機嫌そうな口元。顔は確かに整っているが、少し近寄り難い雰囲気を醸し出していた。もう少し愛想を良くすれば、とてもモテるに違いない。いや、もしかしたら今でも充分なのかもしれないけれど。
「君、転入生?名前はなんて言うんだい?」
 そのグループのリーダー格の人間が言った。あそこまで堂々としていられるのなら、きっといい家柄の子に違いないと思ったのかもしれない。実際、僕もそう思った。
 「……名前?人に名乗らせるなら、まずそっちから名乗れよ。それすらも出来ないのか?」
 「嗚呼、失礼。私はバジル・ラナード」
 ラナード家の次期当主、後にこの研究機関の最高権力者の一人になる男にそんな物言いをする人を、僕は初めて見た。これはとんでもない、それこそ何百年も続く家の次期当主出なければおかしいと思われた。
 「……ウィルフレッド。ウィルフレッド・ユリアーノ。それがどうしたの」
 ……聴いたことがない名前だった。ただ、それは彼のアレッサンドロ・ユリアーノがまだ名をあげる前の話だったからである。ユリアーノの名が売れるのはこれから一年後の話だから、それまで彼は本来不遇を受ける立場だったのだ。
 だから、当然の如く彼らはそのウィルフレッドと名乗る少年のことを馬鹿にした。自分たちを敬わなかったのだから、余計に。
 それにもかかわらず、彼は堂々として、何処か憮然とした態度を崩さなかった。彼らに媚び諂おうともしなかった。きっと、認められずにいた大天才である師に対してのプライドもあったのだろう。
 周りからしてみれば馬鹿に見えるかもしれないけれど、僕の目にはそのウィルの姿が、すごく格好良く写ったのだった。
……友達になりたいと、心から思ったくらいには


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